【シネマなアレコレ vol.3】ゴージャス&チャーミングな7人のマダム明日が楽しくなるリアルファッション in NY

コラム

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文=松本典子

『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』

(c)2014 ADVANCED STYLE THE DOCUMENTARY LLC. All Rights Reserved.

将来、こんなふうになれたら人生ますます楽しいだろうな。そんな気持ちに素直になれる『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』です。ニューヨークを舞台にしたファッションドキュメンタリー映画・・・と書けばクールで尖った印象を与えてしまいそうですが、むしろ真逆。登場するおしゃれマダム7人は最年少ですら62歳、最高齢は95歳。活気に溢れていてチャーミング、かつフレンドリーな彼女たちの、こちらまで気分があがるカラフルな着こなしと飾らない名言が満載です。

『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』

オレンジのつけまつげがキュートなイロナ93歳(写真左)
エレガントなジョイス80歳(写真中央)
バリバリなキャリアウーマンのリン79歳(写真右)
(c)2014 ADVANCED STYLE THE DOCUMENTARY LLC. All Rights Reserved.

年齢を超越したおしゃれを楽しむ彼女たちですが、ここでは敢えて年齢とともにサクッと紹介していきましょう。93歳の画家、イロナはオレンジに染めたつけまつげ(しかも超ロング!)がトレードマーク。「長年フランス製を愛用していたけれど、職人が亡くなって困っちゃったの」というやむを得ない(?)理由から、なんと地毛で自作! 彼女の超カラフルな装いと、絶妙なバランスを保ち、本当によく似合ってらっしゃいます。

『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』

(c)2014 ADVANCED STYLE THE DOCUMENTARY LLC. All Rights Reserved.

67歳のデブラは、トイレットペーパーの芯で独創的なバングルを作ってしまうなどリサイクル素材も多用するチープシックおしゃれさん。「ピエロみたいな格好」ゆえに距離を置いたと語るパートナーに、「数年後に再会したとき、何回かのデートはフツーに見えるようにしたわ」という彼女。しかし、その彼が今ではギター片手に「年を重ねよう 長年の経験を活かして新しい時代を切り開く アドバンスト・スタイル 人生の上級者・・・」と歌ってくれるのですから、「男は臆病」と見極めて策を練った彼女の勝利(?)と言えそうです。

80歳のジョイスは見るからにエレガントなマダム。10代でミラノへオペラ留学、病身の夫を支えるべく40歳で雑誌社へ就職したという経歴の主。白髪をきちんと結い上げ、パールやシャネルを愛用するというノーブルなスタイルとそのストーリーが何だかとてもしっくり来ます。79歳のリンは大阪のおばちゃん的なパワフルキャラで、最愛の夫に買ってもらったブティックを40年以上にわたって経営。最高齢95歳のゼルダは、かつて社交界のファッションアイコンとして名を馳せつつアフリカ各地で木彫と織物の調査研究をするという一面も。そこで入手した布を自らデザインしたドレスや帽子に仕立てさせるというのが彼女の流儀です。

81歳のジャッキーはスレンダーボディにさまざまな装いが映えるモデル系。アポロシアターで活躍した元ダンサーです。62歳のジポラはマンハッタン内を愛車ビアンキでスイスイと移動する(おしゃれ重視でヘルメットは被らない、帽子は被る!)ブティック経営者。彼女らふたりは、映画の前身となったファッションブログ“ADVANCED STYLE”や写真集への登場をきっかけに、ランバンの2012年キャンペーン・モデルに選ばれることに。他のマダムたちもまた講演やテレビショー、ファッション広告などへの出演でさらなる活躍を開始しています。

『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』

(c)2014 ADVANCED STYLE THE DOCUMENTARY LLC. All Rights Reserved.

「年甲斐もない」とか「派手すぎじゃない?」なんて陰口叩かれかねないところを、なぜそんなにも好感を持たれてしまうのか? おそらくは彼女たち、ド派手に着飾ってはいても、そこには「虚飾」がみじんも無いからなのだと思います。流行だからと飛びつくなんて愚の骨頂、こうでなきゃという縛りとも無縁、自分にしか表現できないものを探求する、ラグジュアリーブランドが好きな人もチープシックで生きている人も、それぞれの個性を尊重する・・・そうやって人生を歩んで来ているわけですから、他人を羨んだりもしない。テレビ出演の打ち合わせで図らずも違う考え方が出てきたとき、リンに対してイロナはサラッと言うのです、「お互いに違うってステキね」。カッコイイ!

一方で、老いが怖くないわけでもない彼女たちは、死から遠くないことも重々承知している。その断片を覗かせることを映画も忘れていません。ジャッキーはほとんど目が見えていないことを伏せて来たと告白し、リンは緊急入院で死を間近に感じることに。最高齢のゼルダは映画の完成を見ること無く他界します。ジポラは、ニューヨーク・ファッションウィークのショーをフロントロー(最前列)で鑑賞中に気を失い、帰らぬ人となった彼女に、はなむけの言葉を送ります。「大好きな空間で息絶えて本望だったはずよ。オシャレして人生を楽しんでいる時に」と。

現実を見極めつつ思いのままに生きているマダムたち。彼女たちが異口同音に語る“ファッションは自己表現”という言葉にものすごい説得力があるのは、その自己表現がファッションだけに留まってはいないからこそ。ジョイスはこう語っています、「私は私らしく、自分らしく前に進むしかないわ」。

年齢を重ねて“も”魅力的。そんな捉え方は、もはや古いのかもしれません。年齢を重ねて“こそ”魅力は増す。ファッションも生き方も。ADVANCEDなSTYLEで考え方も一歩進めてみると、明日が楽しくなるってものです。

『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』
監督・撮影:リナ・プライオプライト
プロデューサー:アリ・セス・コーエン
配給:アルバトロス・フィルム

5月29日よりTOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ新宿ほかにて全国順次ロードショー
公式サイト:advancedstyle-movie.com

記事制作 : Avanti Press