TAKAHIRO主演の映画『僕に、会いたかった』のメガホンをとった錦織良成(にしこおりよしなり)監督。「作品をつくるときに大切なのは、監督である僕自身が感じたり感動したことを伝えること」と語る彼が、これまでも幾度ともなく地元・島根を舞台にしてきた理由とは? 映画に込められた地方への思いや隠岐諸島の魅力、TAKAHIROの意外な素顔などを教えてもらいました。

理屈でなく感じたことを表現するTAKAHIROの表情の変化に注目

――映画『僕に、会いたかった』は、島根県隠岐島で暮らす人々の心の機微や絆、優しさが描かれていましたね。

監督になってからずっと変わらないのですが、なんでもない人たちの生活の、ちょっとした一歩や気づき、そういう中にある温かみや大切にしなければならないものを描きたいという気持ちがあります。それは今回も変わらないのですが、実は声高に叫ぶのは少し恥ずかしくて……(笑)。音楽や絵画、絵本などは、メッセージをハッキリ提示しなくても受け取り手が想像し、感じ取ってくれますが、僕は映画も同じだと思っています。この作品を見て、それぞれが何か大切なものを感じてもらいたいです。

――記憶喪失という難しい役を演じたTAKAHIROさんの演技は、監督の目にどのように映りました?

素晴らしかったですね。表情がバツグンにいいんですよ。秘密が分かったときやエンディングのあの何とも言えない表情はそう簡単には出せません。TAKAHIROくん自身、ものすごく気持ちが豊かなため、リハーサルから泣きっぱなしだったんですよ。でも今回はあまり泣いてもらいたくなかったので、リハーサルで思いっ切り泣いてもらって、本番では涙を枯らしてもらいました。現場で“泣き待ち”というのはよく聞きますが、まさかの“泣きやみ待ち”(笑)。それだけ感受性が強いんだと思いますね。

――TAKAHIROさんが演じた徹の母親役を演じた松坂慶子さんの演技も素晴らしかったです。

台本を書いていたときから、松坂さんをイメージしていました。あの包み込むような優しさは松坂さんならでは。ちなみに松坂さんとTAKAHIROくん、役になりきるという共通点がありましたね。理屈ではないんですよ。感じたことを表現しているというか……。物語の本質や人々の心の機微、島の空気などを感じたことが役になって出てきている。とくにわかりやすいのが、後半のTAKAHIROくんの表情。どんどん顔が変わっていくので注目してください。
© 2019「僕に、会いたかった」製作委員会

取材日:2019年4月12日 ライター:玉置晴子