最高のゴジラ、過去現在!-語り部:佐野史郎

コラム

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最高のゴジラ、過去現在!-語り部:佐野史郎

シリーズ中3本に出演したばかりでなく、『GODZILLA ゴジラ』(2014/※以下、今作)日本語吹き替え版では声の出演も担当した佐野史郎さん。自他共に認めるディープなゴジラ通でもある佐野さんが、五つの テーマに分けてゴジラシリーズのベストを挙げ、過去作と今作との関連性を語る!

佐野史郎

ディープなゴジラ通、佐野史郎さん

1. ゴジラの咆哮(ほうこう)これが最高!

ゴジラ誕生の瞬間!

GODZILLA

(C)TOHO CO.,LTD.

まずはゴジラシリーズの中からベストな咆哮(ほうこう)シーンと、その重低音がもたらす効果についてこう語る。「『ゴジラ』(1954/※以下、第1作)は外せないですね。第1作あってこそのシリーズですから。オープニングタイトルロールの第一声も素晴らしいですが、大戸島でゴジラが初めて山から登場するときの咆哮(ほうこう)がいい。ゴジラの鳴き声を創造する際に、コントラバスの弦を緩めて、バックスキンの手袋でしごいて生み出したというエピソードを、伊福部昭さんの自伝で初めて知ったときはマッドサイエンティストさながらの迫力を感じましたね。何もないところから生み出した人は神様です。地をはい、腹の底に伝わってくるような声。その印象は切ないですよね。憎悪を抱いた、最も巨大な生物の存在を想像させるんです」

鳴き声一つとっても、原点である第1作へとつながる部分があると指摘する。「今作の咆哮(ほうこう)は、三繩一郎(※1)さんが作られた音響効果をかなりリスペクトしていますね。特にラストの咆哮(ほうこう)は、オリジナルの音源に近いと思います」

『ゴジラ』

※最大10MBです。大容量のパケット通信料となりますため、ご注意ください。

 

2. ゴジラのボディーこれが最高!

佐野さんもうならせたGODZILLA!!

GODZILLA

 (C)2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC

今作においてCGによって誕生したゴジラの造形に関し、佐野さんはやや辛口だ。「ギャレス・エドワーズ監督の作品そのものは、もう120点、いや150点。ただ、今作の造形に関して僕が演出家としてあえてダメ出しするなら、ゴジラの表情を作りすぎている。喜怒哀楽があるんです。つまり、能面らしさが足りない。ゴジラとは、神話や民話的背景がある❝現代能❞的であり、基本的には『安珍・清姫伝説』(※2)ですから」

この無表情が恐怖をあおる!

GODZILLA

(C)TOHO CO.,LTD.

観る者によって変わってくる表情にこそ、ゴジラというキャラクターの本質があるという意見が鋭い。過去作のベストな造形については、第1作は捨て難いとしながらも、佐野さんが初めて観た作品のゴジラ造形を挙げる。「ベストボディーは『キングコング対ゴジラ』ですね。映画そのものはエンターテインメント性が強調されていますが、無表情をキープしていますし、その存在はリアルですよ。子供にとっては恐怖の対象でした」

『キングコング対ゴジラ』

※最大10MBです。大容量のパケット通信料となりますため、ご注意ください。

 

3. ゴジラの怪獣これが最高!

佐野さんも出演した注目作!

GODZILLA

(C)TOHO CO.,LTD.

佐野さんが初出演したゴジラ映画『ゴジラ2000 ミレニアム』こそが、今作に通じるものがあると話す。「今、見返してみるといい映画ですよ。鉱物が意志を持つという、マンディアルグ(※3)的なメタファーというか、シュールレアリスムの小説に出てくるかのような世界なんです。敵対するのは、岩が飛来し生命体となるオルガ。この怪獣をはじめ、キングギドラやラドンといった怪獣たちの存在が、今作のムートーには間違いなく受け継がれていると思います」

オルガにインスパイアを与えたといわれる映画『エイリアン』を、ギャレス・エドワーズ監督は今作の参考にしたと語っていることも踏まえ、ムートーとオルガの関係性は要チェックだ。

『ゴジラ2000 ミレニアム』

※最大10MBです。大容量のパケット通信料となりますため、ご注意ください。

 

4. ゴジラと人間の関係これが最高!

ベストキャラクターはブロディ家の父親

GODZILLA

(C)2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC

シリーズを通して、キャスティングはその時代性を象徴している。数多くの個性的な登場人物の中で、ゴジラを引き立てたベストキャラクターは誰だろう。「第1作の登場人物は、全員いい。成瀬組(※4)のスタッフが見せる、尾形、恵美子、芹沢の三角関係のエロチックな感じは見事。何といっても、平田昭彦さんが演じた芹沢博士が最高です。彼は超えられないですよ。戦争犠牲者であり、研究に没頭する以外、現実では生きていられない体になってしまった科学者。芹沢は、ゴジラの分身でもあると思いますね」

この二人も注目!!

GODZILLA

GODZILLA

(C)2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC

第1作と今作には多くの共通点が見られるが、登場人物たちも例外ではない。「今作のベストキャラクターはブロディ家の父親役のブライアン・クランストン。誰が何と言おうと自分を貫く姿は、芹沢に重なります。日本人女性のように控えめで一歩引いて守るエリザベス・オルセンの役柄は、河内桃子さんを思わせますね。強い意志を持つアーロン・テイラー=ジョンソンには、宝田明さんの姿も重なりました」

ハリウッド映画における名優たちのアンサンブルは、第1作に引けを取らないほどの個性を放っている。

 

5. ゴジラのストーリー&世界観これは必見!

