今、映画館に新しい風が吹いている。今年12月8日に吉祥寺にオープンする「アップリンク吉祥寺」は映画館を一つの街に見立て、デザインコンセプトが異なる5つのスクリーンが展開する斬新な設計で注目を集めている。

最近の映画館では、映画をただ観るだけでなく、より「体験」として楽しむための設備や試みが取り入れられるようになった。今回は「体験エンタメ」をキーワードに、映画館ならではの映画体験を紹介しよう。

VRの導入も!もはやアトラクションのような映画体験

ブルーレイディスクや映像ストリーミング配信サービスの普及により、近年では自宅でも気軽に高画質・高音質の映画を楽しめるようになった。しかし、映画館はその間も奮起を続けており、エンターテイメント要素と体験要素を強めるようにして独自の進化を遂げている。

例えば、4DXやMX4Dといった、いわゆる“4D映画”の上映施設が全国で拡大中だ。4DXやMX4Dは、座席の動きや煙、風、雪、ミスト、香りなどの効果が映像や音とシンクロすることで、作品の世界観を五感で体験できるのが特徴。映画をよりエンターテイメントとして楽しめる、まるで映画の世界に入り込んだかのような映画体験だ。4D映画の上映施設が今後さらに普及していけば、アトラクション感覚で楽しむように映画館へ来る人々が増えるかもしれない。

さらに今年7月には、日本初となるVR実写映画『ブルーサーマルVR-はじまりの空-』が全国で上映された。同作では、観客が「Telepod」と呼ばれるコンテンツ連動型の振動チェアに座り、VRゴーグルとヘッドホンを装着。360度を見渡せる映像の中で、自らが大学の新入生である主人公となりストーリーを体験できる。クライマックスのグライダーで飛行するシーンは、迫力ある空の旅が大きな反響となった。テクノロジーの進化は映画の体験エンタメ化にも大きな影響を与えている。

また、近年映画ファンのみならず音楽ファンまでも虜にしている「爆音上映」は、音響の面から新鮮な体験を生み出している。これは通常の映画用の音響システムではなく、音楽ライブ用の音響システムを使用した上映のこと。通常上映とは一味違う大音響に包まれながら映画を新鮮に楽しむことができる。

声出し、楽器で臨場感たっぷり!? 応援上映

映画館は設備面だけでなく、鑑賞者の参加の仕方も進化している。

その例が「応援上映」だ。上映中に声を上げたり、うちわやペンライトを振ったりと、観客が作品の感動を一体となって共有できる体験型映画として近年絶大な人気を誇っており、最近はその一体感を生むためのさまざまな工夫が成されている。

2017年公開の『帝一の國』の応援上映(5月17日・TOHOシネマズ 六本木ヒルズ開催)では、上映前に劇中で歌われる海帝高校の校歌と、8回手を叩く“海帝式拍手”のレクチャーが行われ、「恥ずかしいなんて感情は捨ててしまえ! もっと自分を解き放つんだ!」という菅田将暉の言葉の後に本編がスタート。“校歌斉唱”のシーンでは、観客が一体となり高らに歌声を響かせたことでも話題となった。応援上映の盛り上がりを後押しする出演者の粋な計らいに、観る者の気持ちもいっそう高揚しそうだ。これも今までになかった新たな体験エンタメといえる。

また、少々意外な作品も応援上映が盛り上がりを見せる。今春公開の松坂桃李の主演映画『娼年』で行われた女性限定の応援上映(5月30日・池袋HUMAXシネマズ開催)に先立っては、公式が「ミニ太鼓・タンバリンなどの楽器可」と告知。主人公演じるベッドシーンで「頑張れー!」「いいぞいいぞ!」の声援のほか、太鼓やタンバリンなどが賑やかに鳴り響き、大盛況のうちに幕を閉じたという。このようにファン同士がファン心理を包み隠さずに(?)、思い切って盛り上がれる非日常感こそが応援上映の魅力なのかもしれない。

館内の設備やレイアウトに趣向を凝らす一方で、応援上映のように鑑賞者の楽しみ方自体も変わりつつある近年の映画館。映像ストリーミング配信サービスが普及しつつある今、映画館ならではの体験エンタメを打ち出していくことが、5年後、10年後と、未来を見据えた映画館の生存戦略なのかもしれない。新たに生まれゆく映画体験をしに、ぜひ映画館に足を運んでみてはいかがだろう。

(文/ナカニシハナ)