【栄養になる大失恋】恋の処方箋番外編:旅する映画で大逆転 食べて、踊って、旅をして!

コラム

  • twitter
  • facebook
  • はてなブログ
  • google+
  • LINEで送る

文=高村尚

交付年月日 平成27年6月25日
処方箋の試用期間 交付日より3カ月

オッター・クリーク州立公園の夜明け

オッター・クリーク州立公園(Otter Creek State Park)の夜明け
Photo by alexeys / PIXTA(ピクスタ)

世界にはいろいろな風景があります。失恋のダメージはいったん忘れて、さあ、旅に出ましょう!

旅先では自然の作った美しい色彩のグラデーションや優美なフォルムに包まれてみましょう。丘や森、木々の葉の重なりが創り出す緑の、海や川、湖と空が創り出す青の、夕焼けや朝焼け、紅葉が創り出す赤のグラデーション。それから山の、岩の、波の、水の流れの、風の、雲の描くフォルム。これらを日々の暮らしの中で意識したことはありますか? ないのであればなおさら。意識を日常と異なるところに向けるのが旅です。意識が動いたあとに余地ができ、余地は余裕へとつながります。そしてそこに生きる人々との出会い。世界中のどこでも皆、生きるための努力をしているわけです。そこに明日へのヒントを見出せるかもしれませんし、明日のパートナーとの出会いもあるかもしれません。

処方ばかりが長くなっては行けません。実際に効果のあった旅のプランをいくつかご紹介しましょう。

処方1.人が生きた証を訪ねて自分の小ささを知る
『エリザベスタウン』

オッター・クリーク州立公園

夜明けに車を飛ばした2人が出会う
オッター・クリーク州立公園(Otter Creek State Park)

『エリザベスタウン スペシャル・コレクターズ・エディション』発売中

『エリザベスタウン スペシャル・コレクターズ・エディション』発売中
【価格】1429円+税
【発売元】パラマウント ジャパン

ケンタッキー州エリザベスタウンからオクラホマ州オクラホマ・シティまでアメリカ南部を車で旅したドリュー(オーランド・ブルーム)。その旅は『エリザベスタウン』という映画にまとめられていますので、詳細はそちらでご確認ください。売れっ子シューズデザイナーだった彼は、デザインしたシューズが大失敗し会社に約10億ドル(約1220億円)近い負債➝解雇➝失恋で文字通りなにもかも失ったところからの旅でした。彼がラッキーだったのは彼の再生を願い、旅のプランを作ってくれる友人がいたこと。というか、父の訃報を聞き、エリザベスタウンに駆けつける飛行機の客室乗務員クレア(キルスティン・ダンスト)がその役を担ってくれたわけです。

『エリザベスタウン』発売中

『エリザベスタウン』
クレアのマップを片手に。彼女はこの素晴らしい地図をいつの間に作ったのか
(c)2005 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.TM,(R) & Copyright (c)2006 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

地図を作り、再起への旅に送り出してくれたクレアとドリューが、意識して最初に会ったのは明け方のオッター・クリーク州立公園(Otter Creek State Park)。川遊びや狩りなどさまざまなアクティビティを体験できる美しい公園です。彼女はなぜ地図を作ろうと思ったのか? 正確にはわかりません。彼女の作ったマップは、どのルートを通って、どこで車を止め、なにを見るべきか。そしてそこに至るまでに車内で聞く音楽のテープ(!)まで付いた、優れものでした(クレアのマップ)。車をスタートさせたドリューが見るのは、その昔移住したアイリッシュの人々が多く住むブルーグラス地区の美しい石垣と並木と牧草地。そしてさまざまな人が生きてきた証。目に映るその風景は、音楽とともにドリューの生命力を掻き立てていきました。

『エリザベスタウン』作品詳細

処方2.カウンターから人を眺める〈他人は自分を知る鏡〉
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』

BH-02-05-150619

メンフィスの文化を見つめ続けた老舗バー「アーネスティン&ヘイゼル」

メンフィスの文化を見つめ続けた老舗バー「アーネスティン&ヘイゼル」

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』DVD&Blu-ray発売中
【価格】DVD1800円+税、Blu-ray2500円+税
【発売元】アスミック・エース
【販売元】KADOKAWA

