女優の池田エライザを主演に迎えた、世界的人気ホラーシリーズの最新作『貞子』が5月24日より公開される。『貞子』の原点であり、ジャパニーズホラーブームの先駆けとなった『リング』(1998年)公開から約20年の時が流れたが、その間に多くの続編・関連作品が作られてきた。

貞子も時代の変化にともない、技術の進歩や流行に適合していった。そこで今回は、貞子がどのような進化を遂げていったかを振り返ってみよう。

人々の記憶に鮮烈すぎる恐怖を残した『リング』の貞子

見た者は1週間後に呪い殺されるという「呪いのビデオ」の恐怖を描いた鈴木光司氏のホラー小説を映画化した、記念すべきシリーズの1作目『リング』。「呪いのビデオ」に登場する長い前髪と白い服がトレードマークの怨霊“山村貞子”が、テレビの中から這い出す衝撃的な映像は、当時の観客の度肝を抜き社会現象にまで発展した。

第1作『リング』からシリーズ映画作品は現在まで、『リング』と同時上映された『らせん』(1998年)、『リング2』(1999年)、『リング0 バースデイ』(2000年)、『貞子3D』(2012年)、『貞子3D2』(2013年)と作られてきた。2016年には、『呪怨』シリーズに登場する人気キャラクター“佐伯伽椰子”と貞子が夢の共演を果たしたクロスオーバー作品『貞子 vs 伽椰子』も公開された。

『リング』の貞子の設定に比較的忠実な作品もあれば、中には設定が様変わりした作品もある。しかし新しい作品が出るごとに、貞子は多様な進化を見せて我々を驚かせてきた。

なりふり構わず!? あらゆる手段を駆使して襲いかかる貞子

貞子の変遷を振り返る上で、特に言及しておきたい作品は『貞子3D』だ。

動画サイト「ニコニコ動画」にアップされた「呪いの動画」を発端に貞子の呪いが広がっていく物語で、パソコンやスマホなどを通じて貞子が出現する。動画を見た者は、トラックに突っ込んだり窓から飛び降りたりと、貞子の力で強制的に死を選ばされてしまう……。

『リング』時代は、貞子の被害はビデオテープを手に入れて見た者だけ、とかなり限定的なものだった。しかし「呪いの動画」はインターネット環境のある者なら世界中誰が探して見つけてしまってもおかしくない存在であるため、危険度が桁違いに。

何よりも恐ろしいのは、「呪いの動画」は“見た直後”に貞子(本作で貞子を演じたのは橋本愛)が襲ってくるということ。『リング』にあった“1週間の猶予”はきれいになくなってしまった。しかし一方で、直後の襲撃(?)をやり過ごしさえすれば殺されずに済むような描写も。活躍の場をネットに移したことで貞子も多忙な身となったのか、一人ひとりじわじわ追い詰めることはしなくなってしまったようだ。

また今作での貞子は、特別な力を持つ主人公・茜(石原さとみ)の肉体を手に入れて復活を遂げようとしていたため、茜だけは執拗に追っていく。映画中盤では、古本屋の大量のスクリーンから同時に姿を見せて一斉に手を伸ばしてきたり、宣伝トラックのスクリーンから巨大なサイズで飛び出し、茜の恋人・孝則(瀬戸康史)を髪の毛で捕まえて連れ去ったりなど、存在感を激しくアピールして暴れ回る。

特に注目すべき点は、連れ去った孝則を生かしておき、茜をおびき寄せて脅すために利用するなどかなりの頭脳派な一面も見せていたこと。『リング』では定刻になると粛々とテレビ画面から這い出てきてひと睨みで相手を殺すだけだった貞子は、あの手この手で目的の達成を目指す非常にアクティブな怨霊になったのだった。

戦闘面も強化された!? アクション怨霊と化した貞子

「呪いのビデオ」が“トイレの花子さん”や“口裂け女”と同様の都市伝説として存在する『貞子 vs 伽椰子』の話もしておきたい。

こちらの貞子は『リング』と同じくビデオテープの中にいるのだが、まず『リング』から進化した点は、「呪いのビデオ」を見た者が死亡するまでの時間が1週間から2日間(48時間)へと大幅に短縮されてしまっていることだ。

また、貞子が呪い殺す前に自ら命を絶とうとすると、残り時間関係なく「絶対に私が殺す!」とばかりに現れて殺しにかかり、呪いを解こうとした霊能力者たちも問答無用で命を奪う。『貞子 vs 伽椰子』の貞子は『リング』に比べて殺意がアップしている気がする。

本作のメインである伽倻子との戦いでは、まずは伽倻子の息子・俊雄を、髪を使って軽やかに撃退。そして瞬発力のある伽倻子を髪で拘束したり、睨みつけて爆発四散させたりと、戦闘面でもかなりの進化が見られたのだった。

海外にも進出した貞子。飛行機の“あんなところ”にまで出現…

『リング』シリーズの人気は国内だけにとどまらず、海外にも波及。アメリカや韓国でリメイク版が製作されたが、中でも衝撃的な演出があったのはアメリカ版シリーズ3作目に当たる『ザ・リング/リバース』(2017年)か。

貞子のリメイクキャラである“サマラ”が、呪いにかかった男を追って、なんと飛行機のコックピットのモニターから姿を現す。「空の上まで追ってくるのか!?」と強烈なインパクトを与えつつ、最終的に飛行機を墜落させるというアメリカらしいスケールの大きさで力を見せつけた。

最新作『貞子』では、貞子が本格的なYouTubeデビューを果たし、「見たら呪われる」ならぬ「撮ったら呪われる」怨霊として人々を恐怖に陥れるようだ。

「日本で最も有名な怨霊」と言っても過言ではないほど幅広い世代から圧倒的な認知度を誇り、時代と寄り添いながらビデオテープからYouTubeへと進化を遂げてきた貞子の快進撃は、これからも続くに違いない。

(文/猪口貴裕)