人を思いやることの美しさに気付ける映画

小野寺姉弟の幸せの行方を描く『小野寺の弟・小野寺の姉』では、姉のより子役に片桐はいり、彼女が淡い恋心を寄せる浅野役に及川光博という個性派俳優をキャスティング。二人が共演作について語り合う。

取材・文:須永貴子 写真:金井尭子 小野寺

■初共演作かと思いきや・・・・・・!

Q:片桐さんは舞台版に引き続き同じ役での出演ですね。

片桐はいり(以下、片桐):そうなんです。西田(征史)さんとは、5~6年前に「ママさんバレーでつかまえて」というドラマでご一緒して、そこに向井(理)くんもいて。そのときに「いつか姉弟の映画を作りたいから、そのときはお願いします」と言われていたんです。舞台で姉弟の関係をじっくり作ってから映画の撮影という順番なので、めちゃくちゃぜいたくだなと思います。

及川光博(以下、及川):映画から参加した僕から見ても、チームとして非常にまとまりのある状態でクランクインしたと思います。僕が演じる浅野というキャラクターは、はいりさんが演じるより子との絡みが全てなので、はいりさんとお芝居できることが楽しみでしたし、学べることがたくさんあるぞ、と思いましたね。

Q:お二人は初共演ですか?

片桐:わたしたち、かつて『CUTIE HONEY キューティーハニー』で、パンサークローの仲間だったんです。

Q:そうでした・・・・・・!!

及川:悪の組織の四天王。僕が一番強いブラック・クロー。

片桐:わたしは割とすぐに倒されてしまうゴールド・クロー。

及川:パンサークローからの、浅野とより子。このものすごい振り幅が、面白いなあと思います(笑)。

小野寺

■「役柄と役者の人柄」の関係性

Q:男と女という関係でお芝居をした感想は?

及川:優れた脚本があって、監督の指示があっても、演じる人間の心の機微が出てしまうのかなと思いました。より子を通して、はいりさん自身が見え隠れするところに色気を感じました。

片桐:うれしいです(笑)。及川さんは、いつもと全然違う役柄でしたよね。もしかしたら、素の及川さんはこんな方だったりして! という雰囲気が出ていて面白かったです。結構難しい役ですよね。悪気がなくて残酷、でも憎めない。

及川:確かに、着地が難しいなと思いました。いつもはもうちょっと冷たかったり、エリートの役をいただくことが多いんですが、今回は監督から「普通の男です」と言われる役でした。「普通」を演じることの難しさを改めて感じましたね。

片桐:しゃべり方、言いよどむところ、間の取り方。すごく細かく計算してやっていらっしゃるんだろうなと思いました。

及川:何も考えずにスッとできたら一人前なんでしょうけど・・・・・・。会話劇ですから間は大切だなと思いました。

Q:及川さんから見た、より子の魅力は?

及川:思いやりがあるところだと思います。それなりの年齢を重ねた人で、傷ついたことがない人っていないと思うんです。より子さんはおそらく、人を傷つけるくらいなら自分が傷つくことを選ぶ人。そこがなんともいとおしいし、映画を観て、グッと泣けてしまいました。

片桐:一人でスノードームを見ているとき、「こういうこと、わたしも100回くらいあったかも」って思いながらお芝居をしていたら、本当に悲しくなりました・・・・・・(笑)。

及川:過去に!? ちょっと重い話になりそうですね・・・・・・(笑)。

小野寺

■あらゆる人を弟にして生きてきた

Q:片桐さんは実際に弟さんがいらっしゃいますよね。姉としての実体験は、演技をする際に役立つものですか?

片桐:基本的に「弟好き」なんです。実の弟と昔はそんなに仲良くなかったので、理想の弟を外に見つけたくて、あらゆる人を弟にして生きてきたんです。

及川:それ、見出しに使えますよ(笑)。

片桐:なので、向井くんが演じる進に関しては「理想の弟、発見!」という感じです。いい弟でした。向井くんもよく考えたら、理系なところとか、実の弟と割と似ていて。だから、あんまり姉弟感みたいなものについては考えていなかったですね。

及川:自然に姉弟感が生まれたんですね。

片桐:及川さん、ごきょうだいは?

及川:2歳下の妹がいます。この映画を観て、きょうだいって不思議な存在だなと思いました。性別が違って、家族愛があって、一緒に暮らしていて、距離感があいまいで、でも絆は深い。

片桐:すごく仲が良いきょうだいもいれば、そうでもない人もいて。この二人(小野寺姉弟)は仲が良すぎますけど、疎遠な方がリアルなんでしょうね。

及川:この映画をきょうだいで観たら、愛情を確認し合ったり、気まずくなったりしそうですね。ちなみに僕は、妹とデートしてみたいなと思いました。

片桐:えー! 本当ですか?

及川:2人きりで外食をしたことがないから、してみたくなりました。

片桐:きょうだいがいない人も、この映画を観て、大事な人に電話したくなってくれたらいいなと思いますね。

及川:優しい気持ちになれる作品ですよね。誰かが誰かを思っている。その連鎖が社会である・・・・・・なんて難しい話はさておき(笑)。小野寺姉弟を通して、人を思いやることの美しさにあらためて気付かされる映画だと思います。