『この国の空』二階堂ふみ・長谷川博己 インタビュー

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むさぼり合うような、ラブのないラブシーンだった

『この国の空』二階堂ふみ・長谷川博己 インタビュー

『この国の空』の予告動画

谷崎潤一郎賞受賞作の映画化作『この国の空』で、許されぬ恋に突き進む19歳のヒロインを体現した二階堂ふみと、妻子がいながらも彼女に惹(ひ)かれてゆく銀行支店長役の長谷川博己が、昭和20年を生きる男女の役づくりや撮影時の裏話を語り合った。

映画『この国の空』は8月8日より全国公開

取材・文:柴田メグミ 写真:平岩亨

終戦前夜の時代に翻弄された男女

Q:『地獄でなぜ悪い』とはまるで異なる作風や役柄での再共演となりますが、お互いの印象の変化や新たな発見はありましたか?

長谷川博己(以下、長谷川):確か1年半ぶりくらいなのかな?

二階堂ふみ(以下、二階堂):2年です。

長谷川:2年か。女優という仕事をやっていることも大きいんでしょうけど、少女の部分を残しつつもすごく大人びていて、驚きました。

二階堂:普段から仲良くさせていただいているので、やはり一緒に紡いでいける素晴らしい先輩とご一緒できたと再確認しました。

Q:尊敬できる先輩だと?

二階堂:はい。

長谷川:本当に? ありがとうございます(照)。

Q:終戦前夜という、時代に翻弄(ほんろう)された男女を演じる上で、準備したことや意識したことはありますか?

二階堂:日本語がとにかく美しい脚本だったので、言葉に重みを持たせたいと思いました。そして里子というキャラクターがそこに生きていることを見せたかったので、口調としぐさだけはとにかく作り込んでいきました。

Q:参考にした資料や映画はありますか?

二階堂:成瀬巳喜男監督や、小津安二郎監督の作品の女優さんのしゃべり方を意識しました。

長谷川:日常のドラマではありますけど、すぐ近くでは戦争が起きていて殺戮(さつりく)も行われている。その緊迫感みたいなものを僕の中で想像して、常にその極限状態にいながら言葉を発しようと心掛けていました。

Q:市毛のひげは、長谷川さんご自身のアイデアですか?

長谷川:そうですね、劇中のひげは自前です。戦時中の写真を見ていたら銀行の支店長らしき方がいて、今の同年代よりも昔のほうが少し大人びていたと思うんです。男の威厳みたいなイメージで、というのもありましたね。

『この国の空』二階堂ふみ・長谷川博己 インタビュー

二人の間にはラブはない?

Q:里子と市毛それぞれの思いについては、どのように捉えましたか?

二階堂:里子は、理屈で何か考えて行動に移すという女性ではないんです。だからこの関係についても、どちらかというと里子が主導になっていますよね。

長谷川:二人の関係は、終戦近くのあの状況下でなければ始まらなかったでしょうね。

Q:ラブシーンがとても印象的でしたが、お二人で話し合いなどをされましたか?

二階堂:ラブがないですからね、あの二人の間には。

長谷川:むさぼり合うというか、何かに渇望しているシーンというか。基本的に、僕ら役者同士で役や芝居について話し合うことはそんなになかったですね。もしかしたら意識的にそうしていた部分があったかもしれない。世間話をしつつ、スタートの声が掛かったら自然に入っていく。1カット1カット勝負していくような感じでしたね。

二階堂:わたしは今回の撮影中、なるべく一人でいるようにしていたんです。現場でもあえて距離を置いていたので、誰かと話し込むこともなかったですね。京都の撮影所へは独りで通っていました。戦争中に生きていた人たちは、きっとものすごく情報量が少なかったと思うので、狭いマインドを持って現場に集中する姿勢で臨んでいました。

長谷川:台本があって、台本のト書きにある通りの芝居をすることを前提とした上で、あとは相手がどう出てくるかをお互いに見ながら、すごく楽しんだというか、いい仕事ができたと思っています。

『この国の空』二階堂ふみ・長谷川博己 インタビュー

目でなく耳で演技を見る監督

Q:監督からはどのような注文がありましたか?

二階堂:監督は脚本家なので、やってほしいこともほしい表情も、基本的に全部脚本に答えが書いてあるんです。だから余計な説明はなかったですね。

長谷川:現場でも、カメラマンの方とどういうふうに撮るかを決めて、後は役者のセリフを耳でよく聞いている、という印象がありました。だから耳で演技を見ているような感じでした。あまり多くは語らず、「もう1回」となったときも具体的に何かを言うのではなく、役者に察してほしいのだという気がしました。

Q:今年は終戦70周年だけに戦争ドラマが多く公開されますが、戦争って嫌だと、個人的には最も反戦の思いを強くした映画でした。完成作をご覧になって、どんな感想をお持ちになりましたか?

二階堂:わたしは「反対」という言葉があまり得意じゃなくて、この作品も戦時中に生きている、生きようとしている人たちの映画であって、反戦映画とは違うかなと思います。

長谷川:文学的ないい映画に仕上がったと思いました。同時にいろいろ考えさせられるので、観る方の想像力に委ねたいですね。

二階堂:いい作品ができましたよね。人間が生きるということは、食べること、寝ること、欲すること。それがすごく素直に描かれた映画になったと思いました。


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記事制作 : シネマトゥデイ(外部サイト)