【ダレコレ~Dare Collection~ vol.3】ヘタレ役でも瞳キラキラ!森岡龍はいい仕事してまっせ

コラム

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文=熊坂多恵

森岡龍

(C)2015 乾くるみ/「イニシエーション・ラブ」製作委員会

なんだか気になる、何度か見ている、あの人は一体、誰? そんなあなたの心の叫びに応える「ダレコレ~Dare Collection~」。今回は、前田敦子と松田翔太共演、甘くせつない青春ラブストーリーが、最後のどんでん返しで・・・! というつかみで話題の(筆者も見事にだまされました・・・)映画『イニシエーション・ラブ』から、27歳にしてすでにベテラン!? 監督としての顔も持つ俳優・森岡龍をご紹介します。

こう書くと、性格俳優にありがちな個性的な容貌や、特異な存在感などを想像する方もいるかもしれないが、森岡龍の外見はヒジョーに爽やか。少年マンガの主人公のようなクリッとした目の童顔、好青年である。『イニシエーション・ラブ』には、物語のきっかけとなる1本の電話をかけた男、軽いノリが売りの大学生・望月という役で登場。この電話がきっかけで、主人公のデブでさえない大学生の鈴木は、前田敦子演じる“激マブ”、現代風にいえば超かわいい、歯科助手の繭子と合コンで出会うことになる。

『イニシエーション・ラブ』

(C)2015 乾くるみ/「イニシエーション・ラブ」製作委員会

舞台は80年代の静岡と東京。当時の事物や音楽などが、見る者を懐かしくもくすぐったい気持ちにさせるのだが、その80年代の“陽”の部分を体現しているのが、この望月という役。最初の合コンのシーンでは、いわゆる80年代の、いま見るとかなりイタいファッションの男子たちのなか、森岡だけはブリティッシュ風なスーツとおでこを出したトラッドな髪型が、今現在の2000年代の合コンにそのまま来てもまったく違和感なし! ウェルカムな感じだ。そして、前田敦子(ではなく演じる繭子ね)が小首をかしげて、「歯科助手で~す」とブリっ子風(80年代の遺物ともいえる死語)に自己紹介するや、「じゃあ、白衣とか着てるの?」と、エロというよりその場を盛り上げるためのような返しをするなど、わかってらっしゃる幹事ブリに萌える。

その後も、みんなで海に遊びに行けば、サーフパンツ風の古いんだか新しいんだかわからない水着姿(笑)。そこに麦わら帽子をかぶり、波止場で待ってる裕次郎(石原)風なポーズでキメてみたり。テニス合コンでは、皇族か!?  と思うようなエレガントなテニスファッションで(これまたよく似合う)、審判役をかってでるなど、つねに白い歯がキラーンと輝くような、“爽やか”のアイコンのような存在に徹している。本作の監督である堤幸彦といえば、テレビドラマから映画までも人気作となった「TRICK」シリーズ、「SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~」シリーズなどを見てもわかるとおりの小ネタ好き。意味不明なふざけたものを作品に散りばめるのが大好きで、今回の森岡演じる望月も、もしや監督の小ネタのひとつ!? と深読みしてしまう。その監督のこだわりをパーフェクトに体現する森岡の振りきれ感、テクニックとセンスにうならされる。

『イニシエーション・ラブ』

(C)2015 乾くるみ/「イニシエーション・ラブ」製作委員会

そんな森岡のデビュー作は、2004年の映画『茶の味』。その後も『ナイスの森』(06)など、石井克人監督作品に次々と出演しているが、実はもう一人、森岡をお気に入りキャストとする“石井”がいる。『舟を編む』(13)の石井裕也監督だ。森岡はそのほとんどの作品に出演。『君と歩こう』(10)では、自殺してしまった親の後を追い、死のうとしたところ、女性教師に駆け落ちを強要される超貧乏高校生・・・というシュールな役回り。にもかかわらず、悲壮感ナシ、とにかく地味で不器用、でも一生懸命な男子高生の役を笑っちゃうほど情けなく演じてみせた。美人教師との二人暮らしでもまったくエロに流れず、そのヘタレぶりときたら、実は普通にイケメンであることも忘れるほど。もちろん、その後の彼の成長を描くためにヘタレ部分をきっちり演じていたわけなのだが、みうらじゅんの半自伝小説が原作の映画『色即ぜねれいしょん』(09)で演じていた気弱な高校生ぶりもハマっていた。ヘタレ専門というわけではないが(笑)、普通の役、かっこよくはない役をリアリティとギリギリの好感度を保って演じるのは難しい。彼の役者としての魅力は、自分を捨てて役になりきれる、監督の望むものをさしだせる、という所にあるのかもしれない

こうして二人の“石井”に愛されるほか、これまで実にたくさんの映画に出演してきた森岡。今年も公開待機作に、多部未華子、綾野剛主演の『ピース オブ ケイク』(9月5日公開予定)、いま話題の空手美女・武田梨奈主演の『かぐらめ』(夏公開予定)などがあるが、このところテレビでも、目を引くことが多くなっている。TBS日曜劇場「天皇の料理番」では、佐藤健演じる破天荒な主人公の真面目な弟役、NHK土曜ドラマ「64」では、キャリア組の若きエリート、県警刑事部の捜査二課長を演じている。また、松岡修造が、一見爽やか、でもやっぱり熱血なラーメン屋役で目を引く「日清麺職人」のCMでは、ラーメンの味の変化には気づいても、妻が髪形を変えたのに気づかない鈍感な夫役で登場(やはりヘタレ!)。しかし、修造を立て、妻役の中村優子を立て、自身はそのマンガチックな世界に溶けこんで、己の存在を消しきったような見事な佇まいであった。あっぱれ。

こうしてその魅力(?)に気づいてしまうと、たとえ前に前にと出てこなくても、その存在を見逃せなくなってしまう俳優、森岡龍。

「おっ、森岡龍だ。ここでもいい仕事してるな」、なんてわかってくれちゃう人が増えるといいな、と切に思います。

『イニシエーション・ラブ』

(C)2015 乾くるみ/「イニシエーション・ラブ」製作委員会

『イニシエーション・ラブ』
5月23日(土)全国東宝系にてロードショー
配給:東宝
監督:堤幸彦
原作:乾くるみ著『イニシエーション・ラブ』(原書房/文春文庫刊)
脚本:井上テテ
出演:松田翔太、前田敦子、木村文乃

記事制作 : Avanti Press

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