昨年のトライベッカ映画祭で観客賞を受賞した注目の映画『トゥー・ダスト(原題)/ To Dust』について、ショーン・スナイダー監督と主演のルーリグ・ゲーザが、2月4日(現地時間)、ニューヨークのPMKのオフィスでインタビューに応じた。

 妻を亡くした悲しみが癒えない、敬虔(けいけん)なユダヤ教信者のシュムール(ゲザ)は、彼女の遺体がどのような過程で土に還るのかを知りたいと思うようになり、大学の生物教師アルバート(マシュー・ブロデリック)にまとわりつくようになる。腐敗についてあまり詳しくないアルバートは迷惑がるも根負けし、二人で腐敗の謎を追求する旅に出る。

 スナイダー監督、初の長編作品となる今作は、自身の母の死に影響を受けて企画されたそうだが、監督自身は改革派のユダヤ教の家庭で育ち、主人公シュムールのように敬虔な超正統派ユダヤ教(ハシディック)の信者ではないという。「きっかけになったのは、僕の母が祖母の死の際に喪に服していたのを見たことだったんだ。その5年後に母が亡くなったとき、母に敬意を表するために、ユダヤ教の儀式によって残された家族と時間を過ごすことが、いかに重要かを理解できたんだ。その儀式は奥深く、強く心に訴えてくるほど美しいもので、母への悲しみを癒やしてくれたよ」今作を手掛けたことで、さらなる精神的な浄化ができたそうだ。

 映画『サウルの息子』で世界中から注目を集めたルーリグ・ゲーザとは共通の友人を通して知り合ったそうだが、「『サウルの息子』を観ながら、ゲーザが面白いこともできるか確認していたよ。おそらくあの映画でそんなこと考えていたのは僕だけだと思うけどね(笑)」とスナイダー監督。ゲーザが英語を話せるか、敬虔なユダヤ教信者のような奥深い演技ができるか、その段階ではわからなかったが、劇中での彼にチャーリー・チャップリンのような身体を張ったコメディーの要素を感じたのだという。「周りを全て死に囲まれていても、自身の身を危険にさらしながら動き回る姿が、チャップリンの身体を張った高度なアートと重なっているように思えたんだ」そんな思わぬ共通点を見つけたことが、今作へのキャスティングの経緯だったと明かした。

 一方、ゲーザは今作のために1年前から髭(ひげ)を生やして準備したそうだ。「今作を信じていたから、脚本を読んでその準備に入ったんだ。その後は、ショーンと共同脚本家のジェイソン・ビーグと共に、約1年かけて話し合いを行ったよ。撮影が延期になったりして、時間がかかったけど、その間にショーンのビジョンをしっかり把握することができたんだ。今ではソウルメイトのような関係になったよ」

 また、共演のマシューについては「彼と共演できたのはとてもありがたいことだったね。僕個人は、それほど熱狂的な映画ファンでもないし、ハンガリーでは、同世代のアメリカ人の誰もがマシューの作品を鑑賞しているような環境にはなかったんだ。だから、正直オファーを受けるまで、彼がどんな俳優かもあまりわかっていなかったけれど、撮影に入る前には代表作をいくつか鑑賞したよ。セットでの彼は控えめで、プロフェッショナルで、面白く、なぜ有名な俳優なのか理解できたね。カメラが回ると、常に最高の演技を披露してくれるんだ。今作を通して彼から学ぶことができたよ」と感謝した。

 そのマシューは、今作でコミック・リリーフ(息抜きの笑い)を提供している。彼のキャスティングについて、スナイダー監督は「マシューのような俳優と仕事をするのは夢で、特に処女作品で彼のような俳優を起用し、制作までこぎつけられたのは完全に奇跡だったね。製作総指揮を務めた女優のエミリー・モーティマーからも、『ある映画祭の審査員をしていたときに、この映画の脚本を読んで、あなたの映画を製作したくなったの』と連絡をもらったんだ。ゲーザにふさわしいA-リストの俳優も探すことができるようになって、マシューにたどり着いたんだよ」と振り返った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)