【映画の料理作ってみたら vol.1】実はイタリア料理じゃなかった!? 『ルパン三世 カリオストロの城』の スパゲティ・ミートボール

コラム

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文=金田裕美子

映画に出てくる食べ物はどうしてあんなに美味しそうなんでしょう。『かもめ食堂』を見ておにぎりが食べたくなった。『クレイマー、クレイマー』を見てフレンチトーストを作ってみた。そういう人は少なくないはず。そう、「食べたい!」と思ったら自分で作ればいいじゃない、というアントワネット的精神(?)で「映画に出てくる美味しそうなもの」を作ってみることにしました。

まずやってみたのは、「全日本・映画の中のあれ食べたいアンケート」をやったらおそらく上位にくるであろう『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)のスパゲティ・ミートボール。偽札の謎を探るためカリオストロ公国に潜入したルパンと次元が町の食堂で奪い合うように食べる、ミートボールがごろごろ入った大山盛りのあれです。せっかくだからテーブルセッティングも真似てみましょう。

Cagliostro
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原作:モンキー・パンチ ©TMS

『ルパン三世 カリオストロの城』作品詳細

カリオストロ公国はスイスとオーストリアに囲まれたリヒテンシュタイン公国がモデルだと言われていますが、この食堂の赤いチェックのテーブルクロスや瓶の下半分が藁に包まれたキャンティ風ワイン、そしてパスタというメニューはどう見てもイタリアンな雰囲気です。

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赤いチェックのテーブルクロスと瓶の下半分が藁に包まれたキャンティ風ワインがあるだけでそこはイタリア!?

このザ・イタリアンなセッティングとスパゲティ・ミートボールを分け合うというシチュエーション、前にもどこかで・・・と思ったら、子どもの頃に見たディズニー映画『わんわん物語』(1955)でした。野良犬のトランプがお嬢様犬レディを誘って馴染みのイタリア料理店の裏口に行くと、店主は「彼女を連れてきたのか!」と大喜び。木箱(樽?)の上に赤いチェックのテーブルクロスを敷き、キャンティの瓶にろうそくを立て、2人(匹)にスパゲティ・ミートボールを御馳走してくれるのです。店主がアコーディオンで奏でるテーマ曲「ベラ・ノッテ」をバックに、1皿のスパゲティを仲良く分け合うレディとトランプは、そうとは気づかずに1本のスパゲティを両端から食べ始め、やがてチュッ。最後にひとつ残ったミートボールをトランプは鼻で転がしてレディにすすめる・・・アニメ史上、いえ映画史上屈指と言ってもいいロマンティックなシーンです。しかし幼き日の私は「ああ、ミートボール・・・」と間違ったところにうっとりしていたのでした。

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『わんわん物語』作品詳細

スパゲティ・ミートボールは1960年度アカデミー賞受賞作『アパートの鍵貸します』にもロマンティックに登場します。ジャック・レモン扮するしがないサラリーマンが、思いを寄せるシャーリー・マクレーンに自宅で料理してふるまうのです。レモンが茹であがったスパゲティをザルでなくテニス・ラケットで水切りし、華麗なストロークでお皿に盛りつけるという、小道具の使い方が抜群にうまいビリー・ワイルダー監督らしい名シーン。しかし! ここでレモンはとんでもない行動に出ます。ラケットにあけたスパゲティに水道の水をジャーッとかけるという、冷製パスタでもない限りやっちゃダメ! なことをしでかすのです。本人はご機嫌で「♪タリ~ララ~ ミートボール」などと歌いながらミートボール入りソースをかけますが、きっと水っぽく生ぬるいスパゲティになってしまっていることでしょう。まあ、マクレーンは結局食べずに帰ってしまうのですが。

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ジャック・レモンはテニスのラケットで水切り。
・・・っていうかパスタを水で洗っちゃいかんだろう!

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【価格】4,700円(税抜)(DVD)
【発売元】20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
©2012 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.
Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

『アパートの鍵貸します』作品詳細

スパゲティ・ミートボール
作ってみたらわかったこと

さて。映画の話はこのくらいにして早速作ってみましょう。美味しいミートボールを作るには何かコツがあるんでしょうか。参考に、家にあるイタリア料理のレシピ本を何冊か見てみます。・・・ん? 載ってない。そういえば本場イタリアでも日本のイタリア料理店でもイタリア映画でも、スパゲティ・ミートボールというものを見た記憶がない。『くもりときどきミートボール』や『ハンコック』など、アメリカ映画にはよく登場するのに。これはもしや、日本で独自の進化を遂げたスパゲティ・ナポリタンのように、イタリアには存在しないメニューなのでは? という疑惑がむくむくと湧いてきました。

・・・調べてみました。「イタリア料理ではない」「イタリアにあるとしても観光客向けだ」「いや、イタリア南部では昔から食べられていた」などいろいろな説を発見しましたが、総合すると、イタリアではポピュラーなメニューではないようです。メインディッシュやスープの具として登場することはあっても、ミートボール(イタリア語でポルペッティ)をパスタと合わせることはない。では、どこから広まったのか?

