【ニャンともわんダフルシネマ vol.2】縮まりそうで、縮まらない間柄。 そのツンデレが、萌えるのにゃ~

コラム

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文=島崎奈央

にゃんこジャンル:トラネコ

◆にゃんこジャンル:トラネコ

筆者を含め、猫好きは案外、猫が出ている映画にキビシい。いや、猫を大きなスクリーンで見られるのは嬉しい。嬉しいのだが、しかし、猫が出てさえすればなんでもいいというものではない。むしろ、好きゆえに、「猫はそんなことしない」「この作り手は猫の素晴らしさがわかっていない」等々、注文は細かい。

そもそも猫は勝手気まま。演出をつけることは難しいし、もっと言えば猫さまに人間の意向を汲んで演技してもらおうなんて申し訳ない、猫崇拝者にはそんな思いもある。だから、アニメやCGで描かれた、作り物の猫のほうが案外純粋に楽しめたりする。

たとえば、アメリカの人気漫画をアニメ化した『ガーフィールド ザ・ムービー』(04)。ファミリー向けコメディと侮るなかれ。なかなかに猫の真髄を捉えた秀作なのだ。本作の主人公猫のガーフィールドは、図々しくて生意気、時に利己的ですらある。犬だったら観客の共感は得られないであろうキャラクター設定、なんて猫らしいんだ! 嫌われてもおかしくない振る舞いで、むしろ人間を虜にしてしまう、おそるべき猫の力に改めて感心する。しかも、ガーフィールドの茶トラのふわふわの毛並みを3DCGで見事に映像化し、かつ、実写映像と合成しているのも、毛皮愛好家には嬉しいところ。劇中の人間たちがガーフィールドに触れるたび、嗚呼私も、という欲望が湧き上がる。

『ガーフィールド ザ・ムービー』

『ガーフィールド ザ・ムービー』
(C)2010 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

「シュレック」シリーズの脇キャラクター、プスを主人公にした冒険譚『長ぐつをはいたネコ』(11)もまた、実写映画以上に猫を猫らしく描いた一作。ところどころに現れる、プスの猫的行動に心を持って行かれる。ミルクを飲むときに立てるピチャピチャという可愛い音。うるうるとした大きな瞳。シリアスな局面でもつい反射する光と追いかけっこに興じてしまう習性。本作の猫好きへの目配せはかなり的確で心憎い。

ジブリ作品も見逃せない。 有名どころの『魔女の宅急便』(89)の黒猫ジジや『耳をすませば』(95)のバロン男爵については猫度が低いので脇に置き、代わりに推したいのは『借りぐらしのアリエッティ』(10)に登場する巨猫ニーヤだ。ニーヤが大きいというよりは、ヒロインのアリエッティが小人なのだが、いいなあ、現実にも猫があれくらい大きかったらなあと夢見た者は多いはず。高度成長期のコピーよろしく、猫については大きければ大きいほど素晴らしいのだ。

『となりのトトロ』(88)の猫バスもまた、大きな猫に身も心も任せたいという我々の願望に応えたキャラクター。4つ足どころでない数の足によって、モフモフ度を上げてくれているのも有り難い。

さて、大猫を堪能するという観点で言えば、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日間』(12)の右にでる者はいない。本作の主人公は、動物園を経営する一家の子として生まれたインド少年パイ(スラージ・シャルマ)。開巻早々、一家は動物たちとともにカナダへ移住することを決めるのだが、不幸にもその航海中に嵐に遭い、パイはあろうことか、積み荷として乗せられていたトラのリチャード・パーカーとともに一艘の救命ボートに乗って漂流することになる。

全篇にわたり、“大きな猫”の最上級と言うべきトラが出ずっぱり。目の保養とはこのことだ。ちなみに、少年とトラを同じフレームで捉えたカットのトラはフルCGだというから、それにも驚かされる。幾度見ても本物としか思えないできばえなのだ。

『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』

『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

飼育動物とはいえ、トラはトラ。いかにリチャード・パーカーの餌食にならずに生き延びるか。漂流するだけでも大変なのに、パイにとっては災難なことこの上ない。が、我々猫信者にとっては、あんな大猫とふたりで227日間を過ごすなんて、これほどまでにゾクゾクさせられる魅惑的なシチュエーションはほかにない。

唸るパーカー。威嚇するパーカー。隙あらばパイを襲おうとするパーカー。ボートの甲板で爪を研ぐパーカー。海に落ち、必死にボートに這い上がろうとするずぶ濡れのパーカー。弱り切り、パイの膝に頭を乗せて息絶え絶えとなるパーカー。トラの獣的行動に慄き、猫的な仕草にきゅんとなる。

共同生活を重ねても、パイとリチャード・パーカーの距離は縮まらない。互いの存在と扱いに慣れこそすれ、両者の間には越えられない線が厳然と引かれている。その関係性もまた、猫と人間のそれに重なるようで好ましい。漂流を通して、人智を超えた運命を描き、それを決して御せないトラになぞらえた本作。“大猫”映画の傑作だ。

『ガーフィールド ザ・ムービー』

(C)2010 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
『ガーフィールド ザ・ムービー』
ブルーレイ発売中 ¥2,381+税
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント

『ガーフィールド』作品詳細

『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』

(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
ブルーレイ発売中  ¥1,905+税
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント

『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』作品詳細

記事制作 : Avanti Press