【ダレコレ~Dare Collection~ vol.7】“いたいけ感”をこれでもかと煽る タイ・シンプキンスの愛らしさ

コラム

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文=那須千里

いたいけ感を醸し出すタイ・シンプキンス

『ジュラシック・ワールド』来日記者会見時のタイ・シンプキンス

「いたいけな少年」は「無垢な少女」と並ぶ最強のカードです。このキャラクターがひとりいるだけで、どんな映画でも、困難に立ち向かって健気に頑張る子どもの成長ストーリー、またはその子どもを救うために奮闘する大人のドラマという鉄壁の大義名分を手に入れることができるのです。特にスティーヴン・スピルバーグブランドのジュブナイル作品にはこのカードがつきもの。その系譜は『E.T.』(82)のエリオット少年から脈々と受け継がれているのです。

スピルバーグが製作総指揮をつとめた『ジュラシック・ワールド』でそのポジションに抜擢されたのがタイ・シンプキンス。3歳のときにスピルバーグ監督作の『宇宙戦争』(05)で映画デビューした生え抜きです。写真を見て目を疑った方もいるかもしれません。どちらかというと童顔傾向の強かったダレコレの人選ですが、もはや子どもじゃん! とツッコミが入っても否定はできないピカピカの13歳。本作のタイ君は、夫婦仲の危うい両親の元を離れ、叔母さんの働く恐竜園にお兄ちゃんと2人きりで送り込まれます。思春期にさしかかってちょっとふてくされ気味のお兄ちゃんとは対照的に大はしゃぎのタイ君。ガラスドーム型のライド(ジャイロスフィア)に乗って草原を無邪気に走っている姿を眺めているだけでも微笑ましいですが、案の定暴走した恐竜に襲われてしまい、小さな体をはってパニックを最大限に盛り上げてくれるのです。

いたいけ感を醸し出すタイ・シンプキンス

『ジュラシック・ワールド』
(C)ILM / Universal Pictures and Amblin Entertainment

生後3週間で子役デビューを果たしたというタイ君は俳優歴=実年齢。3兄妹の末っ子でお姉ちゃんのライアンとは『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(08)の姉弟役で共演しています。すでにキャリアは13年になりますが、こぼれ落ちそうに大きな青い目に口角のキュッと上がった口元は女の子みたいで愛らしさの塊。さらにブロンド(地毛ではないようですがこのカラーリングは大正解)のウェーブヘアは長めのきのこカット風が多く、全身から醸し出される“いたいけ感”をこれでもかと煽っています。

そんなタイ君はまさに“カワイイ”のプロ。『アイアンマン3』(13)で演じたハーレーは両親に捨てられた孤独ないじめられっ子というこれ以上なく分かりやすいいたいけな設定を与えられ、ヒーローであるアイアンマンのピンチを救って活躍しますが、アイアンマンが自分の前から去ろうとすると「パパみたいに僕をひとりにするの?」とあの大きな目でうるうると見つめながら全力で情に訴えかけるのです。これぞタイ君の本気! 画面越しでも手放しでほだされそうになってしまいますが、アイアンマンがあっさり去ったあと、その口から「やっぱりダメか」という衝撃のひとことが・・・。なんと彼は確信犯だったのです。そうと分かればますますタイ君のプロフェッショナルな仕事ぶりが末恐ろしいというものです。

タイ・シンプキンス(手前)とニック・ロビンソン

タイ・シンプキンス(手前)とニック・ロビンソン
『ジュラシック・ワールド』
(C)Chuck Zlotnick / Universal Pictures and Amblin Entertainment

さらにさかのぼって『スリーデイズ』(10)でも、殺人の罪を着せられた母と彼女を脱獄させようとする父のひとり息子というハードな境遇に置かれていました。つぶらな瞳と薄い口元がどことなく父親役のラッセル・クロウと似ています。ここでは獄中の母親に代わってラッセルに育てられていますが、ミニカー、ペンギンのぬいぐるみ、風船といったありとあらゆるアイテムを、そばに置くだけで自分を愛らしく見せるための舞台装置に変えてしまう非凡な才能を見せつけていました。それがあってこそいたいけさが引き立ち、彼に母親を取り戻すという素晴らしい大義名分を犯罪計画にトッピングする重要な役目を果たしているのです。

そしてタイ君の真骨頂といえば寝顔です。何をやってもカワイイだけでなく、寝ているだけでも愛らしいなんて・・・。むしろ何もしていないからこそ素材のよさがものを言います。ベッドでひとりスヤスヤと眠るタイ君のそばにラッセルがそっと寄り添う『スリーデイズ』のワンシーンは、この絵面だけでどんな犯罪もチャラにしてしまう破壊力があります。ホラー映画『インシディアス』(10)では昏睡状態に、続編の『インシディアス 第2章』(13)でも悪霊に体を乗っ取られてしまいますが、タイ君のまつ毛の長さと目を閉じていても損なわれない愛らしさを堪能するにはピッタリです。

『ジュラシック・ワールド』ジャパン・プレミアのレッドカーペットに登場したタイ・シンプキンス

『ジュラシック・ワールド』ジャパン・プレミアのレッドカーペットに登場したタイ・シンプキンス

先日『ジュラシック・ワールド』のプロモーションで来日したときには首まわりの髪をすっきりとカットし、スーツにネクタイ姿で男の子らしい魅力もアピールしていたタイ君。これから青春時代をむかえ、誰かの息子や弟ではないひとりのティーンエイジャーとして、ジュブナイル映画の傑作でその姿を見られる日が待ち遠しいです。

『ジュラシック・ワールド』

『ジュラシック・ワールド』
8月5日(水)全国ロードショー
配給:東宝東和
監督:コリン・トレボロウ
キャラクター原案:マイケル・クライトン
出演:クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、ヴィンセント・ドノフリオ、タイ・シンプキンス、ニック・ロビンソン、オマール・シー、B・D・ウォン、イルファーン・カーン
(c)Chuck Zlotnick / Universal Pictures and Amblin Entertainment

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

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