これに関しては、19世紀の終わりから20世紀初頭にかけてイタリアからアメリカに移住した人々、という説が有力のようです。イタリア系移民のほとんどはイタリア南部やシチリアの出身。「南部では昔から食べられていた」という話とも符合します。比較的安い挽肉を使ったメインディッシュとパスタが一緒になったスパゲティ・ミートボールは、新天地で忙しく働く移民たちの間に「1皿で済むお手軽メニュー」として広まり、やがてリトルイタリーなどのレストランのメニューに載るようになり、そこから全米に広まり「わんわん物語」に登場、世界的に有名になってイタリアに逆輸入されたメニューなのではないでしょうか。

イタリアン度アップのコツは
生サルシッチャとパルミジャーノ!

また話がそれてしまいました。今度こそクッキング・スタート。まず用意するのは挽肉です。イタリアン・マフィアの世界を描く『グッドフェローズ』に「ミートボールには3種類の肉を使う。仔牛肉、牛肉、豚肉・・・豚は絶対に必要だ」というセリフが出てきますが、仔牛肉はうちの近所のスーパーにないのでパス。合挽肉を使います。ちなみにアメリカには「合挽肉」というものがなく、牛と豚の挽肉を買ってきて自分でミックスしなければならないらしいですが、その点ニッポンのスーパーは素晴らしい。

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ミートボールを揚げるときはちょっと油多めに

挽肉に牛乳に浸したパンと玉ねぎのみじん切り(先に炒めてもいい)、卵、塩、コショウ、ナツメグなどの調味料を入れてよく練り混ぜます。これが最もスタンダードな材料ですが、ここにパンチェッタやボローニャ・ソーセージのみじん切り、生のサルシッチャ(ソーセージ)の中身、パルミジャーノ・レッジャーノ(おろしたもの、かなりどっさり)、パセリなどを入れると俄然イタリアン度がアップします。この生地をゴルフボール大に丸めて小麦粉をまぶし、油で揚げます。フライパンで焼いてもいいのですが、揚げた方がまんまるに仕上がります。

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玉ねぎのみじん切りはさっと炒めて

次にトマトソース。ニンニクと玉ねぎのみじん切りをオリーブオイルで炒め、水煮のホールトマトを加えて潰しながら15分ほど煮ます。ここに塩、オレガノを加えてソースの出来上がり。『ゴッドファーザー』に登場するマフィア・ファミリーの一員クレメンツァは、トマトソースに「砂糖と赤ワインを入れるのがコツ」と言っていますが、砂糖でトマトの甘味を補うのは邪道とされているし、カロリーも高くなるので見習わない方がいいでしょう。トマトソースに先ほどのミートボールを加えてしばらく煮込み、茹であがったパスタに絡めれば完成です!

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トマトソースは酸味が飛ばない程度にしっかり煮込んで

『カリオストロの城』でルパンと次元が食べていたスパゲティ・ミートボールは宮崎駿監督のディズニー映画に対するオマージュなのかな、とは思っていましたが、イタリア系移民の歴史にまで関係する「伝統的イタリアン・アメリカン」なメニューだったとは意外な発見でした。では冷めないうちに、ちょっと賢くなったようないい気分でボナペティート!

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【recipe】スパゲティ・ミートボール

〈材料〉
・ミートボール
 合挽肉
 玉ねぎ みじん切り
 パン 牛乳に浸してちぎる
 卵
 塩・コショウ・ナツメグ
 (あるとイタリアン度が増すもの:サルシッチャ、パンチェッタ、ボローニャ・ソーセージ、パルミジャーノ・レッジャーノ、パセリ等の香草)
・トマトソース
 ホールトマト水煮缶
 にんにく
 玉ねぎ
 オリーブオイル
 塩、オレガノ
・スパゲティ

〈映画っぽい気分を盛り上げる小道具〉
・赤いチェックのテーブルクロス
・キャンティ(瓶の半分が藁で包まれたフィアスコが望ましい)
・2人分(またはそれ以上)のパスタを盛るための大皿
・パスタの水切り用テニス・ラケット(おすすめしませんが)

記事制作 : Avanti Press

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