【町田雪のLA発★ハリウッド試写通信 ♯21】
「LA発★ハリウッド試写通信」では、ロサンゼルス在住のライターが、最新映画の見どころやハリウッド事情など、LAならではの様々な情報をお届けします。

今シーズンのアメリカ映画界からは、日本への愛を感じることが多い。

22日に発表されたアカデミー賞ノミネーションでは、アニメーション部門に『未来のミライ』(2018年)とウェス・アンダーソン監督が日本愛を詰め込んだ『犬ヶ島』(2018年)、外国語映画部門に『万引き家族』(2018年)がそろって候補入り。

賞レース前半に発表されたロサンゼルス映画批評家協会賞にいたっては、『万引き家族』と村上春樹原作の韓国映画『バーニング』(2018年)が外国語映画賞を同時受賞し、宮崎駿監督に功労賞が贈られた。

昨年12月には、今年後半にオープンが予定される「アカデミー映画博物館」の全容が公表され、メイン展示に次ぐ企画展第1弾に宮崎駿の回顧展、さらにクリエイターをフィーチャーするスペース「ハード・ギャラリー」のこけら落としを東京発のウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」が手掛けることになった。

ロサンゼルスの新名所アカデミー・ミュージアム内のイメージ
(C)2018 Academy Museum of Motion Pictures. All Rights Reserved.

同博物館のオープンは、ハリウッド中が注目しているビッグプロジェクトだ。

こうした一連の動きから感じるのは、米映画界の日本愛。もちろん、業界と一般の温度差が大きいこともあるが、「米国におけるモノづくりの先端で、日本のクリエイティブが存在感を発揮」していることは確か。具体的な内容を紹介したい。

アカデミー賞に見る日本愛!? 『万引き家族』

まず、アカデミー賞に向けたアワード・シーズンに存在感を発揮している日本系コンテンツを見てみたい。

昨年末より米国で限定劇場公開されている『万引き家族』は、賞レースの後押しもあってか徐々に興行を伸ばし、オスカー・ノミネーション発表前の時点で91館にて204万ドルをマーク。すでに2009年にアカデミー賞外国語作品賞に輝いた『おくりびと』の27館150万ドルを超えているが、今回のノミネーションを受けて、さらに多くの人々を動員することだろう。

是枝裕和監督へのインタビュー記事も各メディアがこぞって掲載。映画サイト「Indie Wire」は、是枝監督から新作への出演依頼を受けたイーサン・ホークが即OKしたエピソードを引き合いに、ホークのような多くのシネフィルたちが、『万引き家族』以前から是枝作品を敬愛しているとし、カンヌ最高賞を受賞した同作に限られない是枝流フィルムメイキングを賞賛している。

『万引き家族』 (C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

アカデミー賞の外国語映画賞は、アルフォンソ・キュアロン監督によるメキシコ代表作『ローマ/ROMA』が最有力だが、アワード予想に定評のある米「バラエティ」紙は、『万引き家族』受賞の可能性も記事の随所にほのめかしている。

アニメーション賞も日本愛!?『未来のミライ』

そして、長編アニメーションにおいては、細田守監督の『未来のミライ』が、アカデミー賞長編アニメーション部門ほか各アワードのノミネートを獲得。

昨年11月にハリウッドの映画祭に参加した細田監督は、「何も大きなことは起こらず、地道に子どものいる家庭を描写しているにすぎない同作は、(娯楽性を重視する)米アニメーションと対局にある作品。だからこそ、アニメーションという枠を超え、独自の視点や価値を持った映画作品として、多くの人に届くかもしれない」と語っていたが、そうした心の機微を描いた作品が評価されるのは、素晴らしいことである。

ウェス・アンダーソン監督が日本を舞台に日英バイリンガルで描いた『犬ヶ島』も、日本のクリエイター&キャストの力が結集した作品として応援したい。

『未来のミライ』 (C)2018 スタジオ地図

ハリウッド映画人念願の「アカデミー映画博物館」オープン!

そして、アカデミー創始者が当時から熱望していたという90年越しの夢の施設であるアカデミー映画博物館においても、日本が存在感を発揮。

同施設は、米ディズニー・トップのボブ・アイガーを筆頭に、トム・ハンクス、アネット・ベニング、スティーヴン・スピルバーグら著名人と世界中の映画ファン、ディズニー、ワーナー、Netflixなどの主要スタジオが、これまでに3億8,800万ドルを出資し、開館への準備が進められてきた。

そして開館時期と展示内容の発表が待たれるなか、ついに昨年12月、「宮崎駿」「チームラボ」の名前が光るプレスリリースが届いたのだ。

アカデミー・ミュージアム内のイメージ(C)2018 Academy Museum of Motion Pictures. All Rights Reserved.

