文=新田理恵/Avanti Press

圧倒的なインターネットユーザーを持つ中国。サイバー攻撃を繰り返すハッカー集団の存在や監視カメラによる顔認証システムの普及などニュースでよく目にする話題から、中国発の動画投稿アプリ「Tik Tok」人気、スマート家電市場の盛り上がりなど、近年、ハイテク分野でその存在感を増している。

そんな時代を反映するような、サイバーテロリストとの戦いを描く中国映画『サイバー・ミッション』が1月25日に公開を迎える。見どころは、近未来的なビジュアルと、上海やマレーシアなどアジアを股に掛けたロケーション、そして国際色豊かなキャスティングだ。主演は、中国出身で韓国アイドルグループSUPER JUNIORの元メンバーであるハンギョン。共演に、『モンガに散る』(2010年)、『GF*BF』(2012年)などで知られる台湾のリディアン・ヴォーン、日本からはこれが初の海外作品となる山下智久らが名を連ねている。

山下智久、新境地! 裏世界の大物を演じる

家に引きこもってオンラインゲームに興じているオタク系のフリープログラマー、ハオミン(ハンギョン)は、そのハッキングスキルを善良な目的で使う「ホワイトハッカー」だ。ある日偶然コンビニで美少女スー・イー(リー・ユエン)と知り合うが、彼女はハオミンがハッキング大会で負かしたことのある“ゼブラ”というハッカー(ヴォーン)の仲間で、ゼブラがあるミッションにハオミンを引き入れるための罠だった。

『サイバー・ミッション』1月25日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
(C)2018 SIRENS PRODUCTIONS LIMITED BONA ENTERTAINMENT COMPANY LIMITED MORGA

香港警察の要請もあり、ハオミンはゼブラの狙いを探るため、彼らのハッカー集団に潜入することに。ゼブラの裏にはモリタケシ(山下)というサイバーテロ組織の大物がおり、ハオミンたちに世界最高のセキュリティレベルを誇るインフラ管理システムをハッキングせよとのミッションを与える。しかし、モリの本当の目的はもっと恐るべきものだった。

注目すべきは、モリを演じる山下智久の新境地だ。ともすると表情に乏しく見える美しい顔立ちが、感情の読めないモリというキャラクターにはぴったりはまっている。役のために5~6キロ減量したようで、より陰影が濃くシャープになった顔のフォルムと佇まいには、悪役としての凄味と説得力がある。薄めのメイクで生っぽい肌感を出し、髪には白髪を足すなど、役作りも工夫している。

かねてから英語の習得に熱心なことで知られる山下だが、ほぼ全編英語での台詞も決して付け焼き刃ではないことがすぐ分かる聞きやすさ。マレーシア・クアラルンプールの街の雑踏で体当たりのアクションにも挑戦しており、入念な準備をして臨んだことが見て取れる。

「山Pのために」…熱烈歓迎!中国の山下人気

中国での公開時も、山下の出演が本作の大きなセールスポイントだった。というのも、山下は日本人タレントの中でも、中国で高い人気を誇っている。2018年8月の中国公開を前に、山下は同年6月、ジャニーズ事務所所属のタレントとしては初めて中国版Twitterと言われる微博(ウェイボー)のアカウントを開設。自撮り写真をアップするなど、インターネット上での活動に消極的な日本では見られない一面を見せ、現在68万人のフォロワーがいる。

『サイバー・ミッション』ハンギョン、リディアン・ヴォーン(右) 1月25日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
(C)2018 SIRENS PRODUCTIONS LIMITED BONA ENTERTAINMENT COMPANY LIMITED MORGA

大手ポータルサイト「新浪網」が掲載した「中国で人気の日本のスター」という記事(投票者数は約2万人)では、男性俳優部門で1位、歌手部門でも1位を獲得。テレビドラマを通じて山下を知ったファンが多く、2007年に主演したドラマ「プロポーズ大作戦」(フジテレビ系)は中国でも2017年にEXOのレイ主演で中国版が放送された。「5→9~私に恋したお坊さん~」(2015年・同)や「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」(2008年・同)などでもその端正なルックスで多くのファンを魅了。『サイバー・ミッション』公開時にはSNSに「山Pのために観に行く」という投稿が相次いでいた。

断っておかねばならないのは、「人気が高い」とひと言で言っても、まだまだ一部の日本のドラマ・映画ファンの間に限定されており、中国に行けば誰もが知っているという状況ではないということ。日本のドラマや映画の人気自体も、韓流人気にはまだ及ばない。「広く大衆に知られている」といえば、木村拓哉や小栗旬のほうが知名度は高いが、山下には若者中心に熱心なファンが多い印象だ。

だが、とにかくパイが大きい中国。限定的であっても相当数のファンがいる。若者は最新の日本のエンタメ事情にも明るく、俳優たちが映画祭やプロモーションでやって来ると熱烈歓迎してくれる。山下が参加した『サイバー・ミッション』のプロモーション活動も盛り上がっていた。

相次ぐ中国進出、その魅力とは?

最近では木村拓哉のウェイボーのアカウント開設も話題になった。妻夫木聡が大ヒット映画『僕はチャイナタウンの名探偵2』(2018年)に助演で参加したり、綾野剛が中国映画『破陣子(原題)』(日本公開未定)に主演するなど、日本人俳優やタレントの中国進出が相次いでいるが、それも中国市場の活力と将来性に魅力を感じるからではないだろうか。

『サイバー・ミッション』ハンギョン、リー・ユエン(右) 1月25日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
(C)2018 SIRENS PRODUCTIONS LIMITED BONA ENTERTAINMENT COMPANY LIMITED MORGA

ボーダーレス化が進むアジアの映画界に足跡を残した山下智久。これに続く日本の俳優はどんどん増えていくだろう。現実世界でも起こり得るサイバーテロやハイテク機器の描写、東南アジアの活気も含め、『サイバー・ミッション』は1つの未来予想図を映した作品だと言える。