【ニャンともわんダフルシネマ vol.1】ジャン・リュックぅ、その胸に顔を埋めていいでちゅか~?

コラム

  • twitter
  • facebook
  • はてなブログ
  • google+
  • LINEで送る

 

文=島崎奈央

 

にゃんこジャンル:ハチワレ

◆にゃんこジャンル:ハチワレ

 

人間って、言葉を持つ者同士なのに、なぜにこんなにわかり合えないのかしら。どうしてこんなに歩み寄れないのかしら。もう、人間は諦めて、動物とともに生きていったほうがいいんじゃないかしら。ほらね、この子とならこんなに仲良くできる・・・。そんなことを思いながら、ひとり、愛犬や愛猫を抱き締めたことのある方に、見てもらいたい映画がある。フランスの女優、ジュリー・デルピーが監督兼主演を務めた、ユーモアとウィットたっぷりの恋愛コメディ「パリ、恋人たちの2日間」(07)と続篇「ニューヨーク、恋人たちの2日間」(12)だ。

 

本シリーズのヒロインは、ニューヨークに住むフランス人写真家マリオン(ジュリー・デルピー)。前篇「パリ、恋人たちの2日間」は、マリオンがアメリカ人の恋人ジャック(アダム・ゴールドバーグ)とともに、パリにやってくるところから幕を明ける。彼女たちはヴェネチア旅行から戻ったばかり。留守のあいだ両親に預けた飼い猫を引き取りに、マリオンの実家を訪れたのだ。

これからはじまる波乱含みのパリ旅行を暗示するかのように、マリオンと彼女の愛猫ジャン=リュックは不穏な再会を果たす(85年の「ゴダールの探偵」でデビューしたデルピーが、おそらくはジャン=リュック・ゴダールの名にちなんでシャレでつけたであろう、ふざけた名前!)。ジャン=リュックを抱き上げるなり、マリオンが叫ぶ、「ママ、この子、太ったんじゃない!?」。

 

『パリ、恋人たちの2日間』

『パリ、恋人たちの2日間』

 

確かに、マリオンの腕のなかできょとんとしているハチワレ猫の体はムチムチだ。彼を猫可愛がりするマリオンの母親に、フォアグラを与えられ続け、わずか2週間の間に巨体に育ってしまったのだという。怒り嘆くマリオン(「機内に手荷物扱いで持ち込むために、体重を5キロ以内に押さえてきたのに!」)には悪いけれど、ジャン=リュックの体は、大きい猫好きの人間にはたまらない素敵なフォルム。マリオンが母親に向かってわめくたびに、腕の中のジャン=リュックの腹がゆさゆさ揺れる。大きい猫、それは猫界で最もかわいい猫だ。なにせ大きければ大きいほど、触るところがいっぱいあるのだから。あのもふもふに、顔をうずめて思い切り息を吸えたなら・・・。

という猫狂いの余談はさておき、映画はその後、マリオンとジャックが繰り広げるパリの珍道中を追いかける。風変りなマリオンの家族、次々現れる彼女の過去の男たち、フランス独特の文化。それらすべてについてジャックはイラついて拒否反応を示し、そんな彼にマリオンは呆れ返ることしきり。ふたりの関係は次第にギクシャクしはじめる。

マリオンとジャックのあいだに起きるいざこざは、一見、フランスとアメリカのカルチャー・ギャップのせいに見える。が、本篇が進むうち、そればかりではないと思えてくる。カルチャー以上に、いやカルチャー以前に、深いギャップを抱えるのが、恋人という他人同士の関係性。そもそも、神経質で気難しいジャックに対し、マリオンは自由で奔放。違い過ぎるふたりなのだ。自分たちのあいだに横たわる深くて暗い川を挟んで、いかに双方が努力して手を伸ばし合うか。恋愛とはそんなチャレンジの連続なのかもしれない。果たして、パリでの2日間は、マリオンとジャックの関係になにをもたらすのか――。

 

『パリ、恋人たちの2日間』

『パリ、恋人たちの2日間』

 

マリオンの愛猫は、嬉しいことに、続篇「ニューヨーク、恋人たちの2日間」にも登場し、その愛らしい大柄な姿を披露してくれる。前作から数年後、舞台はニューヨーク。ジャン=リュックが変わらずにマリオンのそばにいるのに対し、ジャックの姿はそこにはもうない。月日が経てば、人と人は別れ、いろいろなことが移ろう。神が二人を分かつまで一緒に、と誓えるのはやはり、男女の別も種族の別も乗り越えた、動物と人間だけなのか・・・。と嘆息するなかれ。マリオンは諦めない、本作でも別の恋人と関係を築こうと再び騒動を巻き起こす!

このめげなさ、タフさ、旺盛さ。それがマリオンの、否、ジュリー・デルピーのいいところ。しみじみそんなことを思いながら、ひとり愛犬/愛猫を抱きしめるのも、それはまたそれでいいかもしれない。

DVD『パリ、恋人たちの2日間 特別版』

発売中 DVD『パリ、恋人たちの2日間 特別版』
価格:1,429(税抜き)発売元:ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント

記事制作 : Avanti Press