全世界で愛されるディズニー・アニメーション作品。現在、世界中の劇場で公開されている主要なディズニー・アニメーションは、ディズニー社の2つのアニメ製作部門で手掛けられている。

一つは約95年という長い歴史を持つウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ(以下、ディズニー・スタジオ)、もう一つが『トイ・ストーリー』シリーズで知られるピクサー・アニメーション・スタジオ(以下ピクサー)だ。

ひとくちに“ディズニー・アニメーション”として括られるが、両スタジオは互いに良きライバルとして切磋琢磨を続けながら次々と名作を生み出している。

どちらのスタジオが作った作品かを見分ける方法は簡単。本編の前に、ミッキーマウスが口笛を吹く『蒸気船ウィリー』のロゴが登場するのがディズニー・スタジオ作品、電気スタンドがぴょんぴょんと跳ねるロゴが現れるのがピクサー作品だ。

今回は、両スタジオの作品を中心に、意外と知らないディズニー・アニメーションの長編作品の歴史をご紹介!

記念すべき第1作『白雪姫』

白雪姫 ディズニー・アニメーション

『白雪姫』(C)2018 Disney
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現在、巨大企業となったディズニー社は、まだテレビがない時代に劇場短編作品の制作会社としてスタート。その一部門であるディズニー・スタジオは、ディズニーの歴史そのものだ。

創始者のウォルト・ディズニーによって誕生し、ミッキーマウスの短編などが人気を博した1937年、ディズニー・スタジオによるディズニー・アニメーションの長編第1作目にして、アニメーションとしては世界初のカラー作品『白雪姫』が公開される。

当時はまだ映像を映画館でしか観られなかった時代。“アニメ”は実写映画の合間に流される短編のみで、そのほとんどは子ども向けだった。そんな常識を覆した『白雪姫』は、全世界で大ヒットを記録する。

第二次世界大戦と起死回生の『シンデレラ』

シンデレラ コレクション

『シンデレラ』(C)2018 Disney
MovieNEXコレクション(8,000円+税)好評発売中/デジタル配信中

『白雪姫』のヒット以降、今では名作と名高い『ピノキオ』(1940年)、『ダンボ』(1941年)、『バンビ』(1942年)などが公開されるが、『白雪姫』ほどのヒットには至らなかった。第二次世界大戦の影響により海外展開ができなくなったこともあり、ディズニー・スタジオは経営難に陥ってしまう。

しかし、終戦を期にウォルトは長年温めていた『シンデレラ』(1950年)の制作を開始。5年もの歳月と『白雪姫』の約2倍の製作費を注ぎ込んだ入魂の一作は、ディズニー史上最高のヒットを記録(※)。

主人公シンデレラと同様、逆境を跳ね返したディズニー・スタジオは、『ピーターパン』(1953年)、『眠れる森の美女』(1959年)、『101匹わんちゃん』(1961年)などの大ヒット作を次々と送り出し、ウォルトの念願だったディズニー・ランドもオープン。ディズニー黄金期を迎えることになる。

眠れる森の美女&マレフィセント

『眠れる森の美女&マレフィセント』(C)2018 Disney
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ウォルトの死と低迷期

1966年、創始者のウォルト・ディズニーが急逝する。リーダーを失ったディズニー・スタジオは徐々に失速し、暗黒期と呼ばれる80年代後半まで業績は低迷していく。

要因として、ウォルトの死はもちろんだが、時代と共に映像メディアが急速に変化していったことも挙げられる。テレビの普及によって映像は映画館だけのものではなくなり、アニメーション作品と言えばテレビアニメが一般的なものとなった。また、ビデオテープの登場によってレンタルビデオも普及し、映像コンテンツは爆発的に増加。このような背景から、劇場用アニメーションそのものが注目されていなかった時代だったとも言えるだろう。

約30年ぶりにプリンセスが主人公、ミュージカルで新時代へ

1989年、ディズニー・スタジオが再び劇場用長編のディズニー・アニメーションで世界中の注目を集める作品を世に送り出す。それが『リトル・マーメイド』だ。

リトル・マーメイド movienex

『リトル・マーメイド』(C)2018 Disney
ダイヤモンド・コレクション MovieNEX(4,000円+税)好評発売中/デジタル配信中

本作は『眠れる森の美女』以来、約30年ぶりにプリンセスが主人公。最大の特徴は、ブロードウェイを意識したミュージカル仕立ての作品であることだ。『リトル・マーメイド』は“プリンセス&ミュージカル”という現在のディズニー・アニメーションのイメージを決定付け、『シンデレラ』を超えるディズニー最大のヒット作となる。

美女と野獣 コレクション

『美女と野獣』(C)2018 Disney
MovieNEXコレクション(8,000円+税)好評発売中/デジタル配信中

また、1991年公開の『美女と野獣』はアニメーション作品として初めてアカデミー賞作品賞にノミネートされる快挙を成し遂げ、『アラジン』(1992年)、『ライオンキング』(1994年)と、その後最新作が公開されるたびにディズニー・スタジオの興行収入記録を更新。それぞれのミュージカルナンバーも大きな注目を集め、ディズニー・スタジオは再び黄金期を迎える。

『トイ・ストーリー』をきっかけに3DCGアニメの時代が到来

順風満帆に思われたディズニー・スタジオだが、再び思わぬ苦戦を強いられることになる。きっかけは、1995年に大ヒットしたピクサーによる世界初のフルCG長編アニメーション作品『トイ・ストーリー』だ。

