『ミニオンズ』シリーズのイルミネーション・エンターテインメントが、ジム・キャリー主演の実写版でも知られる名作絵本をアニメ化。クリスマスを盗もうと企てる、ひねくれ者の主人公・グリンチの日本語吹き替えを担当した大泉洋が、収録エピソードや愛娘とのクリスマスの思い出などを語った。

イヤな奴でも憎み切れないキャラ

Q:作品をご覧になった率直な感想、アフレコ収録でのエピソードを教えてください。

とにかくイルミネーション・エンターテインメントのクオリティーの高さに圧倒されました。特にグリンチの顔の表情は、細かすぎてヤバいです! しかも、アニメだから実写ではできないような激しい動きをするわけで、そこに声を入れるというのは本当に難しい作業でした。アフレコ中はグリンチと同じような表情になって、一緒に動いちゃう(笑)。でも、何か微妙に違うことが気になって、演出の方にOKを出されても「もう一回やらせてくれませんか?」と言うことが何度もありました。

Q:大泉さんから見て、グリンチのキャラクターの魅力は?

ひねくれものでイヤな奴だけど、小さい頃に孤独だったという背景もあって、やっぱり憎み切れないです。しかも、犬に追い回されたり、自分が作った装置で遠くに飛ばされたり、いろいろと酷い目に遭っているところも憎めない理由。だから、その背景を心に留めて演じました。僕もバラエティー番組とかでぼやくことがあるので、みなさんから「大泉さん、ピッタリですね!」と言われますけど、ありがたいと思う反面ちょっと複雑な心境です(笑)。

おもちゃ屋の新聞折り込みにワクワク!

Q:洋画の吹き替えは初ということでしたが、声の仕事の楽しさや難しさについて教えてください。

聞くところによると、本国ではグリンチの声を担当したベネディクト・カンバーバッチさんの声を先に収録して、それに合わせて作画されたようです。昔、宮崎駿さんとお話ししたときも、「その方がいい」と仰っていましたが、それだけに出来上がった画も細かい。そこに僕が日本語で合わせるのだから、とても大変! でも、難しいからこそやりがいもありました。僕の娘や同じ世代の子たちが観て、喜んでほしいと思って頑張りました。原作が絵本として完結しているので、続編は作りにくいと思いますが、また声を掛けていただきたい! 今度はグリンチがクリスマスを守るみたいな展開とか(笑)。

Q:大泉さん自身のクリスマスの思い出を教えてください。

特にないです。学生時代に、カノジョがいたときのエピソードだと、ノロケ話にしか聞こえないし、反対にカノジョがいないとき、じいさんと一緒に過ごしたとかは、単に暗いだけであまり面白くない。だから、「水曜どうでしょう」(HTB)の収録で、TV局の駐車場でエビチリを作った思い出ぐらいしかない(笑)。子どもの頃、クリスマスが近くなると新聞の折り込みで入る、おもちゃ屋さんの広告! そこからプレゼントを選ぶ楽しみがありました。あれはワクワクしました。

ちょっと変わった子ども時代

Q:グリンチは幼少時代の出来事から、ひねくれた性格になりましたが、大泉さん自身はどんな子ども時代を送ったことで、今の自分があると思いますか?

基本的に子どもの頃から何も変わっていないです。物心ついたときから、人を笑わせたいとばかり思っていました。そして、ずっとTVばっかり観ていました。特に「8時だョ!全員集合」「オレたちひょうきん族」「THE MANZAI」あたりからの、お笑い番組が好きでした。だから、母からは「勉強しなさい!」と言われない代わりに、「TVばっかり観るんじゃない!」と言われていました(笑)。知らず知らずのうちに、その時代の芸人さんたちのエキスを体に入れることができたことで、今の自分があるし今この仕事ができているのかなと思います。

Q:その中で、友達が観ないような番組を観るといった、ちょっとひねくれた部分もありましたか?

たとえば、「金曜日の妻たちへ」や土曜ワイド劇場枠で天知茂さんが明智小五郎役をやっていた「江戸川乱歩の美女」シリーズといった大人向けのドラマも、子どもながらに観ていました。それで、子どもながらに女の人が裸で殺される展開とかも楽しみにしていました(笑)。あと、世代的にみんながガンプラやファミコンにハマっていたんですが、ファミコンのプレイの順番待ちしている奴とトークして笑っている方が楽しかったです。一応、僕もプレイもするんですけど、そこまで真剣じゃないから全然うまくならない。みんなに騙されて変なアイテムを取っていました(笑)。

Q:ご自身にお子さんができたことで、クリスマスに対する考えの変化は?

自分に娘が生まれてからのクリスマスは、ちょっと違います。一緒にクリスマスツリーを飾ったり、プレゼントを考えたり、ケーキを食べたり、子どもと同じぐらい楽しんでいます! 何年か前、長期で家を空けて戻ったら、すでにツリーの飾りが終わっていたときは、相当ショックでした。「何でパパと一緒にやってくれないんだ!」と(笑)。娘と一緒に何かをすること、そして娘が喜んでいる姿を見ることが、僕にとって何ものにも代え難い喜びですから! 娘が喜ぶ実写映画に出る機会はなかなかないので、やっぱりアニメ。実際、娘が生まれてからいただいたアニメのお仕事は、スケジュールさえ合えばすべて受けさせてもらっています。

取材・文:くれい響 写真:日吉永遠