【町田雪のLA発★ハリウッド試写通信 ♯19】
「LA発★ハリウッド試写通信」では、ロサンゼルス在住のライターが、最新映画の見どころやハリウッド事情など、LAならではの様々な情報をお届けします。

キャメロン・ディアスの姉(『イン・ハー・シューズ』)、ドリュー・バリモアの大親友(『マイ・ベスト・フレンド』)、アビゲイル・ブレスリンの母親(『リトル・ミス・サンシャイン』)――。さまざまな女性同士の絆を描いたヒット映画において、人気女優の相方を演じてきたオーストラリア出身女優、トニ・コレット。

トニ・コレット (c)Birdie Thompson/AdMedia/Newscom/Zeta Image

ジャンルや相手に合わせて見事に七変化することから、“カメレオン女優”とも呼ばれる実力派だ。これらの作品は前述の女優たちの代表作のひとつだが、実は、より難しいほうの役を担い、常に共演者を輝かせるコレットの天才ぶりが突出した作品でもある。

そんなコレットの主演映画2本がともに、11月30日(金)に日本公開となる。コメディ映画『マダムのおかしな晩餐会』では、パリで見栄を張るアメリカ人マダム役として、これまた、相方のスペイン系女優ロッシ・デ・パルマを輝かせる得意技を発揮。一方のホラー映画『ヘレディタリー 継承』では、ワンマンショーに近い存在感で、アカデミー賞主演女優賞へのノミネートが有力視されるほどの狂演を見せている。

コメディとホラーという両極端のジャンルの2本を紹介しつつ、コレットの凄まじさを共有したい。

強気で傲慢で意地悪なのに憎めない
『マダムのおかしな晩餐会』のアン

『マダムのおかしな晩餐会』は、パリの上流社会を舞台に、裕福なアメリカ人夫妻であるアン(コレット)とボブ(これまた味わい深いハーヴェイ・カイテル)、そのセレブ仲間、メイドや現地の若者たちが織り成す、滑稽な人間関係を描いたロマンチック・コメディだ。ある日、セレブの友人たちを豪華ディナーに招いたアンが、自分のエゴのために、メイドのマリア(パルマ)を友人と偽って出席させることから始まる、嘘とスキャンダルの連鎖を描いていく。

『マダムのおかしな晩餐会』11月30日よりTOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
(C)2016 / LGM CINEMA - STUDIOCANAL - PM - Tous Droits Reserves

「身分違いだから」とディナー出席を拒否するマリアを無理に着飾り、「静かに、ただ座っているように」と命ずる、上から目線のアン。でもいざ蓋を開けると、人間としての成熟度やユーモア・センス、慎ましさに溢れるマリアが、客の紳士の心を射止めてしまう。

ルックスもステイタスも自分のほうが上(だと思っている)なのに、夫との仲は冷めきって、いつも不機嫌な自分と、乙女のように恋して輝くマリアを比較して嫉妬し、いびり倒すアン。

この「強気で傲慢で意地悪。でも、自分の内面と葛藤している様子や甘え下手なところが憎めない」と思わせる演技において、コレットの右に出るものはいない。そして、コレットが背筋を伸ばして強がれば強がるほど、マリアの柔軟な女性らしさが際立って輝く。

トニ・コレット 『マダムのおかしな晩餐会』11月30日よりTOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
(C)2016 / LGM CINEMA - STUDIOCANAL - PM - Tous Droits Reserves

マリア役のパルマは個性的なルックスが特徴だが、いびり上手なコレットとの対比で、とてもピュアでセクシー、チャーミングな女性像となっている(パルマ自身の並々ならぬ存在感と印象は言うまでもない)。

『マダムのおかしな晩餐会』11月30日よりTOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
(C)2016 / LGM CINEMA - STUDIOCANAL - PM - Tous Droits Reserves

アカデミー賞主演女優賞ノミネートを有力視
『ヘレディタリー 継承』のアニー

うってかわって『ヘレディタリー 継承』は、不気味な後味が何週間たっても続くようなホラー映画。コレット演じるアーティストのアニーと夫のスティーヴ(ガブリエル・バーン)、2人の子どものグラハム一家が、家長であったアニーの母の死をきっかけに、怪現象に襲われる様子を描いた物語だ。

トニ・コレット 『ヘレディタリー 継承』11月30日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
(C)2018 Hereditary Film Productions, LLC

次々に襲い来る悲劇と、呪われた先祖の死、謎めいた母の生前の正体……。ビジュアル的にも心理的にも、ショッキングなシーンが続く同作において、心身ともに錯乱し、精神崩壊へと向かうアニー役のコレットの演技は圧巻だ。

悪魔にとりつかれたような身体的パフォーマンスはもちろん、母としての子どもとの関係、妻としての夫との駆け引き、娘としての母への複雑な感情といった心理的パフォーマンスが秀逸。

観ている側としては、コレット自身がとりつかれたようにしか思えず、のちのインタビュー映像で「演じるのがとても楽しくて、エキサイティングだったわ」と語る貫禄ある姿を、すんなり受け入れることができないほどだ。今年1月のサンダンス映画祭でのプレミアから、6月の米公開、賞レース開幕直前の現在と、コレット推しの声は高まり続けている。

『ヘレディタリー 継承』11月30日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
(C)2018 Hereditary Film Productions, LLC

1999年の『シックス・センス』ではアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたものの、その後はオスカーとは疎遠であるコレット。『ヘレディタリー 継承』における渾身の演技で、来年のアカデミー賞に向けた賞レースに参戦することができるのか? “最高の共演者”であり続けたコレットにスポットライトがあたる可能性に心躍らせつつ、これからのカメレオンぶりもしっかり目撃していきたい。

『マダムのおかしな晩餐会』と『ヘレディタリー 継承』は、11月30(金)より日本公開。