ブラッドリー・クーパーが監督&主演を兼任し、レディ・ガガとのW主演で “スター誕生”の瞬間をエモーショナルに描いた『アリー/ スター誕生』(12月21日公開)。歌手になることを夢見る女性を体現したガガの演技が世界から称賛されています。

今回はガガをはじめとした、映画で「どっちが本業!?」と感心させる見事な演技を披露した“歌姫”たちを振り返ります。

スーパー・スターを体現!歌姫ホイットニー・ヒューストン

映画内でもスーパースターを演じた歌姫といえば、ホイットニー・ヒューストンを最初に挙げる人も少なくないでしょう。

2012年、48歳で早逝するまでポップス界の女王として君臨した彼女は、2019年1月4日からその半生を振り返るドキュメンタリー『ホイットニー〜オールウェイズ・ラヴ・ユー』の公開も待機しています。

彼女が本人さながらの世界的スーパー・スターのレイチェル・マロンを演じたのが『ボディガード』(1992年)です。不審者から狙われるレイチェルを護衛するために雇われた凄腕のボディガードのフランクを、ケビン・コスナーが演じました。

物語が進んでいく中で、レイチェルはフランクへの恋心を募らせていきますが、ホイットニーはその熱情を艶めいた眼差しで表現。そしてクライマックスで歌い上げる「オールウェイズ・ラヴ・ユー」は、フランクへの切ない愛に満ちていて、観る者の胸に迫るものがあります。

当時を知らない世代でも、サビ頭の「And I…」は一度は耳にしたことがあると思います。作品自体の素晴らしさもありつつ、映画初出演でありながらも見事な演技を披露したホイットニーの表現力の高さに脱帽してしまう作品です。

視力を失っていく母を全力で演じたビョーク

エキセントリックな魅力で唯一無二の存在感を放つアイスランドの人気歌手ビョーク。デンマークの鬼才ラース・フォン・トリアー監督作『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000年)では、遺伝性の病気により視力を失っていく母親・セルマを、魂を込めて演じています。

視力以外にも、移民という境遇や貧困、信じる者からの裏切りなどセルマには様々な不幸が襲い掛かります。そんな彼女をビョークは明るい素朴な女性として体現し、その健気な姿に観る者は心を奪われました。そして、ラストの過酷すぎる現実と向き合う様子は、消えることのない強烈な印象を残しました。

歌手である彼女が、鉄橋の上で映画主題歌「I've Seen It All」を力強く歌うミュージカルシーンは、映画主演2本目とはいえさすがの一言。さらに、第53回カンヌ国際映画祭ではパルムドールに輝いた本作と共に、女優賞を受賞するなど、演技面も高く評価されました。

波乱の道のりを歩むコーラスガールに扮したビヨンセ

グラミー賞やビルボードランキングで数々の記録を打ち立てた歌姫ビヨンセ。1960~70年代のモータウン・サウンド全盛期に活躍した女性コーラスグループをモチーフとしたブロードウェイミュージカルの映画化『ドリームガールズ』(2006年)で、波乱の道のりを歩むコーラスガールの1人、ディーナを演じています。

ブラックミュージック界のレジェンド、ダイアナ・ロスがモデルのキャラクターであるディーナ。彼女を演じるにあたってビヨンセは、半年間に及ぶ厳しい食事制限に挑み14キロの減量に成功しました。そして、名声を手にしながらも、軽んじられ葛藤するディーナを力強く演じています。

『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』(2002年)や、同年の『ピンクパンサー』(2006年)など女優業にも盛んに挑んできた彼女。『ドリームガールズ』では伝説の歌姫が憑依したかのような演技が絶賛され、ゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされています。ビヨンセが哀しみと決意を込めて熱唱した「Listen」のレコーディングのシーンは、持ち前のパワフルな歌声が圧巻です。

スターダムを駆け上がる女性を演じるレディ・ガガ

(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

シンガーソングライターにして稀代のパフォーマー、レディ・ガガ。これまで幾度となく映画化されてきたスター誕生の物語が現代版として甦った『アリー/ スター誕生』では、スターダムを一気に駆け上がる女性・アリーを演じています。

街の片隅にある小さなバーで、ブラッドリー・クーパー扮する世界的ミュージシャン・ジャクソンに才能を見出されるアリー。ジャクソンのライブに飛び入り参加させられたアリーが、二人で「Shallow」をデュエットするシーンは見逃せません。

クーパーの低音ボイスとガガの味のある力強い歌声が、互いに語りかけるように重ねられるこのパフォーマンスでは、世界に羽ばたくスターが誕生する高揚感と、強烈に惹かれ合う2人の愛の始まりの予感が。ガガの高い歌唱力とカリスマ性が存分に発揮されている、鳥肌もののシークエンスです。

(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

類まれなき歌声で観客を魅了する歌姫たち。“本物”だからこその美声と圧倒的な迫力が、彼女たちの名演をさらに引き立て、物語に深い余韻を与えているのでしょう。

(文/足立美由紀・サンクレイオ翼)