文=関口裕子/Avanti Press

詩人・北原白秋と音楽家・山田耕筰は、この映画のタイトル「この道」を含む、100年歌い継がれる歌を次々と発表した黄金コンビ。でも彼らだって、音楽の教科書に載るなんて考えてもいなかっただろう。なぜなら大正、昭和初期の人々の心を掴み、歌われた、大衆歌謡だったのだから。いまでいえば、「夜空ノムコウ」、「負けないで」、「翼をください」、「少年時代」のように、ヒットした後、音楽の教科書に載った曲を作っていたというわけだ。

そんなトップランナー、北原白秋と山田耕筰を、現代のトップパフォーマー、大森南朋とAKIRA(EXILE)が演じた。お二人に音楽について、パフォーマンスについてお聞きした。

『この道』1月11日(金)より新春全国公開 (C)2019映画「この道」製作委員会

トップパフォーマー、大森南朋とAKIRAのお互いの印象は?

――初めての共演かと思いますが、撮影の前後でお互いの印象は変わりましたか? また共演されて魅力的だなと思った部分を教えてください。

大森:AKIRAさんが出演されているドラマや映画など拝見しておりました。EXILEのパフォーマーとしてスタイルもいいですし、かっこいいなと思っていました。この印象は共演後も変わりません。実際お会いてみるとすごく気さくで話しやすいうえ、本当に礼儀正しい青年で(笑)。芸能界に、こんなにちゃんとしている人がいるのかと(笑)。

大森南朋 スタイリスト:伊賀大介(band) ヘアメイク: TAKAHASHI(STEREO Gn) 撮影=谷岡康則

AKIRA:なにを言っているんですか(笑)。僕は素人みたいな感想ですが(笑)、大森さんのいろいろな作品を観せていただく中で、ちょうど読み合わせ前に観たのが『アウトレイジ 最終章』(2017年)だったので、その先入観で入ってしまって(笑)。最初はすごく緊張しました! でもお会いすると、現場をすごく柔らかい空気感にしてくださるし、自然にフランクに接してくださる。お会いする前後で印象はガラリと変わりました。カラオケに行ったときに、一緒に「この道」を熱唱したり(笑)、僕たち後輩と対等に接してくれるけど、ドンとそこにいてくださる。その感じが心強かったです。やってらっしゃるバンドもすごくかっこいいし。

二人が演じた北原白秋、山田耕筰はどんな人?

――北原白秋、山田耕筰は、「からたちの花」「この道」をはじめ、様々な童謡を作詞や作曲された方。お二人の記憶に残る童謡は?

大森:「ゆりかごのうた」(作詞:北原白秋、作曲:草川信)です。「かんぴょう」(詩:北原白秋、曲:福井文彦)は演じる中で初めて知りましたが、「かんぴょう、かんぴょう、かんぴょう、かんぴょう」という歌詞が面白い。なんだこれはと(笑)。「茶切節」(作詞:北原白秋、作曲:町田嘉章)の「ちゃっきり、ちゃっきり、ちゃっきりよ」もですけど(笑)。

『この道』1月11日(金)より新春全国公開 (C)2019映画「この道」製作委員会

AKIRA:(笑)。北原白秋さんの詞ではありませんが、劇中、僕が縁側で歌う、「赤とんぼ」(作詞:三木露風、作曲:山田耕筰)ですね。昔から知っている歌ですが、今回、初めて山田さんが作られた曲だと認識しました。『この道』をやったことで山田耕筰さんと北原白秋さんが作られた歌が、身の回りにたくさんあることに気づきました。お二人は、本当に多くの校歌や、ブリヂストンや富士重工(スバル)なんかの社歌を作られていて、びっくりしました。今の日本の音楽を支えていると言っても過言じゃありませんよね。

――本当にいろいろな曲を手掛けた山田耕筰さんですが、その音楽性についてどう感じましたか?

AKIRA:指揮をするとわかりますが、山田耕筰さんは、海外で音楽を勉強してきて、洋楽の感覚で日本語の曲を作っている。だから譜割りとか、いきなり飛ぶんです。三拍子から二拍子とか、三拍子、四拍子とか。いい意味でひねくれている山田さんの譜面は、難しいけれど、耳に残るし、温かい。山田耕筰さんのすごさを、音楽に触れ、楽器に触れて感じました。

実在の人物を演じる怖さとは?

『この道』1月11日(金)より新春全国公開 (C)2019映画「この道」製作委員会

――音楽室に貼ってある肖像画の方々、要するに偉人を演じるうえで気を付けたことは?

大森:北原白秋というと、なにかすごく堅そうですし、学校の授業の印象しかなかったのですけど、北原さんも山田さんも、当時、文学界や音楽界の第一線を走っていたトップランナーだと思うんです。しかし、意外と破天荒だったと。学校ではそんなことは教えてくれませんし、感情表現豊かなアーティストだからもっと変わっている人だったと思います。今回はそれをややオブラートに包んで(笑)演じたつもりです。

AKIRA:僕は北原白秋とのバランスがあるので、佐々部清監督と相談して、コントラストを付ける意味で、山田耕筰さんご本人よりやや生真面目に演じました。大森さんもおっしゃったように、当時の芸術家の方々は、たぶん今より破天荒だったと思うんです。でもそこは音楽の教科書に載せられない(笑)。山田さんは何度か離婚されていますし、酒豪だったそうなので、また違うストーリーで大森さんと演じられるのであれば、二人でベロベロになって女性談義をする、なんていうシーンがあるのかもしれませんね(笑)。

大森:あの二人は絶対そういう感じだよね(笑)。

AKIRA:はい(笑)。でも最後は音楽の話に戻るみたいな。今回、北原さんや山田さんのことを知って、お二人の時代のそういう友情ものも演じてみたいと思いました。

時代はめぐっていることを実感させる映画

――北原白秋さん、山田耕筰さんの周りには、与謝野晶子さん、与謝野鉄幹さん、鈴木三重吉さんと錚々たる実在の方たちが、生きて切磋琢磨していたわけです。100年後、大森さんとAKIRAさんのことを話しているかもしれないと考えるといかがですか?