トイ・ストーリー3

『トイ・ストーリー』(C)2018 Disney/Pixar
MovieNEX (4,000円+税)好評発売中/デジタル配信中

本作の成功は、もちろん良質なストーリーとキャラクターがあってのことだが、進化したCG技術は制作コストを抑えるだけでなく、表現の幅を広げることも証明して見せた。
(ちなみにピクサーは、もともとルーカスフィルムのCGアニメーション部門の一つだったが、アップルを退職していたスティーブ・ジョブズが買収し、設立された会社である)

『トイ・ストーリー』のヒットを機に、2001年の『シュレック』など、ディズニー以外の映画スタジオもフルCGアニメーション作品を次々と公開。ハリウッドにフルCGアニメーション映画のブームが巻き起こる。手書きスタイルの2Dアニメーションは主流でなくなり、ミュージカルアニメも激減していった。

モンスターズ・インク

『モンスターズ・インク』(C)2018 Disney/Pixar
MovieNEX (4,000円+税)好評発売中/デジタル配信中

ピクサーはこれ以降も、ディズニー社と共に『モンスターズ・インク』(2001年)、『ファインディング・ニモ』(2003年)など大ヒット作を連発。アニメーション映画界を代表するスタジオとなっていく。しかし、当時のピクサーは外部の制作会社。伝統ある制作会社ディズニー・スタジオは、『リロ&スティッチ』(2005年)をヒットさせていたものの、時代の流れであるフルCGアニメーション映画には完全に後れを取ってしまう。

ディズニー社がピクサーを買収しジョン・ラセター体制に

2005年、ディズニー・スタジオはようやくフルCGによるディズニー・アニメーション『チキン・リトル』を完成させるが、ピクサー作品の勢いには及ばなかった。そして2006年、ついにディズニー社がピクサーを買収する。

これによりディズニー社にはピクサーとディズニー・スタジオという2つのスタジオが存在することになり、それぞれが特徴を活かした作品を制作していく。そんな中、両スタジオの作品を統括する制作トップに就任したのが、ピクサーで数々のヒット作を手掛けたジョン・ラセターだ。

ラセターは、“革新的なピクサー”と“伝統のディズニー・スタジオ”というそれぞれの良さを尊重し、差別化を図って作品を展開していく。その証拠に、ラセターが就任した後の2008年にディズニー・スタジオが手掛け、スマッシュヒットとなった『プリンセスと魔法のキス』(2008年)は、世界の流れに逆行した手描きスタイルの2D作品かつミュージカルで、主人公はプリンセスだった。

プリンセス&ミュージカルの復権

2010年、2億6,000万ドルというアニメ史上最大の予算(※)を投じ、約6年間という期間を費やして制作されたのが、ディズニー・スタジオの記念すべき50作目『塔の上のラプンツェル』だ。

塔の上のラプンツェル

『塔の上のラプンツェル』(C)2018 Disney
MovieNEX(4,000円+税)好評発売中/デジタル配信中

本作は長編フルCGのディズニー・アニメーションでありながら、2D作品のような温かみのある表現を目指し、特に主人公ラプンツェルの髪の毛の表現には最新のテクノロジーが注ぎ込まれた。

ミュージカルとプリンセスというディズニー・スタジオが得意とする要素をさらに推し進めた本作は、テクノロジーと伝統が融合した傑作に仕上がり大ヒット。ディズニー・スタジオは劇場アニメーションの最前線に鮮やかに復活を遂げた。

シュガー・ラッシュ

『シュガー・ラッシュ』(C)2018 Disney
MovieNEX(4,000円+税)好評発売中/デジタル配信中

続く『シュガー・ラッシュ』(2012年)では、非ミュージカルで型破りなキャラクターを配しながらも、しっかりとプリンセスストーリーとして成立させ、その勢いは2014年の『アナと雪の女王』で頂点へ達し、“アニメーション史上世界最大のヒット”という輝かしい記録を達成する。

アナと雪の女王

『アナと雪の女王』(C)2018 Disney
MovieNEX(4,000円+税)好評発売中/デジタル配信中

57本目の最新作『シュガー・ラッシュ:オンライン』

ディズニー・スタジオ作品57本目となる最新作『シュガー・ラッシュ:オンライン』が12月21日より公開する。本作にはディズニー・スタジオを支えてきた歴代のプリンセスが総登場していることも話題だ。

ちなみに、『メリダとおそろしの森』(2012年)の主人公メリダが、ピクサー作品から唯一のプリンセスとして登場しており、そこにはちょっとした笑いが用意されているので、ぜひ劇場で確かめてほしい。

メリダとおそろしの森

『メリダとおそろしの森』(C)2018 Disney/Pixar
MovieNEX(4,000円+税)好評発売中/デジタル配信中

振り返ってみると、第1作『白雪姫』から始まった長い歴史の中で、ディズニー・スタジオの窮地を救ってきたのは“プリンセス作品”であることがわかる。それは他のスタジオには真似できない、“ミュージカルとプリンセスを描ける”ディズニー・スタジオ最大の強みでもあるのだ。

来る2019年は、2017年に大ヒットした『美女と野獣』の実写化につづいて、『アラジン』と『ライオンキング』の実写映画が公開予定。どちらもディズニー・スタジオによる名作中の名作だけに、その出来栄えは大いに気になるところ。新たな形での伝統とテクノロジーの融合も観られるはずだ。

ぜひ冬休みを利用して、実写化予定の2作品はもちろん、紹介したディズニー作品を観返してほしい!

(文=稲生稔/SS-Innovation.LLC)

※IMDb調べ