オカマって本当に美しい!

スナック経営者・真奈美(須藤理彩)、オカマのダンサー・エンジェル(安田顕)、二人の間に生まれた娘・小夜子(藤本泉)が繰り広げる人情ドラマ『小川町セレナーデ』。異色の親子を演じた安田と藤本が撮影秘話を明かした。

取材・文:斉藤由紀子 写真:金井尭子

映画『小川町セレナーデ』は全国公開中

小川町

オカマ&偽オカマ役に挑戦!

Q:娘を持ってしまったオカマのエンジェルと、スナック閉店の危機を助けるべく偽オカマにふんする小夜子。それぞれ、相当な難役ですよね。

安田顕(以下、安田):僕の役は、まだこの地上にいるじゃないですか。でも、偽オカマはなかなかいないよね。

藤本泉(以下、藤本):そう、だから演じるのがちょっと怖かったんです。オカマの方たちから見ても気持ちのいいものじゃないと思うので・・・・・・。ただ、この映画はそこが終着点ではないし、他の部分で良さを伝えられると思い、やっているうちに抵抗はなくなりました。

安田:ここだけの話ですが、藤本泉という役者はすごくいい。彼女が現場にいるといないとでは大違いで、存在感が際立っているんです。完成版を観て改めて思いました。

藤本:うれしいー!

安田:これ、わざわざ取材の場で言うってことは、なんらかのいやらしさがあるってことですからね(笑)。

藤本:もー、安田さんはいつも冗談ばっかり(笑)。でも、現場では本当にお世話になりました。わたし、小夜子がエンジェルさんの前で泣くシーンが大好きなんですけど、ご一緒したのが安田さんで本当に良かったです。

Q:劇中では、体も女になったオカマと、彼女が父とは知らない娘という複雑な関係ですが、現場ではかなり親しくされていたそうですね。 

安田:真奈美と小夜子は、母と娘ならではの微妙な壁があったんでしょうけど、エンジェルは小夜子の前にポッと現れたオカマだから、寄り添いやすかったんでしょうね。それが、芝居以外でも現れていたんだと思います。 

藤本:エンジェルさんがすごく魅力的で、小夜子もわたし自身も惹(ひ)かれたんだと思います。男性と女性の両面があると、母親とはできない女同士の話もできるから、距離が縮んで親しみやすくなるんですよね。 

小川町■安田顕は現場で扱いにくい!?  

Q:オカマ&偽オカマの妖艶なダンスシーンも見どころです。かなり練習を重ねたのでは?

安田:・・・・・・記憶にないんです(笑)。

藤本:めちゃめちゃ練習していたじゃないですか(苦笑)。みんなで踊る振り付けと、個々での踊りがあって、みんな一緒だとチラ見とかして、教えてもらったりもできるんですけど、自分だけの踊りがとにかく大変でした。わたし運動神経がないので、とにかく頑張りました。

安田:彼女、すごい努力家さんなんですよ。でも、できないことをやるのって、楽しいよね。

藤本:はい!

Q:安田さんはオカマや変態など、ハードルの高い役に挑まれることが多いですよね。

安田:まあ、ドMなんでしょうね(笑)。

藤本:こんな当たり前のことを言うと失礼かもしれないんですけど、現場での安田さんの集中力とストイックさはすごかったです。「今は話し掛けちゃいけない!」と思うことが何度もありまして、本当に尊敬してしまいました。

安田:ちょっとやめて! 現場で扱いにくいってウワサになっちゃう(笑)。

小川町

■父は、娘よりも母よりも女らしい!

Q:安田さんはお嬢さんもいらっしゃるだけに、今回の役は感情移入する部分も多かったのでは?

安田:逆でした。そっちに寄せるとダメだと思いました。エンジェルさんは身も心も女。子供の存在に対して抱いている感情は、父親としてのものではなく、あくまでも奥底にあるものなんです。エンジェルと小夜子のシーンを、親子の対話として見る人もいらっしゃるんでしょうけど、エンジェルは同性として話しているんですよ。(原桂之介)監督の演出が上手だから、親子に見えるんだと思います。

藤本:エンジェルさんは小夜子にとって、自分よりも母親よりも女性らしい人。父親だと発覚した後も、エンジェルさんはエンジェルさんのままだったんです。

Q:役づくりのために、オカマバーに行かれたりもしたんですか?

安田:新宿2丁目のお店に行きました。面白かったー! 言っていることはディープなのに、なんてことないように笑って話すんですよね。本当はなんてことあるんでしょうけど、それをわざわざ湿っぽくするようなことはしない。「あたしつらいのよ」って顔が、自然に出るような痛み方ではないというか。

藤本:実際のオネエさんたちが、本当に美しかったんです。しぐさの一つ一つに対する意識が高い。偽オカマの役だから、男性の部分も少しは出さなきゃいけないのかなって思っていたんですけど、むしろ、女性らしさを出した方が似るのかなと思いました。

安田:あー、それはそうだね。

藤本:年齢も性別も超えた魅力的な人物ばかり出てくる作品に仕上がっていると思うので、ぜひ観ていただきたいです。

 

関連作品情報

小川町セレナーデ

とある町に佇む小さな“スナック小夜子”には、今夜もその灯りを求めて常連客が集ってくる。ちょっと疲れた人、ちょっと寂しい人、ちょっと酔っぱらいたい人……。流行っているとはいえないものの、このさびれた“スナック小夜子”が醸し出す雰囲気はどこか懐かしく、来る人に癒しの時間を与えていた。“スナック小夜子”がオープンしたのは、ママの真奈美(須藤理彩)がシングルマザーとして娘の小夜子(藤本泉)を育てるためだった。20年前、おかまのショーパブで舞台スタッフをしていた真奈美は、スターダンサーだったエンジェル(安田顕)と仕事仲間として唯一無二の友情を分かち合っていた。だがエンジェルが本当の女性に生まれ変わるためタイへ出発する前夜、シャンパンで酔っぱらった二人は、いつのまにか男女の関係に……。生まれた娘・小夜子は、自分の父親のことは知ることもなく成長し、高校卒業とともに母を残して東京でひとり暮らしを始める。数年後、いくつかの恋に破れ、小夜子は実家に戻ってくるが“スナック小夜子”が借金だらけで閉店しなければならないことを知る。そんな中、小夜子とホステスの亮子は、隣町で大人気のおかまバー“シャープ”をまねて、偽おかまバーとして再起をかけようと決意。その計画を真奈美に猛反対された小夜子は、母の昔の友人エンジェルに力を貸してほしいと懇願するのだった。その数日後、エンジェルはミラーボールとともに“スナック小夜子”にやってくる。エンジェルの厳しい指導のもと、小夜子と亮子は“偽おかまダンサー”として大変身。毎夜多くの客が足を運び“偽おかまバー”作戦は大成功と思えたが……。

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