【ダレコレ~Dare Collection~ vol.4】 スターの概念を変えていく文科系草食男子 ローガン・ラーマンの思春期臭にノックアウト

コラム

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文=那須千里

『ハッピーエンドが書けるまで』

ローガン・ラーマン『ハッピーエンドが書けるまで』
(C)2012 Writers the Movie,LLC

よく考えてみれば、いくら若いとはいえ、プロとして芸歴10年超えの俳優を「誰これ?」呼ばわりするのも失礼な話です。でも今の若手の主流は主演も助演もオールマイティにこなすタイプ。いわゆるスターのイメージではなくても、気がつくと常に出演作がコンスタントに公開されている人っていませんか? 俳優としてもそのほうが役柄の幅も広がり、息の長い活動がしやすいと思われます。スターが不在なのではなく、スターの概念が変わりつつあるのかもしれません。

というわけでローガン・ラーマン。韻を踏んだような響きを持つ名前は十回ほど声に出してみると早くも愛着が沸いてきます。主演作も大小を問わずあり、なかでも有名な『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』(10)とその続編ではタイトルロールを演じていますが、知名度的にはまだまだ知る人ぞ知る存在に近いでしょう。

気になるルックスは寄り目がちな目元と力強く外にはねた眉がどことなくジェイク・ギレンホールを彷彿とさせます。一見ファニーフェイスと言ってもよい印象ですが、そこはかとない愛嬌と親しみやすさがにじみ出ていて、クラスに一人はいてもおかしくない。パッと目を引く華やかなイケメンではありませんが好感度は高く、『ウォールフラワー』(12)の劇中でもエマ・ワトソンに「親のウケもよさそう」と評されています。見れば見るほど味の出てくるスルメ顔で、出演作を3本も観れば結構なファンになってしまうこと請け合いです。

1992年生まれの23歳、カリフォルニアはビバリーヒルズの出身。キャリアは長く、一説によると2歳半のときにジャッキー・チェンの映画を観て俳優になりたいとお母さんに訴えたとか。4歳でエージェントに所属し、CM出演を経て、『パトリオット』(00)のメル・ギブソンの息子役で映画デビュー。このときは時代劇ということもあり、ふわっとしたボブのようなウェーブヘアで、女の子みたいな可憐さをまとっています。

その後は『バタフライ・エフェクト』(04)でアシュトン・カッチャーの少年時代を演じる(またもや長髪で)という、美形子役の王道をたどりますが、俄然その演技が注目されたのは『3時10分、決断のとき』(07)でのクリスチャン・ベイルの息子役。父親のベイルが命をかけて守り抜いた威厳を誰よりも見せたかった相手であり、父の背中をいてもたってもいられず追いかける重要な役どころ。パッションを持て余した少年から大人の男としての男気を体得していくローガンの成長を追っているだけでも胸が熱くなるような迫真の演技でした。

そしてこの「思春期の通過儀礼(イニシエーション)」というジャンルはローガンの十八番となります。たとえば『ウォールフラワー』で演じたチャーリーは近年の彼の代名詞といってもいいハマり役。心にトラウマを抱えた高校生の役ですが、ファーストキスや初体験だけでなく、『ロッキー・ホラー・ショー』のコスプレで衝撃のコルセット姿をお披露目するなどローガンの役者魂が炸裂。初々しくて傷つきやすく、それでいて卑屈な感じがしない。等身大でかつ思春期の青年特有のナイーブさを兼ね備えた、現代アメリカのアイコン的な存在と言えます。

『ハッピーエンドが書けるまで』

ローガン・ラーマン(右)、リリー・コリンズ
『ハッピーエンドが書けるまで』
(C)2012 Writers the Movie,LLC

取り急ぎ日本の映画館でローガンを目撃できる最新作は『ハッピーエンドが書けるまで』なのですが、実は『ウォールフラワー』と同じ2012年に製作された作品であるため、劇中の姿は少し前のものになります。配役はリリー・コリンズ演じる女子大生作家サマンサの同級生ルイスで、案の定最初は全く男として相手にされないけれど、持ち前の人の良さと実直さで彼女の家族ともども攻略。ちなみにサマンサの弟でスティーヴン・キングに憧れるラスティは、もう少し若かったらローガンがやっていてもおかしくないような文系草食男子のキャラクターで、演じたナット・ウルフも線の細い美少年系な今後の有望株。そんな美味しい立ち位置を後輩に譲っても、不安定な登場人物たちの中で絶大な安心感をもたらし爪痕を残すローガンのスタミナが逆に際立ちます。

その確かな演技力はもちろん、ローガンの出演作には基本的にハズレがありません。お母さんがマネージャーを務めていますが、作品選びが的確なのでしょう。ローガン自身も相当なシネフィルのようで、好きな監督にデイヴィッド・フィンチャー、ポール・トーマス・アンダーソン、スタンリー・キューブリックらを挙げる通好み。共演者にも恵まれており、『ノア 約束の舟』(14)では、『3時10分、決断のとき』のラッセル・クロウ、『ウォールフラワー』のエマ・ワトソン、『ハッピーエンドが書けるまで』のジェニファー・コネリーとそれぞれ再共演を果たしています。

尊敬するブラッド・ピットと共演した『フューリー』(14)では、たった一日で戦場の洗礼を受ける18歳の新兵役に抜擢され、肉体的にも精神的にも少年から大人の男になる様を実に繊細に演じています。クレジット順では三番手ですが実質の主役といっても過言ではないポジション。短髪で軍服に身を包み、首や顎のラインもしっかりとしてきてたくましさが感じられますが、軍人でありながらピアノをたしなみ、荒々しい戦時下に一時の安らぎをもたらすシーンの倒錯感にも萌えます。

そんなローガンは目下、新しい『スパイダーマン』シリーズの主役候補に名前が挙がっているという噂も! もしこれが実現したら、元祖であるトビー・マグワイアの等身大(平均よりちょっとイケてない)で悩めるヒーロー路線を正統に引き継ぐように思えます。

子役出身のセレブながら素朴な魅力をキープし、数々の映画で思春期の通過儀礼をモノにしてきたローガン。イニシエーション俳優としての一時代を築いたローガンがこれからどんな変貌を遂げていくのか、ダレコレハンターとしては目が離せません。

『ハッピーエンドが書けるまで』

(C)2012 Writers the Movie,LLC

『ハッピーエンドが書けるまで』
6月27日(土)より新宿シネマカリテ、渋谷シネパレスほか全国ロードショー
配給:AMGエンタテインメント
監督・脚本:ジョシュ・ブーン
出演:リリー・コリンズ、ローガン・ラーマン、グレッグ・キニア、ジェニファー・コネリー、ナット・ウルフ、クリステン・ベル

記事制作 : Avanti Press

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