文=浦木巧(ライター)/Avanti Press

「東映まんがまつり」がこの春、29年ぶりに映画館に復活する。これは、アニメ・特撮作品の新作やテレビで放送されたものを5本程度織り交ぜ、1つのプログラムとしてオムニバス形式で上映するもの。いくつかの呼称変更を経て1969年からスタートし、1990年までの春休みと夏休み(初期には冬休みも)時期に、人気キャラクターが勢揃いするオールスター性で、子どもたちをまさに“祭り”の熱気に包んできた。

『爆釣バーハンター』
(c)2019東映まんがまつり製作委員会 (c)鈴木サバ缶/小学館・爆釣団・テレビ東京

日本のアニメ・特撮作品に与えた計り知れない影響力

昨年12月に公開された『ドラゴンボール超(スーパー) ブロリー』が、日本のみならず全米初登場第4位という大ヒットを記録したが、「ドラゴンボール」シリーズの劇場版が初めて上映されたのは、実は1986年の「東映まんがまつり」。現在人気を博す「仮面ライダー」シリーズの劇場版や「スーパー戦隊シリーズ」の劇場版のルーツも、1970年代の初代「仮面ライダー」や「秘密戦隊ゴレンジャー」の「東映まんがまつり」での上映だ。

上映作がアニメ作品ばかりとなったことから、1990年に「東映アニメフェア」へと改称されたが、それも終了してから17年。「ONE PIECE」シリーズの劇場版がここからスタートしたこと、そして年2回の公開形式が劇場版「プリキュア」シリーズに受け継がれていることを考えても、その影響力は計り知れない。

そもそも東映アニメーションのロゴマークは、1969年の上映作『長靴をはいた猫』の主人公ペロ。そして1967年(前身である「東映まんがパレード」にて上映)の『太陽の王子 ホルスの大冒険』は、『かぐや姫の物語』(2013年)のあの高畑勲が初監督を務め、宮崎駿らとともに作り上げた作品だ。

『おしりたんてい』
(c)2019東映まんがまつり製作委員会 (c)トロル・ポプラ社/おしりたんてい製作委員会

子どもたちに映画を観る楽しみを教えてくれた

さて、「東映まんがまつり」と聞いて、皆さんはいったい何を思い出すだろうか。世代によって作品はまちまちだろうが、前述した「ドラゴンボール」や「ONE PIECE」、「キン肉マン」「聖闘士星矢」といった人気アニメ、または「仮面ライダー」や「宇宙刑事」シリーズのような特撮ものだろうか。

1970年代に幼年時代を過ごした筆者には、圧倒的に「マジンガーZ」シリーズと「仮面ライダー」ほか石ノ森章太郎原作の特撮ものが強烈な印象を残しているのだが、それ以上に、「映画」というものに触れた“初めての場所”としての思い出が残っている。

いつもはテレビの小さな画面で観ていたアニメや特撮のヒーローを、真っ暗闇の中、驚くくらいの大きな画面(スクリーン)、大きな音で観る。それも自分ひとりや家族とだけではなく、同じような年ごろの子どもたちと一緒に。声を合わせて主題歌を歌い、面白い場所では一緒に笑う(飽きた子どもが場内を走り回るのはお約束だったが)。当時は現在のようなシネコンなどなく、街に1つは映画館が建っていたような時代。全員プレゼントだった紙の帽子をかぶり、おやつを頬張りながら、満足感いっぱいに商店街の帰り道を歩いたのが、自分にとっての映画の原体験だ。

さすがに「洋画+字幕」作品はなかったが、実写もアニメも、長編も短編もてんこ盛り。別作品同士のクロスオーバー(『マジンガーZ対デビルマン』『グレートマジンガー対ゲッターロボ』など)も、それこそ3D映画(『飛び出す立体映画 イナズマン』など)も、東映まんがまつりで初めて体験したのではなかったか。

『うちの3姉妹』
(c)2019東映まんがまつり製作委員会 (c)松本ぷりっつ/主婦の友社

復活した「東映まんがまつり」はなにを生むのか?

「いま本当に子ども向けのアニメ映画って少ないんじゃないかな、と感じることが多くなりました。今回、1960〜80年代にかけて親しまれた『東映まんがまつり』の呼称を復活させた理由としては、本当の子ども向けの映画を、映画館という空間で子どもたちみんなで楽しんでいただきたいという気持ちからです」という言葉は、今回に復活にあたって東映アニメーションの浅間陽介プロデューサーが語ったものだが、小さな子どもたちの「映画館体験」の入口として、東映まんがまつりを機能させたい想いには全面的にエールを送りたい。

今回は、シリーズ累計500万部(2018年11月現在)を誇り、NHK Eテレでレギュラー放送もされて、幼児から小学校低学年の男女を中心に爆発的人気の『おしりたんてい』、『月刊コロコロコミック』に連載され、テレビアニメ化もされたばかりの小学生男子人気作『爆釣バーハンター』、ブログ発ベストセラーをテレビアニメ化して小学生女子に人気の『うちの3姉妹』、そして、ダンボール工作が動く不思議な味わいのアニメーション『りさいくるずー』の4本がラインナップ。

『りさいくるずー』
(c)2019東映まんがまつり製作委員会 (c)coyote

「仮面ライダー」や「プリキュア」が大好き!という子どもたちはもちろんだが、それらを観るにはまだちょっと幼いという子どもたちのために、「アンパンマン」「かいけつゾロリ」「しまじろう」シリーズとも違った選択肢があるのは嬉しいこと。テレビCMでまた「東映まんがまつり!」という元気な子どもたちの掛け声が聞こえてくる日が楽しみだ。

ちなみに劇場での復活にあわせて、DVD「復刻!東映まんがまつり」が廉価版でリリース。1970年代の作品群は、こちらで楽しむことにしよう。