映画製作と映画の役割を伝えるマジックを!「宮崎駿」「チームラボ」

主催者側は同博物館のミッションについて、「世界中の映画製作における芸術と科学の進化を理解するためのツール」「社会における映画の役割を考えるきっかけ」と位置づけている。そして何より、「映画はマジック」をキーワードに、現実と幻想の間に訪問者を誘い、まるで映画館で映画を観ているような魔法をかけたいのだ、と。

そこで選ばれたのが、宮崎駿とチームラボ。アンジェリーナ・ジョリーが “子どもたちと宮崎映画を観るのが好き”といった、セレブ支持者の情報はもちろん、筆者の周りでもトトロ(『となりのトトロ』)やキキ(『魔女の宅急便』)が大好きといったジブリ好きなアメリカ人家族や友人が多いため、納得すると同時にうれしくなる。

チームラボは、個人的に昨夏のお台場で感動し、「アメリカでも絶対ウケる!」と皆に誇っていたのだが、もうとっくに、あたり前のように発掘されていたというわけで、やはりうれしい。

宮崎駿――そのイマジネーション、ビジョン、職人技、奥深い人文主義の価値観

宮崎駿に関する展示は「伝説的フィルムメイカー宮崎駿の回顧展」とタイトルづけられ、スタジオジブリとのコラボレーションで、『となりのトトロ』(1988年)や『千と千尋の神隠し』(2001年)をはじめとする人気映画から、200枚以上のコンセプトスケッチやキャラクターデザイン、ストーリーボード、セル画、背景画、場面映像などが展示される予定。

カタログ展示や作品上映、イベント、物販なども行われるといい、映画ファンのみならず、アート好きな大人や家族連れも惹かれる空間になりそうだ。

宮崎監督のポートレート (C)2018 Academy Museum of Motion Pictures. All Rights Reserved.

興味深いのは、宮崎駿展を説明する今回のプレスリリースのなかに「アニメーション」や「カートゥーン」という言葉が出てこないこと。宮崎監督が同博物館の最初の顔に選ばれた理由は、「何世代ものフィルムメイカーとフィルムラバーに影響を与え続けている」からだという。

アニメーションやアニメがひとつの芸術ジャンルとして存在し、宮崎監督を敬愛するアニメーターが多く存在するのも事実だが、宮崎監督やジブリ作品は、実写、CG、アニメなどの枠を超えて、多くのフィルムメイカーに影響を与えているということなのだ。

さらに同展示は、「宮崎駿のイマジネーション、作家としてのビジョン、職人技、奥深い人文主義の価値観を祝するもの」と説明されており、作品の奥にあるメッセージも重要視されていることがわかる。

ちなみに、同展示に続く2020年の企画展第2弾は「再生:1900年~1970年のブラック・シネマ」。当時見過ごされていたアフリカ系アメリカ映画にスポットライトを当て、社会への影響を考察する展示となる。

チームラボ――映像とデジタル技術の可能性、ドラマチックかつインタラクティブに

一方、チームラボがオープニングを飾るのは、映像メディアの境界線に挑む現代クリエイターをフィーチャーする企画だ。

チームラボのイメージ写真(C)2018 Academy Museum of Motion Pictures. All Rights Reserved.

「ボーダレス」を枕詞に人々を魅了している「チームラボ」はジャストミート。主催者側は「500人以上のアーティストやプログラマー、エンジニア、CGアニメーター、数学者、建築家で構成されたチームが、映像とデジタル技術の可能性を広げ、ドラマチックでインタラクティブなインスタレーションで魅せる」とうたっており、映画業界はもちろん、一般来場者の注目を集めることになるだろう。

世界配信でも日本愛!?

こうした映画関連のニュース以外でも、Netflixによって世界配信されている「テラスハウス」が全米でカルト人気を博していたり、Netflixオリジナル作品であるキャリー・フクナガ監督、エマ・ストーン主演の「マニアック」において、主役レベルの存在感を発揮するのが日本人医師チームの設定であったりと、あちこちで日本を目にする機会が増えた。

評価は様々だが、日本の技術やクリエイティブ性、タレントが国境を越えて、米国のクリエイターや観客、視聴者を魅了する様子にワクワクする。さて、2019年の米映像界では、どんな“日本愛”が感じられるだろうか?