今月の5つ星映画は、大人気漫画を実写化した注目の邦画超大作やDCが放つ王道アメコミヒーロー映画、名作ホラーシリーズ第1作の40年後を描いた話題の続編に、キャストの変貌ぶりが強烈なアカデミー賞ノミネート作、そして日本アニメ界の名手・原恵一監督最新作をピックアップ。これが4月の5つ星映画5作品だ!

『バイス』 (4月5日公開)

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凡庸な悪を通して描かれる、アメリカの“悲劇”

 ジョージ・W・ブッシュ政権下で副大統領を務めたディック・チェイニーの半生を追う。1960年代半ばから同時多発テロ事件に至り、イラク戦争へと突入していくアメリカの“悲劇”が戯画的に描かれる。チェイニーが着実に権力を手にする過程は末恐ろしくも爽快なほど。ここで暴かれるのは、政治的信条やイデオロギーを持った人間でないチェイニー。彼はあくまで民主主義に反することなく権力を手にしていく。劇中でもシニカルに自己言及されるように、いささかリベラルに寄った視点に鼻白む部分もあるが「どの時代にでも存在しえる普遍的な悪人政治家」という存在を浮き彫りするところが面白い。アダム・マッケイ監督らしい遊び心をはじめ、あまりにブッシュにそっくりなサム・ロックウェル、チェイニー役のクリスチャン・ベイルの豹変ぶりといった役づくりに至るまで、上質なブラックコメディーとして楽しむことができる一作だ。(編集部・大内啓輔)

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『ハロウィン』(4月12日公開)

(C) 2018 UNIVERSAL STUDIOS

殺人鬼ブギーマンによる恐怖の夜が再び!

 殺人鬼ブギーマンことマイケル・マイヤーズが、ハロウィンの夜を再び恐怖に陥れる! ホラー映画の傑作『ハロウィン』の正当な続編となる本作では、40年間精神科病棟で一言も発することのなかったマイケルがハロウィンの前夜に起こった事故で脱走。ためらいもなく人を殺すマスク姿のマイケルの不気味さは健在で、おなじみのテーマ曲は不気味さを強調させ、マスク越しのマイケルの独特な息づかいやカメラワークなど随所にオリジナル版へのリスペクトが感じられる。さらに、前作でマイケルの魔の手から生き残ったローリーを“スクリームクイーン”ことジェイミー・リー・カーティスが続投することで“ブギーマン”の存在に説得力を帯びさせる。ローリーは、マイケルが再び襲ってくること想定して、娘のカレンに幼いころから銃の撃ち方や戦い方を教えるトンデモナイ母親(!)に。娘や娘の夫から変人扱いされても、マイケルに固執し続け、自分が殺すしかないと考えるローリーの姿はどこか痛々しく切ない。ラストでマイケルとローリーが対峙するシーンは、40年間溜まったローリーの思いが爆発しており、カタルシスさえ感じられる。(編集部・梅山富美子)

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『キングダム』(4月19日公開)

(C) 原泰久/集英社 (C) 2019映画「キングダム」製作委員会

日本映画の本気!この春ぴったりの歴史スペクタクル

 映画化不可能と言われた原泰久の大人気漫画「キングダム」を、『アイアムアヒーロー』の佐藤信介監督が実写化。長期にわたる中国ロケを遂行し、春秋戦国時代の王宮を再建した壮大なセットや、圧巻の馬群のシーンなど、日本では実現しえない画を映し出すことに成功した。原作者の原自身が脚本に参加し、映画オリジナルのセリフを加えるなど、原作ファンにとってもアツい内容に。主人公・信の身軽で鋭い殺陣を披露した山崎賢人をはじめ、若き王・エイ政のみなぎるオーラを表現した吉沢亮、最強の山の王・楊端和をセクシーに演じた長澤まさみ、体を倍にするほどの肉体改造をして大将軍・王騎に成りきった大沢たかおなど、どのキャラクターも絶妙で、忠実に原作を再現している。またキャストが口々に「監督や美術スタッフが鎧などの衣装にこだわり抜いていた」と明かすほど、ディテールにまで凝った衣装が素晴らしく、とくに『ブレードランナー 2049』『パシフィック・リム:アップライジング』などのコンセプトアートを手掛けた田島光二氏による山の民の造形は、これまでの日本映画の枠を超えたクオリティーの高い説得力のある仕上がりに。日本映画の本気を感じる超大作だ。(編集部・山本優実)

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『シャザム!』(4月19日公開)

(C) 2019 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.

小ネタ満載!だけど王道なヒーロー誕生物語

 「見た目はオトナ・中身はコドモ」のヒーローに変身する力を手に入れた少年の活躍を描く、コメディー仕立てのアメコミ映画。ある日突然、超人的なパワーを手に入れてはしゃぎまくる少年のゴキゲンな姿と、大人への憧れをネタにした「あるある」ギャグの連続で全く飽きさせない構成は見事。『グーニーズ』『グレムリン』といった往年のクリス・コロンバス映画のような絶妙な“怖さ”も映画ファンの心をくすぐる。バットマンやスーパーマンを引き合いに、「目からビームが出る」「豪華な根城を持っている」といったスーパーヒーローのお約束を茶化したネタも満載しながら、同時に本当のヒーローになることの意味を問いかけるヒーロー誕生譚(たん)でもある。また、身寄りのない子供たちを中心に据えた点も秀逸。『万引き家族』にも通じる「本当の家族の絆」について真摯(しんし)に問いかける、芯の通ったメッセージ性も内包した作品になった。『ワンダーウーマン』『アクアマン』と着実にファンを増やしステップアップしてきたDC映画が、ダーク路線からの完全脱却を遂げた作品としても重要な一本といえるだろう。(編集部・入倉功一)

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『バースデー・ワンダーランド』(4月26日公開)

(C) 柏葉幸子・講談社/2019「バースデー・ワンダーランド」製作委員会

鮮やかな世界に胸がときめく!

 引っ込み思案で自分に自信を持てない少女が、冒険を通して成長していく物語。誕生日前日に異世界へ通じる扉が開き、少女アカネの予想外の大冒険が始まる。柏葉幸子の小説を「クレヨンしんちゃん」などで知られる日本アニメ界の名手・原恵一監督が映画化した。特筆すべきは、胸がときめくような色彩の鮮やかさ。花や葉の緑、輝く日差しと風の動き、自然をこんなに鮮やかに表現するのはまるで、心象風景を具現化したかのようで、どこか懐かしさがにじむ。心の感度を最大限まで上げれば、世界はこんな風に見えるのかもしれない。そんなビジュアルと、心にそっと寄り添うストーリーとが絶妙に重なり合っていく。物語の大きなメッセージはいたってシンプルな一方で、随所に小技が効いていて、例えば“内気な”主人公だけでなく、“怖いもの知らずの”叔母さんも共に冒険に出るのは物語としてのバランスがちょうどよく、コメディー要素もある。主人公の声優は女優の松岡茉優。観客を構えさせない素朴さで物語へ引き込みながら、キーパーソンには藤原啓治、矢島晶子というベテラン声優が声をあて、作品世界をぐっと引き締めている。(編集部・小山美咲)

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シネマトゥデイ編集部