女優として、初めての経験に挑んだ作品

高校時代とは立場が逆転してしまった2人の女性の複雑な因縁を、過去と現在の時間軸を巧みに織り交ぜながらミステリアスに描く映画『太陽の坐る場所』。学園の女王から転落したヒロインを演じる水川あさみが、苦労の連続だった撮影秘話を語った。

 取材・文:なかざわひでゆき 写真:上野裕二

映画『太陽の坐る場所』は10月4日より有楽町スバル座ほかにて公開(9月27日より山梨で先行公開)

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成長できないヒロインを全く理解できず・・・!?

Q:高校時代はクラスの女王様、現在はローカル放送局の女子アナというヒロインの高間響子を演じられましたが、彼女をどのような女性だと分析・解釈しましたか?

基本的に、彼女は高校時代の自分というものにとらわれて生きている人なんです。普通は成長していくに従って、例えば就職をすれば、その先でさまざまな人と出会って、物事に対する考え方や人生観、恋愛観など変わっていきますよね。でも、彼女は28歳になった今も高校を卒業した10年前と変わっていない。1ミリも成長していないんです。それがわたしには全く理解できなくて、最初は役づくりに苦しみました。

Q:ご自身と重ね合わせられる部分がなかったんですね。 

はい。なので、素直に矢崎(仁司)監督に相談したんです。すると、役柄を理解できずにもがいているわたし自身の姿が、そのまま満たされない日々を送っている響子としてスクリーンに映し出されればいいので、わからないままでいいですよと。もともと、監督はお芝居の余計な部分を徹底的にそぎ落として、最後に残った部分だけを撮りたいという方なんです。役づくりとは肉付けをする作業だと思っていたわたしにとって、全く逆の作業をするのは初めての経験でしたし、少し戸惑いましたね。 

Q:この作品では水川さん演じる響子と、木村文乃さんが演じる高校時代のクラスメート今日子の愛憎入り交じった友情が物語の軸になっています。2人のキョウコの複雑な関係をどのようにとらえましたか?

いわゆるライバルであり、でもすごく身近な存在でもある。過去にとらわれているのはわたしが演じる響子の方であって、もう一方の今日子はとてもニュートラル。だからこそ、響子にとっては絶対になくてはならない存在であり、ある意味で救いなんだろうなと思いましたね。

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役柄とは正反対だった高校時代の自分

Q:劇中では響子たちの高校時代のシーンが物語の重要な鍵として、現在と並行して描かれていきます。水川さん自身の高校時代はどんな感じでしたか? 

わたしは高校生の時に大阪から東京へ出てきたんです。高校はいわゆる芸能学校と呼ばれるところへ入学したのですが、やはり芸能活動をしている人が多いだけあって、生徒間のライバル意識というのも少なからずありました。それがまず、精神的に負担でしたね。それから、当時は大阪から出てきたばかりだったので、思ったことをそのまま口に出してしまうところがあって。そのせいで性格のキツい子だと思われてしまい、大変だった記憶があります。

Q:撮影は矢崎仁司監督や原作者・辻村深月さんの故郷でもある山梨県で行われましたが、地方ロケならではのご苦労はありましたか?

ちょうど撮影がテレビの連ドラとほぼ同時期で、東京と山梨の片道2時間を行ったり来たりすることがほとんどだったんです。なので、残念ながらせっかくの山梨での撮影を楽しむ余裕はあまりありませんでした。12月の寒い時期だったこともあり、ガクガク震えてセリフがしゃべれなかったなんてこともありましたね。

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これからは芝居の筋力をつけていきたい

Q:辻村さんの原作についての予備知識はありましたか?

はい、実際に原作も読みました。ただ、脚本自体が矢崎監督と辻村さんが何度も話し合いを重ねた上で作り上げたものですので、あくまで参考までに読んだという感じですね。原作から何かインスピレーションを得ることよりも、脚本そのものから監督や辻村さんの意図をくみ上げることの方が大事だと思いました。

Q:本作は全体的にミステリータッチの演出が施されてはいるものの、女性同士の繊細で壊れやすい友情を描いた人間ドラマの色合いが強いように感じました。実際に完成した作品をご覧になって、どのように思われましたか?

この作品は恐らく女性が観た方がヒリヒリすると思うんです。共感できるというよりは、どこか女性の心の奥底にあるザラついた部分に触れてくる作品かもしれません。矢崎監督は女性の多面的な内側を、まるで口から旗がいっぱい出てくる手品のように引き出すのがうまいんです。描写として曖昧な部分が多く、結末もハッキリはしていませんよね。観客の想像に委ねるというか、それが矢崎監督ならではの魅力だと思うし、この作品では十分に効果を発揮していると思います。 

Q:女優として、これから新たに挑戦してみたいことはありますか? 

年に1度は必ず舞台をやっていきたいと思っています。実は20歳くらいのころに初めて舞台を経験したのですが、その時は自分の力不足だったせいで、「舞台には向いてないから二度とやらない」って思ったんです。でも、大河ドラマで宮沢りえさんとご一緒させていただいたときに、舞台経験の豊富な宮沢さんの近くにいることで舞台の良さを肌で感じたんです。それで、もう一度チャレンジしてみたいと思っていた矢先、去年、久しぶりに舞台のお仕事をいただいたんです。でも、自分の引き出しの少なさを思い知らされて・・・・・・。恥ずかしかったですが、逆にそれがすごく新鮮で、これからも自分の実力を試すため、芝居の筋力をつけるためにも、年に1度は挑戦していきたいなと思いましたね。

09月24日
記事提供元:シネマトゥディ(外部サイト)

太陽の坐る場所

東京から2時間ほど離れたところにある高校の卒業生たちが集まり、10年ぶりにクラス会が開かれることになる。地元に残った者、東京に出て行った者がいる中で、地元組の中心となっていたのは響子(水川あさみ)だった。高校時代人気を集めクラスの女王のような存在だった響子は、今では地元局のアナウンサーとなっていたが、満たされない思いを抱えていた。話題はかつての同級生で今では女優となりスポットライトを浴びるキョウコ(木村文乃)に集中した。クラス会に現れない彼女をめぐり、それぞれの高校生の頃と現在の思いが交錯する。そんな中ある目的のために女優キョウコが皆の前に姿を現し、響子が長いこと囚われていた思いが明かされる……。

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