恋人の心変わりで大失恋し、57日目にニューヨークからテネシー州メンフィスに移り住んだエリザベス(ノラ・ジョーンズ)。56日間エリザベスがニューヨークでなにをしていたかというと、元恋人の部屋を下から見上げ、カフェに行ってはオーナーのジェレミー(ジュード・ロウ)に管を巻き、ブルーベリー・パイを食べていたわけです。吹っ切るまでに約2ヵ月。食べたパイの量については言及しないことにしましょう。エリザベスは車を手に入れたいと思い、メンフィスの2つの店で働いていました。そのひとつが「アーネスティン&ヘイゼル」。プレスリーで知られる音楽の町メンフィスにある老舗のバーです。訪れる観光客がどんなに増えようとも、音楽と町を見つめ続け、地元民に愛されたバー。この店に目を付けた彼女のセンスは大したものですよ。エリザベスはこの後、185日目にアリゾナへ、251日目にネヴァダへ、そしてひょんなことから新車のジャガーを得てラスヴェガスに旅立ちます。彼女が最後に再生した町はどこなのかは、このケースを映像化した『マイ・ブルーベリー・ナイツ』でご確認ください。

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』
エリザベスが働くアーネスティン&ヘイゼルの客アーニー(デイヴィッド・ストラザーン)
(C)Block 2 Pictures 2006

そうそう。「アーネスティン&ヘイゼル」には、先ほどご紹介したドリューも立ち寄っています。カウンターで店の名物オーナー、ラスと、音楽談義をしていました。もちろんクレアのマップで指示されていたからなんですが。

「別れの理由は、時に知らないほうがいい」。『マイ・ブルーベリー・ナイツ』に出てくる言葉です。失恋とは本当にやっかいな病です。なにせ予防できないうえに、かかってしまったら本人が納得するまで治らない。そのくせ恋愛における破局の理由の多くは、知らないほうが精神衛生上いいことなのです。

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』作品詳細

処方3.いまある欲求をすべて旅で満たす
『食べて、祈って、恋をして』

『食べて、祈って、恋をして スペシャルエディション』

バリの山間に広がるライステラス
photo by Luciano Mortula / PIXTA(ピクスタ)

『食べて、祈って、恋をして スペシャルエディション』

『食べて、祈って、恋をして スペシャルエディション』
【価格】Blu-ray2381円+税
【発売・販売元】ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

脚本や旅行記事を書くライターのリズ(ジュリア・ロバーツ)のケースもそう。夫との別れを考え始めたのは、「なんとなく一緒にいられないかも」というリズのぼんやりとした不安。人生が理想と異なり始めたことを、動物的感で察知したため、自分でもうまく理由を言葉にできません。そんな彼女が向かったのは、イタリア、インドのアシュラム、バリ。イタリア、ナポリでは「何もしないことの歓び」を食べつくすことで味わい(ナポリのダ・ミケーレ〈L‘Antica Pizzeria da Michele〉で食べていたピザはとても美味しそうでした! 日本にも恵比寿に支店があるそうですが)、インドのハリヤーナー州パタウディのアシュラム(修行場)では「自分を許せるまで祈り」、バリでは「神と煩悩をほどほどに調和させる生活」を学びます。

バリで出会ったフェリペ(ハビエル・バルデム)もまた新しい自分を生きなおそうとしていた

『食べて、祈って、恋をして』
バリで出会ったフェリペ(ハビエル・バルデム)もまた新しい自分を生きなおそうとしていた
(c)2010 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

神聖なバリではどこに行ってもなにか大きな存在を感じますが、素晴らしい音楽や食、自然の前に楽しむなというほうが難しい。先走りがちな煩悩を少し抑えて祈るというのが調和でしょうか。山間部のライステラスの美しさと、海に近い地域の解放感をたっぷり味わい、目覚めると掃き清められた建物の入り口に、お米と花が供えられている。再生した気分になるわけです。リズもバリで再生します。この欲するものに忠実なリズの再生の旅は『食べて、祈って、恋をして』に詳しく綴られていますのでご確認ください。

『食べて、祈って、恋をして』作品詳細

処方4.その町の人と深くかかわってみる
『トスカーナの休日』

『食べて、祈って、恋をして スペシャルエディション』

トスカーナ州コルトーナの丘陵
Photo by gandhi / PIXTA(ピクスタ)

リズも訪れたイタリア。イタリアが与えてくれる癒しは、まず食の美味しさ、歴史が育んだ町並みの優美さ、自然の美しさ。そしてどこの国の女性も同じ。たぶん望みは、具体的に褒められたり、口説かれたりしたいということなんだと思います。サンフランシスコで評論や小説を書いていたフランシス(ダイアン・レイン)もそうでした。

ダイアン・レイン

アカデミー賞候補者が集う2010年のガバナーズアワードに参加したダイアン・レイン
Photo by Matt Petit / (c)A.M.P.A.S.

