『悼む人』高良健吾&石田ゆり子 インタビュー

コラム

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二人で旅をして、不思議な感覚を味わった

『悼む人』高良健吾&石田ゆり子 インタビュー

天童荒太の直木賞受賞作を堤幸彦監督が映画化した本作で、不慮の死を遂げた人々を「悼む」ために全国を放浪する坂築静人を演じた高良健吾と、夫殺しの過去を持つ奈義倖世を演じた石田ゆり子が撮影時を振り返った。

取材・文: 斉藤由紀子 写真: 高野広美

映画『悼む人』は2月14日より全国公開

主人公は聖人? 偽善者? それとも・・・・?

Q:殺された17歳の少年を悼みに訪れた静人が、犯人への恨みを訴える少年の両親に、「僕は犯人より息子さんのことを覚えておきたい」と実直に語る場面が印象的でした。

高良健吾(以下、高良):静人の悼みのスタンスを話すシーンなので、あそこはすごく大切にしていたんです。ここがちゃんとできなかったら、静人の行為が誤解されかねないし、意味がわからないと思われるかもしれない。亡くなった少年のことをご両親にどう伝えたらいいのか、静人の誠実さをどうすれば表現できるのか、ずっと考えていました。だから、僕はあの時が一番緊張していたんです。

石田ゆり子(以下、石田):静人の旅に同行していた倖世も、あの場面で彼の悼むという行為を理解するんです。それまではいぶかしく思っているんですけど、あれを機に変化していくんですよね。

Q:悼むという行為を、どう受け止めましたか?

石田:わたしは、悼むということを日頃意識したことがなかったんです。ただ、道路に添えられているお花を見たり、「安らかにお眠りください」といった立札を目にするたびに、ここで何かがあったんだなって心がざわつきながらも、そのまま日常に戻っていくことに何かモヤモヤしていたものがあって・・・・。でも、この作品に触れて霧が晴れたような気がしました。静人のような人が、実際にもいるかもしれないって思いたいです。

高良:僕も、今は静人の行為が腑(ふ)に落ちた感じがしています。でも、演じる僕が明確に答えを出してしまうのも違うような気がしているんです。

『悼む人』高良健吾&石田ゆり子 インタビュー

悼むポーズは意外と腹筋を使う!

Q:地面に左膝をつき、空に伸ばした右手と地面に下ろした左手を心臓の上で重ねる悼みのポーズが、とても優雅で見入ってしまいました。いろいろ研究されたのでは?

 

高良:なじんだらいいなと思って何度もやりました。向井(理)さんの舞台(堤監督が演出した本作の舞台版)もキレイだったので、そこから学んだやり方です。

石田:本当にキレイだった。わたしも一度だけ悼む場面があって、高良くんにその場で教えてもらってやりました。あれ、なかなか難しいんですよ。体の真ん中からぶれちゃいけないから、腹筋を使うんですよね。

高良:そう! 確かにバランスをとらなければいけないので、腹筋は使いますね。背負っているリュックがリアルに重かったこともあって、かなり腹筋にきました。本当に荷物を入れてもらわないと芝居ができなかったんです。

Q:初めての堤組はいかがでしたか?

高良:堤組の独特な雰囲気はすごく好きでした。監督は段取り(リハーサル)まで現場にいてくださって、本番を撮っている時はブースでモニターと向き合っていらっしゃるんです。撮りながら編集をされていて、次の日にはもう編集した映像を見せてもらえるんですよ。

石田:そう、作業がすごく早いんです。作品の世界観をその場でつかませてくださる、とてもいいチームでした。

Q:堤監督の作品は、背景や小道具にも意味を感じることが多いように思うのですが、本作で何か気付いた点はありましたか?

高良:今回の『悼む人』は、映像自体が感情を持っていると思います。背景や美術にこだわることもすごく大切で、そこから人物が見えることもたくさんあります。その部屋に置いてあるものにも感情があるように、監督が心を配っていらっしゃったのだと思います。

『悼む人』高良健吾&石田ゆり子 インタビュー

はかないようで強い、不思議な空気感の作品

Q:福島、山形、新潟など、静人と倖世が旅をするシーンを各地で撮影されたそうですが、思い出に残っている場所はありますか?

高良:僕は、福島の会津若松かな。

石田:そうだね。会津では午前2時くらいに起きて朝日を撮ったんですけど、それがとってもキレイで。朝日に向かって黙々と歩くなんて、なかなかない機会なので、すごく印象に残っています。

高良:夕日に向かって黙々と歩いたこともありましたけど、それもなかなかない経験ですよね(笑)。

石田:静人と倖世はひたすら黙って歩くからね(笑)。でも、それが良かったんです。ただ黙って高良くんと歩くのが、すごく幸せな気分だったんですよ。

高良:僕もそうです。

石田:無理やり言わないでね(笑)。

高良:いや、無理やりではないです。僕が一人で取材を受けたときも、そう言っています。

石田:ホント? ありがとう。

Q:お二人で貴重な体験をされたんですね。

高良:ただ、ゆり子さんが演じる倖世と僕の静人は、本当に旅をしたのかな? という気持ちもあるんです。ロードムービーを撮る時は、みんなと旅をした実感が残るんですけど、今回は一緒に過ごしたはずなのに、どこかはかないというか・・・・なんだか不思議な感覚があるんですよね。

石田:そう、全体的に不思議な空気感なんです。はかないようなすごく強いような、本当に不思議な映画だと思います。ぜひ、先入観を持たずに観てほしいですね。今まで考えたことがなかったことを、考えるきっかけになるかもしれません。


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記事制作 : シネマトゥデイ