ブルボンヌの新作映画批評 第1回『トゥモローランド』

コラム

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それでも明日を夢見る大人たちに、
ディズニーが贈ったバッジ

『トゥモローランド』

トゥモローランド、明日の世界。未来に夢が持てなくなったのは、いつ頃からかしら。いわゆる団塊ジュニア世代のアタシが子供の頃は、夢と希望にあふれた未来予想図が、フィクションにもニュースにも溢れてたわ。若者たちは海外に憧れ、人生の見栄のスケールも大きかった。ドリカムに罪はないけど、昔の未来予想図はブレーキランプでアイシテルとか言ってる程度のちんまりしたもんじゃなかったのよ。今じゃハリウッド大作が見せる未来社会も、貧富の差が激しかったり、無機質に統制されたディストピアばかり。現実のニュースに至っては深刻な社会問題が山積みされた、もうお手上げの汚部屋みたいになってるじゃない。

『トゥモローランド』

そんな2015年なう(全然ナウくない言い方)。まさしくこれぞ使命と言わんばかりに、ディズニー映画が、世界を包む心の暗雲を、夢と希望で蹴散らしてくれたわけ。今作のブラッド・バード監督は、初監督作品『アイアン・ジャイアント』がまだ日本公開されていない頃に、評判を聞いて輸入したDVDに号泣させられた、アタシにとって思い入れの深い方(早くから目ぇ付けてましたよアピール)。このテーマはもしや・・・と思ったらやっぱり、試写室でババアボディの貴重な水分を目から大量に放出させられちゃった。ディズニー大作らしい完璧な映像美、キレのあるアクションはもちろんのこと、アタシには何より「絶望に満ちた世界でこそ輝く希望」という宮崎駿作品にも通じる熱い魂がうれしかった。

『トゥモローランド』

ディズニーの理念やディズニーランドという舞台をきっかけに、今の世界の暗い現実からも目を背けることなく、それでいて奇想天外な冒険活劇と、地に足の付いた社会的メッセージを成り立たせている。中盤多少まったりなのは、想いが爆発するラストへの溜めってかんじかしら。主要キャラの振り分けも素晴らしかった。夢と希望の塊だった元少年、からの、諦めかけている疲れたオヤジ、ジョージ・クルーニー。そのバトンを受け取るのは、不屈のバイタリティを持つ若い女性、ブリット・ロバートソン。この構図もまさしく現実社会そのもので、今こそ女たちがより世界を守るべきだし、それには疲れひねくれてしまったオヤジを励ますことも必要なのよね。そして鍵を握るのは、人々の夢の結晶ともいうべき少女アテナ、ラフィー・キャシディ。アイアン・ジャイアントにも、『のび太と鉄人兵団』のリルルにも通じる、ダメな人間を信じようとしてくれる心。彼らが人間の悪い面もさんざん思い知りながら、それでも賭けてみたくなった希望は、まさに子どもたちの眼差しという鏡によって大人が気づかされるべき最後の良心なのよね。ああもう、アテナの聖母のような眼差しを思い出すだけで、母性ってのは産めなくても持てると信じられるわ。

『トゥモローランド』

『トゥモローランド』

この映画は、2時間10分の後は何も残らないってアトラクションじゃないの。帰りには、人生を変えるかもしれないピンバッジを胸に付けてもらえるんだから。心の中にトゥモローランドをそれぞれが作り出せる、夢と希望のお守り。アタシも心の中にどっさりいる悪い狼をみんな飢え死にさせるつもりはないけど、もう少し良い狼だって可愛がってあげなきゃな、と反省しちゃった。まぁ、あからさまに悪い魔女みたいなツラ下げて、よう言うわってかんじだけどね!

『トゥモローランド』

6月6日(土)全国公開
ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
(C)2015 Disney Enterprise,inc. All Rights Reserved.


  • burukimono

ブルボンヌ
女装パフォーマー/ライター

新宿二丁目にある『Campy! bar』をプロデュースしている他、『はみだし しゃべくりラジオ キックス』(山梨放送YBSラジオ)金曜メインパーソナリティ、『ハートネットTV』『週刊ニュース深読み』(共にNHK)、BSスカパー『チャンネル生回転TV ALLザップ』などに出演。大学特別講義の講師、企業内LGBTに関するセミナーMCも務める。


記事制作 : ブルボンヌ

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