後悔せずに生きるよう、一歩踏み出してみる

北海道でオールロケをした映画『ぶどうのなみだ』で、大泉洋と染谷将太が演じる兄弟に影響を与える旅人の女性エリカを演じたアーティストの安藤裕子が、初めて本格的に挑んだ女優業に至るまでの心境の変化と撮影の日々を振り返った。

取材・文:南樹里 写真:氏家岳寛

映画『ぶどうのなみだ』は10月4日より北海道先行、10月11日より全国公開

ぶどうのなみだ』 

一歩踏み出して女優業に挑む!

Q:まずは映画出演を決めたときの心境をお聞かせください。

人生の転機がありました。わたしは、おばあちゃん子だったので祖母を失うことを世の中で一番恐れていたのですが、東日本大震災の直後に祖母が亡くなってしまって・・・・・・。一方で自分の赤ちゃん、新たな命を授かるという、生と死の両方に直面して、すごく複雑な気持ちを抱いたときに、死ぬまでに自分に何ができるか考えるようになったんです。

Q:それが本作へのご出演の決め手に? 

一番はタイミングですね。書き残した小説を仕上げたい、夢に見ていた映画を撮りたい、こんな役を演じてみたいなどと考えていた時期にお話をいただいたので、「ぜひやりたい!」とお返事しました。その時期より前でしたら、たぶん恥ずかしいとか理由をつけてお断りしたと思います。後悔せずに生きるよう、恥をかいてもいいから一歩踏み出してみることにしました! 

Q:もともとご興味をお持ちだったのでしょうか。

高校時代に小説を書いたり絵を描いていたりしていて、それを自分で映像にすることを夢見ていたんです。それで大学生のときに制作現場でアルバイトをしたところ、部署ごとの役割があって、その方々がベストを尽くす姿を見て、モノ作りを安易に考えていた自分に気付かされて・・・・・・。そのときは諦めたものの憧れはずっとありましたね。

Q:実際に一歩踏み出してみていかがでしたか? 

すごく楽しかったです。現場では楽しいと感じる余裕は一切なくて毎日のようにひぃひぃ言っていましたが(笑)。

ぶどうのなみだ

■気持ちは風の谷のナウシカ!?

Q:撮影の初日はどうでしたか?

(大泉洋が演じる)アオと最初に対峙(たいじ)するシーンを撮りました。自分が初めて言うセリフなのに、その声量すらわからなくて。すごく緊張しましけど、1テイクで三島(有紀子)監督のオーケーが出たんです。試写であのシーンは直視できなかったですね。 

Q:風来坊なエリカさんの登場シーンはインパクトがありました。衣装も北欧風ですてきでしたね。

監督から「エリカは風のような人です」と言われたことを覚えています。彼女は一見威圧感があって勇ましくも見えますけど、すごく優しい人ですよね。エリカの衣装を初めて着たときは、(映画『風の谷のナウシカ』の)ナウシカになった気分でした。赤がメインカラーなのは今日着ているワンピースの影響かもしれないです。撮影前に監督がわたしのライブにいらしたときにもちょうど着ていたし、あとから監督が「ライブで歌う姿がまさにエリカだった」とおっしゃっていましたから。

Q:監督の演出は?

すごくわかりやすい指示でした。言い回し一つにしても例を挙げて「どちらが言いやすいか?」とか、「今どんな気持ちか?」「今その感情は出るか?」など本番前に十分確かめる時間がありました。リアルな感情をすごく大切にされていたので、とても演じやすかったです。 

Q:だから表情が自然なんですね。泣くシーンも結構ありましたよね? 

感情の揺れを見せるシーンは実際にそういう気持ちでしたから泣くこと自体はそれほど難しく感じませんでした。でも、運転しながら泣くシーンは夕日の差し加減で、4回ぐらい撮ったので、「そろそろ泣き疲れました」って言ってしまいましたけど(笑)。逆に何げない普通の会話が難しかったです。 

ぶどうのなみだ 

■大泉洋は北海道のキングだった! 

Q:食と景色という北海道・空知(そらち)地方の魅力がギュっと詰まった作品でした。

エリカの手料理として登場する品々が実際にすごくおいしいんです。だからおいしそうに食べるお芝居は要らなくて。撮影の合間にもつまんでいました(笑)。それにあの景色。土地や空の広がり、風景も素晴らしかったです。

Q:エリカの役づくりにも影響したのでは?

それは大きいと思います。それにスタッフや共演者の皆さんのおかげもあって、役に集中できました。自分の生活と並行して東京で撮っていたらエリカになるのは難しかったと思います。

Q:大泉洋さんとの撮影外でのエピソードを教えてください。

大泉さんは北海道のキングですから! (北海道の)岩見沢で評判の焼き鳥とお鍋をみんなで食べに出掛けたところ、個室風のお座敷だったんですが、お店の方が「洋ちゃん! 洋ちゃん!」と寄っていらっしゃって。その様子が昭和の大スターという感じで驚かされました。

Q:いい思い出がいっぱいありそうですね。

みんなでカラオケにも出掛けました。わたしは普段全く行かないので何を歌っていいのかわからなかったです(笑)。個人的には、りりィさんが歌われた井上陽水さんの楽曲がすごくかっこよくて、お隣で聴けてうれしかったですね。りりィさんとはミュージシャン同士で波長が合うので居心地が良くて、撮影後もSNSで連絡を取り合っています。

 

10月01日
記事提供元:シネマトゥディ(外部サイト)

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ぶどうのなみだ

アオ(大泉洋)とロク(染谷将太)の兄弟は、父から小麦畑と葡萄の樹を受け継いだ。ピノ・ノワールというぶどうを育て赤ワインの醸造に挑んでいるがなかなか思い描くようなものが作れず悩むアオを、ロクは複雑な思いで見ていた。ある日、二人の前にキャンピングカーに乗ったエリカ(安藤裕子)という女性が現れ、兄弟二人きりの静かだった生活が変化していく。

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