中島美嘉が歌う冬の定番ソングをもとにテレビドラマ「ひよっこ」、映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』の岡田惠和がオリジナルストーリーを執筆。映画『orange-オレンジ-』『羊と鋼の森』の橋本光二郎監督が映画化。ぶっきらぼうだけど心優しい悠輔を演じた登坂広臣と、余命宣告を受けた美雪を演じた中条あやみが、純度の高く切ないラブストーリーについて語った。

とてもストレートな恋愛物語

Q:『雪の華』の台本を読んだ印象は?

中条あやみ(以下、中条):「雪の華」という曲にピッタリの冬らしい、心が温かくなるお話だと思いました。最初は美雪を中島美嘉さんのような、儚いけど強い女性だと想像しましたが、監督といろいろ話すうちに、ちょっと違うキャラクターになりました。私自身は元気で活発なタイプなので、美雪のように繊細な役を演じるのは難しかったです。じっと我慢出来ない、ある意味で忍耐を求められている感覚でした。それでいて共感出来るところがたくさんあったので、美雪のことを知ろうと思えば思うほど、そのピュアさに心が苦しくなることがたくさんありました。

登坂広臣(以下、登坂):第一印象としてはストレートな恋愛物語だなと。僕が演じた悠輔というキャラクターも、不器用だけど真っすぐで普通の青年。自分に近いところも感じたので、監督と話し合って自然に演じようと思いました。セリフの言い回しもニュアンスを自分の言葉にするなど、その都度あやみちゃんも含めて相談しました。

Q:お互いに初共演の印象は?

登坂:アイスのCM(笑)。

中条:そのまんまですね! 私はスーツのイメージがありました。

登坂:スーツで肌が黒くてマッチョ?

中条:そうです(笑)。劇中で悠輔がスーツを着るシーンがあって、そこでは少しだけいつもの登坂さんが出ていた気がします。

登坂:普段のまんまじゃない? と言われました。確かに自分でも、しっくりきました(笑)。

Q:役づくりの上で心掛けたことは?

中条:キャラクターに関して監督のイメージがしっかりあったので、そこに自分らしさを織り交ぜていきました。美雪は、純粋過ぎてちょっと変わった女の子にしようと。小さいころから体が弱くて人とあまり関われなかったから、人との接し方が上手じゃない、妄想癖のあるキャラクターでいこうと考えました。

登坂:悠輔のセリフに関しては、ニュアンスや語尾を監督と相談しました。こういう場面で悠輔は何も言わない気がするとか、美雪が畳みかけてくるセリフに一つ一つに反応せず、あるセリフにすべて込めたほうがいいかも、とか。「は?」 とか、「え?」って、毎日言っていました。あやみちゃんにも、今日もまた、「は?」って言うぞと宣言していました。

中条:どの「は?」がいい? とかありました(笑)。

印象的だった美雪と母親のシーン

Q:中条さんは登坂さんの印象を聞かれ、「中身もイケメン」とおっしゃっていましたよね?

中条:見た目はワイルドですけど、中身も頼りがいがあって男らしい方でしたよ! そして、努力するところを見せない。台本を撮影現場に持ってこないですから。歌手として、普段はどんなケアを? と尋ねても、何もしないよ! って(笑)。

登坂:いや、本当に何もしてないんだよ。

Q:お二人は10歳ほど年が離れていますが、年の差を感じたことは?

登坂:僕の精神年齢が低くて31歳らしくないのか、あやみちゃんが大人で21歳らしくないのかわかりませんけど、年の差を感じることはありませんでした。撮影は二人のシーンが多く、まして一か月近く海外ロケもありました。スタッフさんも入れて一緒に過ごしていると、やはりふとしたところで無邪気なかわいらしさを感じることがあって、世間の印象よりずっと普通の21歳の女の子だなと思いました。

Q:印象的だった演出や大変だった撮影は?