彼女の場合は酷評した作家から仕返しに夫の浮気を暴露されて離婚へ。その離婚調停で家を失っての一人旅でした。イタリアでも都市ではないトスカーナ州コルトーナの美しい丘陵に広がるブドウとオリーブの畑。こんなところに住んで、ワインと美味しい料理を食べたいと思うのはフランシスだけではありません。すでになにもかも失い、守るものがなくなれば、人は不思議に攻めに出るわけです。彼女はコルトーナに家を買ってしまいます。友人一同に驚かれますが、実はこのコルトーナ、ただの田舎じゃありません。フィレンツェやローマまでは約2時間、地中海のリゾート地でもあるポタジーノにも近く、山の幸も海の幸も楽しめる、自然と歴史に溢れるブラビッシモ(素晴らしい)な町。豊かな人生を新たに始めようとするには最適な場所なのですよ。

地中海を臨むポタジーノの美しい町並み

地中海を臨むポタジーノの美しい町並み
photo by amok / PIXTA(ピクスタ)

フランシスの望みは、買ったおうちで結婚式を行うことと、家族と一緒に暮らすこと。その願いが叶ったのかどうか? 『トスカーナの休日』に詳しく記録されていますので、ぜひご確認を。

『トスカーナの休日』作品詳細

処方5.気がすむまでビーチで歌い踊ってみる
『踊るアイラブユー♪』

地中海を臨むポタジーノの美しい町並み

『踊るアイラブユー♪』の撮影が行われたil Lido Coco Loco
Litoranea per S.Maria di Leuca ,Torre S.Giovanni-Ugento (Le) Tel 347/6650789 http://www.lidococoloco.it  info@lidococoloco.it

イタリアでもブーツのかかとのほうにあるプーリアへは、まだ日本から訪れる旅行者はそれほど多くないようです。どんぐりのような形の家、トゥルッリが並ぶアルベロベッロには行ったことがある? そうなんですよ。なぜか多くのツアーがそこだけ見て、ほかの州に行ってしまうんです。食の美味しい州として有名なプーリアを堪能せずに。

『踊るアイラブユー♪』ビーチで弾けるヒロインら

『踊るアイラブユー♪』80年代ポップスにのってビーチで弾けるヒロインら
7月10(金)よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開
【配給・宣伝】ファントム・フィルム
(c)WOS DISTRIBUTION (IRELAND) LTD. 2014

プーリアへ旅したのは3年前の夏、かの地で学業と恋のどちらを取るか彼に迫られ、大学卒業を優先させたイギリス娘テイラー(ハンナ・アータートン)。もともとひと夏の恋のつもりでプーリアでのバカンスを謳歌していたテイラーですので、その後、相手がどのような恋をしていようが文句を言える筋合いではありません。たとえ姉のマディ(アナベル・スコーリー)と婚約していようとも。でも再会すると、元彼ラフ(ジュリオ・ベルーチ)はさらに素敵になっていました。もやもやした気持ちを抱えながら、テイラーは彼や婚約者である姉、そして友人らとともに、ナルドやレッチェなどの歴史ある町、美しい海岸線や白砂ビーチなどプーリア州を遊び倒します。背景に流れるマドンナ、シンディ・ローパー、ホイットニー・ヒューストン、デュラン・デュランなど80年代ポップスを歌い、踊りながら。テイラーの場合は、失恋したのではなく、させたわけですが、元彼ラフのなんと心の広いこと。気持ちを汲んで優しく接してくれるわけです。こういう彼氏を、女子は熱望するわけですが、人間はお互い様。ギブ&テイクなんですよ。ふつうはね。テイラーの若気の至りゆえの失敗は映画『踊るアイラブユー♪』に記録されていますので、劇場でご覧ください。イタリアのビーチよりも、80年代ポップスの懐かしさに踊りだしたくなり、失恋の痛みも吹き飛ぶと思います。

『踊るアイラブユー♪』ビーチで弾けるヒロインら

『踊るアイラブユー♪』古い町並みを舞台に踊るマディ(アナベル・スコーリー)
7月10(金)よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開
【配給・宣伝】ファントム・フィルム
(c)WOS DISTRIBUTION (IRELAND) LTD. 2014

『踊るアイラブユー♪』作品詳細

夏休み直前、栄養になる大失恋は旅をテーマに処方してみました。実際の旅に出られるならどこも大変にお薦めです。でも、その時間が取れないようであれば、ご紹介した“記録映画”をぜひご覧ください。心浮き立ち、爽快感を味わうだけでなく、気持ちの底から癒されることを請け負います。

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)