緊張感あふれるストーリーとハードな暴力描写が高い支持を得た『ボーダーライン』(2015年)。本作で主演のエミリー・ブラントを押しのける強烈な存在感を放っていたのが、麻薬組織への復讐心に燃える謎の男・アレハンドロを演じたベニチオ・デル・トロでした。

デル・トロといえば、代表作『ユージュアル・サスペクツ』(1995年)をはじめ、キレのある印象的な悪役を数多く演じています。続編『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』(11月16日公開)に合わせて、ハリウッドきっての演技派俳優である彼の悪役としての歩みを振り返っていきます。

(C)2018 SOLDADO MOVIE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

007の端役を経て、名作『ユージュアル・サスペクツ』に出演

スペイン人とイタリア人の血を引くデル・トロは、プエルトリコで誕生しました。祖父と両親が弁護士ということもあり、自身も弁護士を目指していましたが、大学時代に演技と出会い、俳優の道を志すことに。そして、1988年にコメディ『ピーウィー・ハーマンの空飛ぶサーカス』で映画デビューを果たすと、翌年には「007」シリーズの第16作『007 消されたライセンス』に出演します。

この作品でデル・トロは、ボンドの敵役である麻薬王の用心棒・ダリオ役で登場。端役ながら鮮烈な印象をスクリーンに残します。(本作は007シリーズの中で最もバイオレンスな描写が多いと言われており、デル・トロ演じるダリオの最期も壮絶です……)

そして彼の名が一躍世界中に轟くことになったのが、ブライアン・シンガー監督の出世作『ユージュアル・サスペクツ』です。本作でのデル・トロは、落ち着きがない強盗のフェンスターを巧みに演じており、インデペンデント・スピリット賞の助演男優賞を受賞しました。

また、ブラッド・ピット主演の『スナッチ』(2000年)では、ギャンブル中毒のニューヨークマフィア、フランキーを怪演。彼にしか似合わないであろう、ピンクの派手なシャツや光沢のあるスーツ、趣味の悪いサングラスなどでキザに着飾っているのですが、それが独特の色気を醸し出しています。

シリアスからコミカルまでバリエーション豊かな悪役演技

(C)2018 SOLDADO MOVIE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

演技派としてのキャリアも重ねるデル・トロは、スティーブン・ソダーバーグ監督の麻薬をテーマにした群像劇『トラフィック』(2000年)でアカデミー助演男優賞をはじめとした多くの映画賞を受賞。2部作として公開された『チェ 28歳の革命』『チェ 39歳 別れの手紙』(2008年)では、キューバ革命を推し進めた政治家、エルネスト・チェ・ゲバラを演じ、カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞しています。

一方で、クセの強い悪役を演じるデル・トロの勢いも止まりません。2014年の『エスコバル 楽園の掟』では、国会議員や慈善事業家としての顔を持つ、世界的に有名な麻薬王、パブロ・エスコバル役に挑戦。実在の人物を演じるために、デル・トロは体重を大幅に増量。でっぷりとしたお腹と口ヒゲをたくわえ、本物ソックリに役柄を作り上げています。家族の長としての慈愛にあふれた姿と、麻薬カルテルのボスという非道さが同居する人物像は、見るものに異様な緊張感と恐怖を与えました。

さらに近年は、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017年)のDJや、マーベル・シネマティック・ユニバースの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)のコレクターなど、コメディリリーフを担う、コミカルな悪党役でも彼の演技を見ることができます。

敵に対して容赦なし!非道さ全開の最新型デル・トロ

そんな彼の近年のハマリ役といえるのが、『ボーダーライン』の暗殺者・アレハンドロです。

彼はコロンビア人の元検察官という人物ですが、かつて麻薬カルテルに家族を皆殺しにされたという悲惨な過去を持っています。そんな背景を持つアレハンドロは、麻薬カルテル撲滅のために血道をあげますが、そのやり方は非道そのもの。カルテル構成員の銃殺は当たり前で、水攻めなど残忍な拷問も敢行。さらに、ヒロインのFBI捜査官ケイトの権限まで利用しようと画策します。

(C)2018 SOLDADO MOVIE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

そして、続編『ソルジャーズ・デイ』では、麻薬カルテル同士の戦争を誘発し、共倒れさせるために、麻薬王の娘を誘拐。この誘拐劇がアレハンドロ自身も想像し得ない事態を招くことになります……。

演技派にして、稀代の悪役俳優ともいえるデル・トロ。今後、彼がどんな役柄で映画ファンを驚かせ、興奮させてくれるか目が離せません!


文/スズキヒロシ・サンクレイオ翼