『この道』1月11日(金)より新春全国公開 (C)2019映画「この道」製作委員会

大森:だといいですね(笑)。どういう気持ちなんですかね、北原さんと山田さん。今こんなふうに好き勝手に語られていて(笑)。

AKIRA:違う! 違う! って言ってたりして(笑)?

大森:本人が嫌がっていたら嫌ですね。

AKIRA:思います(笑)。

――AKIRAさんは、ピアノやヴァイオリンを弾くシーンがありますが、練習はかなりされたんですか?

『この道』1月11日(金)より新春全国公開 (C)2019映画「この道」製作委員会

AKIRA:はい。特に、p(ピアノ)、pp(ピアニッシモ)という優しいテンポのメロディがすごく難しかったです。ヴァイオリンも練習一発目から偶然にも音が出ちゃって(笑)。これはいけるとなって弾かせていただくことになりました(笑)。そこは大森さんとの超重要なシーンだったので、台無しにならないよう、ライブと重なっていたんですけど、ヴァイオリンを持ち歩いて練習しました(苦笑)。

大森:ははは。楽器は大変ですよね(笑)。

――年をとってからの山田耕筰さんは、特殊メイクで演じられたんですか?

AKIRA:はい。演じるのは、山田さんの30代、50代、60代で、50代は白髪でいこうかと話していたんですが、ある時、耕筰さんが髪を剃られていたことを聞いて、監督と相談して坊主頭にすることにしました。まるでフルフェイスのヘルメットを被っているような、立派な特殊メイクで、5~6時間かかるんです。合唱団の人たちはじめ、誰も僕だと気付いてくれませんでした(笑)。

大森:合唱団の皆さんは、どれだけEXILEのAKIRAさんが来ることを期待されていたか(笑)。

AKIRA:佐々部清監督は、ビジュアルにすごく厳しい方で、髪型にしても、眉毛の眉尻にしても、すごく厳しくこだわっていらっしゃった。でも特殊メイクした僕を見た時は、愕然とされていましたね。ご自分でおっしゃったのに(笑)。

ロケ地の力、音楽の力

――大正、昭和の時代感も素敵でしたが、印象的だったロケ地は?

大森:僕は、ソフィ(松本若菜)と子どもと一緒にさくらんぼを食べる、箱根の富士屋ホテルの庭園(現在、耐震工事のために休館中)ですね。あそこはすごく庭がきれいで、印象深いです。あの日はとても寒かったのですが、映像ではそうは見えない。俳優がいくら頑張ってもその世界にはなりません。ロケ地の影響はあると思います。

『この道』1月11日(金)より新春全国公開 (C)2019映画「この道」製作委員会

AKIRA:僕は、最後に北原白秋さんと二人で「この道」を口ずさむシーンです。なんでもない丘の上の道なんですけれど、すごくいい場所でしたね。あと、これもラスト近くですが、縁側で夕陽に向かって二人でしゃべるところ。あれはセットですが、あんなふうに作り上げた京都の撮影所のスタッフさんを素晴らしいなと思いました。監督もおっしゃっていましたが、今は映画もドラマもスマホで観られ、その差を出すのが難しくなっていますが、ああいう温かみを出せるところが日本映画のいいところなんじゃないかなと思いました。

――音楽がいろいろな力を持っていることに気づかせてくれる映画ですが、皆さんにとって音楽とは何ですか? また、音楽にはどんな力があると思いますか?

大森:音楽は、耳から入って脳に直接届くもの。曲と共に、歌詞もダイレクトに伝わってくる。そういうのが子どもにも、思春期の人にも響くんだろうなと思います。すごく直接的なものだと感じます。曲と詞でいうと、僕は詞が好きなのかもしれません。日本語が好きなので、うまく曲に詞を乗せられたらいいなと思い、勉強しながらやっています。こういう役を演じると本当に勉強になります。日本語の乗せ方がすごくうまい。北原白秋を演じさせていただいて、本当によかったと思っています。

AKIRA:音楽は生活には欠かせないもの。必ずどこかで流れていますし、無音の一日はありませんよね。音楽は、パワーやエナジーの源になったり、心を落ち着かせたり、青春時代をふと思い出させたり。匂いと似ていて、一瞬にして人の心を豊かにしてくれるものだと思っています。

AKIRA ヘアメイク:MAKOTO(juice) スタイリング:橋本敦 撮影=谷岡康則

――音楽もそうですが、パフォーマンスもきっと同様ですよね? ダンスにはどんな力が?

AKIRA:ダンスをずっと続けていると、ただ楽しいだけじゃなく、毎回発見があります。発見と同時に、芝居や生活や人生にも活かすことができる。体調面でも、なにかしら気付かせてくれます。常に進化できるというか。ダンスをやっていてよかったなと思いますね。