忘れてならない『ゴジラVSキングギドラ』

GODZILLA

(C)TOHO CO.,LTD.

佐野さんが最も重視するのは、ストーリーと世界観。ブレることなく一貫して科学の暴走による環境破壊を描いてきたゴジラシリーズの中で、原点の第1作を除き、改めて評価すべき作品は何だろう。「シリーズで忘れてならないのは、『ゴジラVSキングギドラ』ですね。ゴジラに助けられた兵士が高度経済成長の権化となっていくという構造が、ゴジラシリーズを語る上で実に明快で、第1作が予言していた通りになったという感じがします。若狭湾に向かうゴジラに対し、『一つでも原子炉が破壊されれば日本は・・・』というセリフが今となっては胸に刺さる『ゴジラVSビオランテ』も捨て難い。3.11以降に観ると恐ろしいですし、今現在の万能細胞に通じるテーマもはらんでいますから」

現在に通じるテーマに驚かされる『ゴジラVSビオランテ』

GODZILLA

(C)TOHO CO.,LTD.

ゴジラの存在を政治的な文脈で語っている平成初期の作品こそ、第1作と今作に通じるものがあるという解釈だ。「今作は香山滋(※5)さんが構築された物語を、非常に真摯(しんし)に正面から受け止めていると感じました。相当研究していると思います。世界中のゴジラファンは、エドワーズ監督にかなわないでしょう」

あらゆる観点から佐野史郎さんをもうならせる今作は、ゴジラ史に刻まれる傑作の一本になりそうだ。

『ゴジラvsキングギドラ』

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『ゴジラvsビオランテ』

※最大10MBです。大容量のパケット通信料となりますため、ご注意ください。

 

(聞き手:清水節)

※1 三繩一郎(みなわ いちろう)

三繩一郎(1918-)は音響効果技師として膨大な本数の映画に参加。本多猪四郎監督と共に、数多くのゴジラシリーズにも携わる。作曲家・伊福部昭と共に、初代『ゴジラ』におけるイマジネーション豊かな咆哮(ほうこう)や足音など数々の効果音を無から創造したエピソードは、今なお驚きをもって語り継がれている。黒澤明監督の下でも活躍し、『用心棒』では刀で人間の肉体を斬る生々しい斬殺音を生み出して時代劇アクションの音響効果を切りひらいた。

※2 「安珍・清姫伝説」(あんちん・きよひめ でんせつ)

紀州の道成寺にまつわる伝説。奥州から熊野詣でに来た僧・安珍に少女・清姫が一目ぼれ。再会を約束するが、安珍は裏切る。怒りのあまり大蛇へと変貌を遂げた清姫に、恐れをなした安珍は道成寺の鐘に隠れる。しかし鐘ごと安珍を業火で焼き尽くし、最後は清姫自ら入水自殺を図る悲恋物語。能の『道成寺』や歌舞伎の『娘道成寺』をはじめさまざまな芸能の題材に。日本古来の土着的な「悲しみと怒り」の物語に、佐野は『ゴジラ』のルーツを見る。

※3 マンディアルグ

フランスの女性作家アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ(1909-1991)は、文学を志す以前は考古学を目指していたこともあり、石塊をはじめ物質的モチーフを多用する。石から少女が出てくる「石の女」や、ダイヤモンドの中で交接する「ダイヤモンド」など、その作風は考古学的な物性が入り交じった抽象的な描写が特徴的。無機物から有機物となる『ゴジラ2000 ミレニアム』の怪獣オルガの中に、そうした要素を佐野は読み取る。

※4 成瀬組(なるせぐみ)

名匠・成瀬巳喜男監督を支えた優秀なスタッフを「成瀬組」と呼ぶ。こまやかな情感を描く成瀬作品で、内に秘めた男女の感情をすくい取る名場面の数々を生み出した。名作の誉れ高い『浮雲』『驟雨』『流れる』を担当した撮影の玉井正夫と美術の中古智は、『ゴジラ』第1作に本編班のメインスタッフとして参加している。本多猪四郎監督の演出もさることながら、技術スタッフの力量があってこそ、『ゴジラ』の秀逸な人間ドラマは描かれたのだ。

※5 香山滋(かやま しげる)

小説家の香山滋(1904-1975)は、「海鰻荘奇談」で第1回日本探偵作家クラブ賞新人賞を受賞し、怪奇・幻想小説で活躍。1954年、香山のファンだった東宝プロデューサー田中友幸から、水爆によって目覚める太古の生物がよみがえって日本を襲う物語❝G作品❞こと「ゴジラ」を依頼され、ストーリー原案を提供。ラジオドラマ化されたものを自ら小説化し、「怪獣ゴジラ」として出版。東宝特撮映画では『ゴジラの逆襲』『獣人雪男』の原作も担当した。

 

GODZILLA

『キングコング対ゴジラ』

GODZILLA

『ゴジラVSビオランテ』

GODZILLA

『ゴジラVSキングギドラ』

GODZILLA

『ゴジラ2000ミレニアム』

 

【60周年記念版】Blu-ray発売中¥4,700+税
発売・販売元:東宝

記事制作 : シネマトゥデイ

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