山下敦弘監督と山田孝之のコンビが奇書と名高い「ハード・コア 平成地獄ブラザーズ」を実写映画化。右近役で主演しているほか、プロデューサーも務めている山田が、俳優業やプロデューサー業について語った。

好きなように生きたくて生きられない男

Q:原作は山田さんの愛読書だそうですが、右近の「わかっているのにあえてそっちを選ばない姿勢を貫くところ」など、山田さんに通じることが多いように感じました。

なるほど(笑)。共感というか、憧れはあります。そういう男性は多いと思いますよ。社会にちゃんと適応して生きていかなきゃいけないので、仕方ないことですけど、それでも「そんなこと関係ねぇ」って生きたいところがどこかにありますから。別に人をぶんなぐりたいとか、そういうことはないんですけど、右近って好きなように生きているじゃないですか。でも、生ききれてない。「わかるよ、すごく理解できる」ってところはあります。

Q:普段から漫画を読んで、「これは映画化できるな」とか「演じたい」とかそういう目線になるんですか?

全くないです。そういう人も結構いると思います。(小栗)旬君とかは割とそういうタイプ。漫画を読んでいて、「これはできる」「誰が合う」とかを考えている。でも、僕は全くないです。大ヒットコミック「進撃の巨人」を読んでも、「面白いなぁ」とは思うけど、「この役、やりたいなぁ」とは思わないです。

憑依型なんてものは存在しない

Q:山田さんは憑依型のイメージがありますが、演技をしている時は自分を俯瞰して見ているのですか?

どっちもです。プロデューサーとして映画を作る際も、超客観的になりすぎてもダメです。チームの一員ですから。この監督にどんないい画を切り取ってもらえるか、どうやったらベストを尽くしてもらえるのか。俳優にどうやったら、いい芝居をしてもらえるか。じゃあ、どう宣伝していったらいいか。それって客観でもあるけど、主観でもある。バランスですよね。演技している時は割と主観ですけど、それでも必ず、どこか客観的な自分がいます。もちろんリアリティーも必要ですけど、まずは伝えなきゃならない。「カメラがここまで寄るなら、目はこれくらい動かそう」「これだけ引きなら、首もつけた方がいいな」とか考える自分の後ろにさらに自分がいる感じです。

Q:そこまで計算しているなら、「憑依型」といわれるのは不本意なのでは?

どう思われてもいいです。好きなように言えばいいですけど、僕は憑依型なんてものは存在しないと思っています。だって、僕が憑依型だったら、テレビドラマ「白夜行」の時、何度も人を殺していますよ(笑)。殺人犯の役をやるたびに人を殺しています。『ハード・コア』だって、大変なことになります。人をぶんなぐっちゃっています。

Q:演じている間に私生活に影響が出て困るみたいなことはないんですか?

そこは自制心があるので、大丈夫です。

Q:山田さんはアイデアマンだと思いますが、そのユニークな発想はいつ浮かぶんですか?

ものによってですね。道を歩いていてふと思いついたりもしますし、ぼ~っと座って、木が揺れているところとかを見ていて、思いつくこともあります。最初の10分くらいは全然ダメなんですよ。人が通っているな、車がいるな、ちょっと暑いなとか考えてしまう。でも、10分くらいしていくと、す~っといろんな邪念がなくなって、思いついたりするんです。

Q:外でそういうリラックスした状態になれることは素晴らしいですね。

でも、誰でもそういう時はあると思います。例えば、一人で新幹線に乗っている時って、ぼ~っとしているじゃないですか。ああいう時って、すごいいろんなアイデアが思い浮かぶものです。ぼ~っとすることは大事だと言い聞かせて、たまにするようにしています。

すぐ店の人や常連さんと仲良くなれる

Q:山田さんといえば、一般人の友だちがたくさんいることが話題になっています。

僕は15歳でこっちに出てきたので、同級生とか全然いないんですけど、俳優もミュージシャンもみんな、一般人の友だち、普通にいるんじゃないかな。ひとつ違うのは、一人で居酒屋に行ってすぐに店の人や常連さんとかと話して仲良くなったりするところですね。いつも決まった友だちと連絡して話していたら、会話が決まってくる。でも、初めて会った人だと、同業者と話すのとはまるで違う展開になるのが面白いんです。

Q:俳優業に生かせることも多いですか?

それが目的で行っていることは全くないですけど、結果的にはそうなります。普通に話をしていて、「こんなしゃべり方をする人がいるんだ」とか「あれ、こんなに人の話を聞かない人もいるんだ」とか。この前、いたんですよ。8人くらいしか入れない小さいおでん屋で、初めて会った人に相談されたんです。僕より2つくらい年下の男性で、最初は僕もいろいろ答えていたんですけど、3時間くらい経って気づいたのは「こいつ、何も話、聞いてねぇな」と。それで「あなた全然人の話聞いてないね? しゃべりたいだけでしょ?」って言ったんです。何か言っても「はいはいはい」って相槌がやけに早いんですよ(笑)。「ほら、聞いてないじゃん? いま俺、何て言った?「いや、聞いています」「だから、何て言った?」「すみません」「すみませんじゃないよ~」って。「こういう人もいるんだな」って思って、その時はそれだけですけど、何かの役づくりの時に、「あの時のあの人、こういうキャラクター設定にしたら面白いな」というのは、後からパッと浮かんだりはします。

Q:知らない人に話し掛けられて、めんどくさいとは思わないんですか?

僕がですか? いや、逆に相手の方がなるんじゃないかな。僕がめっちゃしゃべるから。「なんだこいつ。思ったよりすげぇーしゃべるな」って(笑)。

取材・文:高山亜紀 写真:日吉永遠