映画界の一大イベント、アカデミー賞授賞式が行われる今月の5つ星映画は、約半世紀ぶりのミュージカル映画の続編に、本国アメリカで大ヒットを記録しているDC映画、演技派女優の競演で描かれる宮廷ドラマに村上春樹の原作を映像化した話題の韓国映画、そして稲垣吾郎主演のヒューマンドラマをピックアップ。これが2月の5つ星映画5作品だ!

『メリー・ポピンズ リターンズ』 (2月1日公開)

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オリジナルのあの俳優も!半世紀ぶりの続編に心躍る

 ディズニーの名作ミュージカル映画『メリー・ポピンズ』が半世紀を経て帰って来た。舞台は前作から20年以上たったロンドン。大人になったバンクス家の長男マイケルと、その子供たちのもとにメリー・ポピンズが再び現れる。新たにメリーを演じるエミリー・ブラントや、マイケル役のベン・ウィショーをはじめ、コリン・ファース、メリル・ストリープらキャストも豪華。メガホンを取ったのは『シカゴ』などのミュージカル映画で知られるロブ・マーシャル監督で、『ヘアスプレー』のマーク・シェイマンとスコット・ウィットマンによる9つの新曲で彩られる。前作で印象的だったアニメーションと実写の融合や、美しいロンドンの街並みは今作も健在で、より色鮮やかになった衣装など映像の進化が成せる業。『メリー・ポピンズ』のキャラクターや物語が持つ面白さは半世紀たっても色あせることを知らず、あらためてその魅力を再認識させられる。前作では子供だったバンクス家のジェーンとマイケル姉弟が成長して、それぞれの人生を歩む姿も興味深い。オリジナル版でバートとミスター・ドース・シニアの二役を務めたディック・ヴァン・ダイクが登場するのも見逃せない。(編集部・中山雄一朗)

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『バーニング 劇場版』(2月1日公開)

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村上春樹とイ・チャンドン、二人の天才の持ち味が融合

 村上春樹の小説「納屋を焼く」を映画化。バイト暮らしのジョンスと幼なじみのヘミ、裕福な青年ベンの不穏な三角関係を息詰まるようなミステリーとして魅せる。ジョンス役のユ・アインは『ベテラン』での強烈な演技とは正反対の、内面で静かに燃え盛る怒りを表現。アクションから文芸映画までこなす芝居の幅広さには驚かされる。対するスティーヴン・ユァンは、どこか浮世離れした雰囲気の持ち主。ギャツビーを彷彿させるベン役にまさにピッタリといえるだろう。この何もかも対照的なジョンスとベンの関係には、若者の失業率が高く、経済格差が叫ばれる韓国社会の縮図が透けて見える。希望の見えない未来に、なすすべを持たない若者の“閉塞感”と“怒り”。その普遍的な若者像をリアルに切り取った名匠イ・チャンドン監督は、『ポエトリー アグネスの詩(うた)』以来8年ぶりのメガホンとなるが、切れ味の鋭さは衰えることがない。その証拠に、原作からの大胆な翻案が冴えわたるラストは秀逸だ。村上春樹とイ・チャンドンという、二人の天才の持ち味が絶妙に混ざり合ったことで、単なる小説の実写化に留まらない新たな傑作が誕生した。(編集部・吉田唯)

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『アクアマン』(2月8日公開)

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超エキサイティングな海底アクションに釘付け

 “海底アクション”と聞いただけでは想像もつかないが、のっけから映画の世界に引き込まれる映像マジックが満載。カーチェイスならぬ魚チェイスから、海底で繰り広げられる決闘、ゴジラのような海洋生物の登場、さらにトレジャーハント(!?)まで、次々に冒険心を駆り立たてられる。また海底王国アトランティスの幻想的なビジュアルや、映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』のジェームズ・ワン監督のセンスが光る巧みなカメラワークなど、映画としての見応えはたっぷり。テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のドロゴ役でブレイクしたジェイソン・モモアのハマりっぷりがよく、アクアマンというニューヒーローに魅了される。さらにニコール・キッドマン、ウィレム・デフォー、ドルフ・ラングレンといった脇を固めるベテランキャストが、通り一遍のアクション映画ではなく、深みのある人間ドラマにグレードアップさせている。(編集部:山本優実)

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『半世界』(2月15日公開)

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静かにシンプルに激しく明るく人生が交差する“おっさんずラブ”!?

 とある地方都市を舞台に人生半ばに差しかかった39歳の男たちが、過去・現在・未来を思い、人生を見つめ直していく物語。いつからか別々の方向に進んでいた中学の同級生3人の人生が再び交差する瞬間を切り取っている……と書けば、暗くて重~い話ととらえられそうだが実はそうではない。たしかに深いテーマを扱っており考えさせられる内容だが、そこには笑いと明るさとポップがちりばめられている。なにかと「おっさん」が注目される昨今、この映画には「阪本順治流おっさんずラブ(友情編)」というキャッチフレーズをつけたい。炭焼き職人の主人公・紘(こう)役の稲垣吾郎、久しぶりに帰郷する元自衛官・瑛介役の長谷川博己、もう一人の同級生・光彦役の渋川清彦が起こす化学反応は見事。特に、ヒゲを生やして山の中で炭を焼きながら生計を立て、反抗期の息子がいるというこれまでのイメージとはかけ離れた役どころで、稲垣は新境地を開いている。オリジナル脚本を書き下ろし、この役を稲垣にぶつけた阪本監督の手腕は見事としか言いようがない。(編集部・海江田宗)

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『女王陛下のお気に入り』(2月15日公開)

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近年稀に見る贅沢なアンサンブルに、最後の一秒までハラハラ

 18世紀初頭、フランスと交戦中のイングランドに君臨していたアン女王と、その寵愛を巡る2人の女のバトルを描く本作は、格調高くもドロドロの昼ドラのような親しみやすさもある。男性は完全に蚊帳の外といった感の“禁断の女の園”の世界観が、恐ろしくも痛快だ。女王を意のままに操り、宮廷で絶大な権力を誇っていた幼なじみの女官長レディ・サラと、上流階級から没落した屈辱を晴らすべく野心を燃やす侍女アビゲイルは、いずれもしたたかでタフ。己の思惑を貫くために日々策略を巡らせ、その闘いが戦争推進派と終結派の政党争いにまで波紋を呼んでいくジェットコースター的展開は、終始緊張感が途切れない。オリヴィア・コールマン演じる17人の子供に先立たれ心身共に虚弱なアン女王。レイチェル・ワイズ演じる女王と“特別”な関係で結ばれてきたサラ。エマ・ストーン演じるすさまじい変貌を遂げるアビゲイル。いずれも迫真の演技で火花を散らし、最後の一秒までハラハラさせられる。(編集部・石井百合子)

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シネマトゥデイ編集部