登坂:監督が美雪を撮るとき、僕は映らないカットでも呼ばれて、カメラが回る前に「手をぎゅっと握ってくれない?」と言われたことがありました。それで演技に変化があるかはわかりませんが、空気感を大事にされる監督という印象を受けました。

中条:完成した作品を観たとき、美雪とお母さんのシーンが印象的でした。あのときは撮影現場でヘアメイクを担当してくださった女性をお母さんだと思って撮影しました。そのヘアメイクさんのことが大好きだったので、悲しいシーンを撮影しているうちに泣けてしまって、撮影前から涙が枯れるくらい泣いてしまいました。

登坂:美雪とお母さんのシーンは、自分がその場にいなかったのでどんな空気感かは知らなかったですが、出来上がった作品を観て、もちろん美雪と悠輔の恋愛の話ではあるけど、ある病気を抱えた母と娘の話でもあってぐっと気持ちを持っていかれました。あのシーンがあることで、美雪に感情移入しやすくなるだろうし、母親目線でも観られると思います。

憧れの恋愛シチュエーション

(C) 2019 映画「雪の華」製作委員会

Q:美雪と悠輔の恋愛についての感想は?

中条:美雪にとっては最初で最後の恋で、そのピュアな反応を大切に演じようと思いました。突っ走っちゃうけど、時折見せる純粋さや、悠輔の不器用だけどそれに応えようとしてくれる優しさ、お互いにちぐはぐなところが最後に向かって一つになっていく。それが観ていて良かったなと思える二人になっていて、微笑ましいカップルだと思いました。でも(隣の登坂を見て)誰だってこんな人と付き合いたいと思いますよね!

登坂:いや同じ言葉を言いたい。こんな美女に言い寄られるなんて悠輔は幸せ者だ! と思います。なにも知らないまま美雪に振り回されるうちに惹かれていく、悠輔の心情の変化を演じながら、今の時代に珍しいくらいストレートな恋愛物語で、単純にいいなと思いました。

Q:悠輔はいつもメガネをしている美雪がメガネをしないで待ち合わせに現れても、最初は気づかないですよね。登坂さんは、女性の変化にすぐ気づかれますか?

登坂:髪を切ったりしたら、わりと気づくタイプです。

中条:あのシーンの悠輔も、気づいていたけど最初は言わなかっただけかなと。

登坂:何か言ってほしそうだけど、そのこと? みたいな感じの。悠輔にはそういう空気を読めない、不器用なところがあるから。

中条:でもあの反応はちょうどいいかも。気づいてくれないんだ……と落ちたあとに、え! 気づいてくれていたの!?  って!

登坂:そうなんだ(笑)。

Q:美雪は少女漫画のような恋に憧れています。中条さんが男性にやってほしい、王子的な行動ってありますか?

中条:え~! 何だろう……。

登坂:壁ドンからの顎くい?

中条:ああそれいいかも、やってもらいたいかな(笑)。

Q:美雪のように、少女漫画が好きで妄想しがちな女の子ってアリですか?

登坂:いやぁ……なかなか大変じゃないですか(笑)。

中条:気持ちに応えようにも、それをくみ取るのが難しそう!

登坂:確かに(笑)。でも美雪の純粋さが伝わるから、仕方ねぇな……となるのかも。あの無邪気さがあれば大丈夫だけど、ガチな感じだときついかも。

Q:演技することの面白さをどこに感じますか?

登坂:それを探して旅しています(笑)。ただ一生懸命に作品と向き合うだけです。お芝居では“このアングルで撮るから顔はこういう向き”なんて一度も考えたことがないけど、アーティストとしては自分の見せ方があったりする。向き合い方は真逆で、特に演技に関してはひたすら一生懸命に向き合い、やり終えた後の達成感があるくらいかもしれません。

中条:楽しいと思えるところに到達するまでが難しいです。私も達成感くらいかも。ただ、自分とは違う人格で物事を見ているので、毎回新しい発見があります。そんなふうに面白さが徐々にわかってきましたが、やっぱり難しいと思うことのほうが、まだまだ多いです。

取材・文:浅見祥子 写真:日吉永遠