文=関口裕子/Avanti Press

ミラノコレクションで「DOLCE&GABBANA」のランウェイを歩いた女優でモデルの三吉彩花が、映画に初主演する。

そのミュージカル映画のタイトルは『ダンスウィズミー』。監督は『ウォーターボーイズ』(2001年)、『スウィングガールズ』(2004年)、『ハッピーフライト』(2008年)の矢口史靖で、“2019年夏 日本中が踊り出す!”のキャッチコピーを掲げ、現在絶賛製作中だ。

ミュージカル映画に立ちはだかる世界共通の壁

矢口監督は『スウィングガールズ』の頃からミュージカルを撮りたいと思っていたそうだが、突然歌い踊ることに違和感があり、企画を進めることができなかったという。

左からやしろ優、宝田昭、三吉彩花、矢口史靖監督
『ダンスウィズミー』2019年夏公開(C)2019「ダンスウィズミー」製作委員会

この問題、意外と蔓延しており、ミュージカル映画の本場アメリカでもよく聞く話。『シカゴ』(2002年)や『バーレスク』(2010年)などミュージカル映画に、ショービズの世界を描いたものが多いのも突然歌い出しても違和感のない世界だから。

唐突に歌い踊ることに説得力がなければ、リアルな映像を見慣れた観客は乗れず、結果、ヒットすることもない。普通の男女の恋をミュージカルで描こうとした『ラ・ラ・ランド』(2016年)も、資金集めに苦労したとデイミアン・チャゼル監督は話していた。

傑作ミュージカル舞台「オケピ!」の脚本・演出家の三谷幸喜も、意外や“違和感があった派”。解決策として、歌い踊るのは心の内を吐露する部分のみとしたため、多くの観客がすんなり歌や踊りに入ることができた。

三吉彩花という新しいミュージカルヒロイン

矢口監督も、ある日、その違和感を払しょくする抜群のアイデアを思い付く。それは、「音楽を聞くと歌い踊りたくなる催眠術にかけられた女の子がいたら?」ということ。「これはいける!」と脚本を書き上げたのが『ダンスウィズミー』だ。

『ダンスウィズミー』2019年夏公開(C)2019「ダンスウィズミー」製作委員会

その結果、ヒロインを演じる女優の条件は、「丸の内辺りに勤めるキラキラOLに見えて、歌えて踊れてコメディエンヌで芝居ができる」という、結構ハードルの高いものとなった。三吉彩花は、この条件を見事クリアして、500人の中から静香役をゲット!

矢口監督曰く「美人で、手足が長くて、両手をバーンと広げると大輪の花みたいなのに、コミカルな芝居も面白かった」。「宝物を発見した」と絶賛。

当の三吉は、監督の言葉に驚き、「選ばれる気がしなかった」と自信なさげに言うが、撮影現場では、ダンスや、ちょっとした芸で、その才能を披露。取材に来ていた記者やスタッフまでをも魅了していた。

『ダンスウィズミー』2019年夏公開(C)2019「ダンスウィズミー」製作委員会

ふと思い出すのは『ラ・ラ・ランド』でミアを演じたエマ・ストーン。なかなか芽が出ず、撮影所内のカフェでアルバイトをしながら、女優を目指すミアのキャラクターには、エマ・ストーン自身の体験が反映されている。

もちろん三吉には、催眠術にかかって歌い踊ってしまった過去などない(たぶん)。しかし一流企業に勤め、すごくかわいいのにちょっと自信なさげ。でも踊ったらすごい静香と、少し似ているような気がするのだ。百聞は一見に如かず。ぜひ解禁された超特報予告編動画をご覧いただきたい。

ダンス人気を背景にミュージカルの好感度も高まる?

三吉彩花自身も、ガールズヒップホップやバレエなどのダンスを友人と楽しんでおり、ストレス発散の趣味だという。

『ダンスウィズミー』2019年夏公開(C)2019「ダンスウィズミー」製作委員会

2012年から中学校の体育の必修科目となったダンス。その目的を文部科学省は、「イメージをとらえた表現や踊りを通した交流を通して仲間とのコミュニケーションを豊かにすることを重視する運動で、仲間とともに感じを込めて踊ったり、イメージをとらえて自己を表現したりすることに楽しさや喜びを味わうことのできる運動」と記している。

これも影響してか、YouTubeなどインターネット上には「踊ってみた」など多くのダンス動画が投稿され、高い再生回数を記録している。また全世界で約8億ダウンロード(Androidユーザーを除く。2018年11月現在)を記録するショートムービー共有SNS「Tik Tok」も、投稿の中心は自撮りのダンス動画であることが報告されている。

演出中の矢口史靖監督(左)と三吉彩花 『ダンスウィズミー』2019年夏公開(C)2019「ダンスウィズミー」製作委員会

人前で踊ることに抵抗を感じるのは、もはや「旧世代」となりつつある。その旧世代も、ダンスにはノルアドレナリンやドーパミン、セロトニンなど神経伝達物質を出し、気分を解きほぐす効果がある上、メタボ対策などにも効果的と、医者に奨励され、ダンス人口は年齢性別を問わず広がるばかり。ダンスは観ることでも脳が活性化されると、劇作家で京都文教大学臨床心理学部客員教授の平田オリザらは言っている。

『ラ・ラ・ランド』や『グレイテスト・ショーマン』(2017年)のヒットの背景には、そんなことも関連しているのかもしれない。

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『ダンスウィズミー』は、映画のワンシーンの撮影を見学しているだけで、音楽に合わせて身体が揺れる。サーキュラースカートがくるくる広がる様もきれいでかわいい! とにかく楽しく、笑わせ、キュンとさせ、踊りだしたくさせてくれるのだ。これは観たいな! と、気持ちが盛り上がる。

2019年の夏公開。配給は、映画史上初のトーキー(音声あり)映画『ジャズ・シンガー』(1927年)で、主人公を“歌わせた”ワーナー ・ブラザース映画。日本発の最新のミュージカルが誕生するのを楽しみに待ちたい!