2008年に公開された『アイアンマン』から始まったマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)構想により、約11年にわたり数々の大成功を収めてきたマーベル映画は、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(現在公開中)で一つの到達点を迎えた。

今でこそマーベル映画は誰もが心待ちにする作品に成長したが、かつてはDCコミックスを実写化した『スーパーマン』や『バットマン』などに比べてうまく料理されておらず、長らく冬の時代が続いていた。

しかし、MCUの快進撃が始まる10年前、マーベル映画の風向きを大きく変える作品が誕生した。それが、スタイリッシュな映像とケレン味たっぷりのアクション演出で世界中の映画ファンを唸らせたヴァンパイアホラーアクション『ブレイド』(1998年)だ。

MCU成功へと繋がるマーベル映画の救世主、『ブレイド』シリーズを振り返ってみたい。

人間と吸血鬼のハイブリッドハンターが誕生!

1973年に原作コミックへ初登場したキャラクター、ブレイドが実写映画『ブレイド』となって公開されたのは1998年。当時は本作がマーベル・コミック発の映画であることはあまり知られていなかった。しかし、スタイリッシュな映像とケレン味たっぷりのアクション演出が世界中の映画ファンを唸らせ、4,500万ドル(※)の製作費に対し、全世界で1.3億ドル(※)を稼ぐ大ヒットを記録する。

人間と吸血鬼のハイブリッドである最強のヴァンパイアハンター、ブレイドを演じたのは、『デモリションマン』(1993年)などで知られる肉体派黒人俳優のウェズリー・スナイプス。様々な武道に精通する彼の華麗な身のこなしはもちろん、CGに頼らないキレキレのアクションが大きな話題を呼んだ。

ヒットしたことで本作はシリーズ化。この成功が後のマーベル・コミック実写映画化の風向きを変えたと言っても過言ではないだろう。

誰も観たことのないホラーアクション『ブレイド』

『ブレイド』で監督を務めたのは、当時新鋭だった特殊効果マン出身のスティーヴン・ノリントン。誰も観たことがないような斬新な映像を作り出し、観客を圧倒した。

精肉工場の奥深くで、真夜中に人知れず行われるヴァンパイアたちのクラブパーティー。血のシャワーを浴びながら爆音で踊りまくる彼らを、黒のロングコートに身を包んだ完全武装のブレイドが、銃、銀の杭、刀を駆使して片っ端から狩りまくる。

大体の人は、このオープニングのアクションシーンでやられてしまうだろう。圧倒的に強いブレイドの立ち回りも必見だが、彼に狩られたヴァンパイアたちが命を落とすシーンも大きな見どころで、CGを効果的に使い、絶命と同時に一瞬で灰と化す姿は、当時目の肥えた映画ファンの目にも新鮮に映った。

さらに、終盤で描かれるブレイドVS宿敵フロストの高速チャンバラは、『スター・ウォーズ』のライトセイバーバトルにも引けをとらないカッコよさ。ちなみに、フロストを演じたスティーブン・ドーフは、本作と同時期に公開された『タイタニック』(1997年)の主演をオファーされていたが、それを断って本作に出演している。

コミック度が増してパワーアップした『ブレイド2』

1作目のヒットを受け、4年後に公開された2作目『ブレイド2』(2002年)。監督には、後に『パシフィック・リム』(2013年)や『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017年)で世界的に評価されるギレルモ・デル・トロが抜擢された。

デル・トロは、前作の世界観を踏襲しながら映画を大胆に拡張させ、ヴァンパイア帝国や、対ブレイド用ヴァンパイア精鋭部隊の「ブラッドパック」、新種のヴァンパイアの「リーパーズ」といった要素を盛り込み、前作よりもコミック的な空気感をアップさせている。また、香港のアクションスター、ドニー・イェンがアクション監督を兼任しており、より魅せるアクションへと磨きがかかったのも特徴だ。

さらに、前作では観られなかった、“人間にはできないアクロバティックなアクション演出”も見どころで、アクションシーンで実写の人間とCGモデルが入れ替わるという演出技術が、翌年に公開された『マトリックス リローデッド』(2003年)よりも早く行われているのにも注目してほしい。

“ドラキュラ”と対決する最終作『ブレイド3』

“現状の完結編”『ブレイド3』(2004年)では、ついに元祖ヴァンパイアのドラキュラとが激突した。これまでと同様、スタイリッシュなアクションはもちろん健在で、今作ではブレイドと共に戦うハンター集団「ナイト・ウォーカー」が合流する。

余談だが、ナイト・ウォーカーの腕利きの戦士として登場するハンニバル・キング役は、後に自身の超当たり役となるマーベルの人気キャラ、デッドプールを演じるライアン・レイノルズ。本作でもデップーに通じる軽口を連発するコメディリリーフ的なポジションの役柄を演じているので見逃せない。

監督を務めたのは、過去2作で脚本を担当したデヴィッド・S・ゴイヤー。クリストファー・ノーラン監督作『ダークナイト』シリーズの脚本家として有名だが、監督としての手腕もなかなかのもの。ブレイドとドラキュラの新旧ヴァンパイア対決というある種の“お祭り”を、スタイリッシュかつダークに演出している。

今後、ブレイドのMCU合流はあるのか!?

3本の実写映画と、続編のTVドラマ(ブレイド役がスナイプスから変更され、シーズン1で打ち切り)、番外編的な位置づけのアニメーション作品(他に単発のゲスト出演も少々)があるが、これ以降『ブレイド』の映像化は止まっている。

しかし、2013年に映像化権をマーベル・スタジオがニュー・ライン・シネマから再取得し、再び映像化される可能性が高まっている。昨年には、スナイプスがマーベル・スタジオと今後の展開について話し合ったことを明かしており、マーベル・スタジオの社長ケヴィン・ファイギも、将来的にブレイドを蘇らせる意思を見せているという。

コミックでは、ブレイドもアベンジャーズに参加していた経緯があるので、『アベンジャーズ/エンドゲーム』以降、再編成されるチームへの合流も大いにありえるだろう(順番的にはX−MENが先になりそうだが)。その日が来た時のためにも、未見の方は是非ともマーベル映画の流れを変えたこの歴史的なシリーズを1度手に取っていただきたい!

※…box office mojo調べ

文=梅崎慎也/SS-Innovation.LLC