ピンク色の髪にド派手なメイク。いわば場末感のある風貌に、比嘉真琴を演じているのが小松菜奈だとは、にわかに信じられなくなる。それほどに『来る』でのヴィジュアルは衝撃的で、なおかつ異彩を放っている。

「髪がピンク、というのは当初から決まっていたんですよ。台本で知紗ちゃんが『ピンクちゃん、ピンクちゃん』って呼ぶ箇所があったので──。でも、そこはリアルに3歳児ということで、本番では呼んでくれなかったんですけど(笑)。ただ、中島監督の中でも、髪の長さや色、タトゥーや服装と、見た目がものすごく派手だという比嘉真琴のイメージが、すでにできあがってはいたみたいなんです。映画を見る人たちには『真琴を演じているのは誰なんだろう?』と思われるかもしれないんですけど、いわゆる先入観ナシで見てもらえるのがいいなと、私は思っていて。正直なところ、『ピンクの髪をしたキャバ嬢の霊媒師』という役柄でのオファーを聞いて、『これはチャンスだ!』と直感したんです。

(C)2018「来る」製作委員会

きっと自分の人生の中で、何かを変える作品の1つになるはずだって。しかも、また中島監督とご一緒できることに、何か本当に……運命というか、『渇き。』(2014年)に続いて、自分にとっての新しい始まりになるであろう作品に参加させていただけるのが、本当にすごくうれしかったんですよね」

あらためて説明するまでもなく、小松は『渇き。』で中島監督に見いだされた。あれから4年。ひとかどの女優に成長した小松が“恩返し”をと思ったとしても不思議じゃない。

「監督がその後の私をどのように見ていらっしゃったかはわかりませんが、オファーをいただいた時に妙な緊張感というか、監督に対してうまく見せなきゃと思っていたところが正直あって。でも、いざ現場に入ると、余計なことを考えている暇なんてなかったですね。役に対して、まっすぐ一直線に向き合っていたら、そういう想いみたいなものは自然と消えていました」

もちろん、中島監督の“愛の鞭”が、小松の心をまっさらにしたところもあるだろう。

親からの愛情に近いものを感じた

(C)2018「来る」製作委員会

「岡田さんや妻夫木さんも、『菜奈ちゃんばかり言われて大変だったね』と気づかってくださったんですけど、私としてはそんなふうに思ったことはなかったんです。中島監督がおっしゃっていることは、客観的に見ても正しいんです。むしろ、監督のおっしゃることや求めていることに寄せることで、真琴という人物をより魅力的に見せられるのなら、何でもするという気持ちでした。

それに……監督はそんなことはないとおっしゃるかもしれませんが(笑)、親からの愛情に近いものを感じました。たぶん監督は、他の出演者がそうそうたる方々なので、私のことを配してくさだったんだと思います。キャストやスタッフの方がいる前ではイジられたりもしましたが『最近どうなの、楽しくやってるの?』と、優しい言葉をかけてくれもしました(笑)。私も、『何かさっきと違うじゃないですかー』とか言ったりして。

そういう会話の中で、ふと監督が『何か別にもう、女優をやらなくてもいいんじゃない?』みたいなことをおっしゃって。でも、『いえ、私にまだ女優を続けさせてくださいよ?』って、すぐ返したんですね。そしたら、監督が“おっ”という顔をされて、『「渇き。」の時には、そんなこと言わなかったじゃん』って言ってくださって。4年前、同じことを言われて黙っちゃった私が、中島監督とそういう話ができるようになったというだけでも、少しは成長できているのかな、なんて感じたりしたこともありました」

このインタビューの続きは『キネマ旬報』12月上旬号に掲載。今号では「来るってなにが?」と題して映画『来る』の巻頭特集をおこなった。小松菜奈はじめ、岡田准一や黒木華、松たか子、妻夫木聡、川村元気のインタビュー記事を掲載。(敬称略)

取材・文=平田真人/制作:キネマ旬報社