【ニャンともわんダフルシネマ vol.5】そのモフモフに抱きつきた~い!! 懐かしい名作アニメが実写に!『ベル&セバスチャン』

コラム

  • twitter
  • facebook
  • はてなブログ
  • google+
  • LINEで送る

文=平辻哲也

『ベル&セバスチャン』
(c)2013 RADAR FILMS EPITHETE FILMS GAUMONT M6 FILMS ROHNE-ALPES CINEMA

犬に噛まれたことがある。幼稚園の年長組。「かわいい」と思って、野良犬に手を出したら、ガブリ。親が狂犬病を心配し、病院に駆け込む大騒ぎになった。こんなトラウマがありながらも、犬を見ると、モフモフした毛を触ってみたいという気持ちが先に立ってしまう。犬好きの性である。

本作の“主犬公”はアルプス山麓のフランスの小さな村で「野獣」と恐れられている野良犬。家畜の羊を襲い、村人の足もガブリとやってしまったとか。元々オオカミ対策の牧羊犬だったが、飼い主に虐待され、逃げ出したらしい。自然の厳しいアルプスで育った野良犬だから、街中の野良犬よりはるかに手強い。

『ベル&セバスチャン』
(c)2013 RADAR FILMS EPITHETE FILMS GAUMONT M6 FILMS ROHNE-ALPES CINEMA

もう一人の主人公は、少しエキゾチックな容貌の孤児セバスチャン。偶然、見かけた野獣を探しにわざわざ出かけていく。親代わりのおじいさんは「虐待を受けた犬は手なづけたと思っても必ず問題を起こす」といって説得するが、セバスチャンは諦めない。

野獣はどんなに恐ろしいやつなのか?スティーヴン・キングの原作で映画にもなった『クジョー』(84)を想像してしまう。クジョーは狂犬病にかかった超大型犬のセント・バーナードだった。

『ベル&セバスチャン』
(c)2013 RADAR FILMS EPITHETE FILMS GAUMONT M6 FILMS ROHNE-ALPES CINEMA

本作の野獣の正体は、フランス原産の「グレート・ピレニーズ」。別名「ピレニアン・マウンテン・ドッグ」。スペイン・ピレネー山脈など欧州の山岳地帯で牧羊や警備用に飼われた。セント・バーナードと同じ超大型犬で、毛が長いため、より大きく見える。体重100ポンドはあるだろう。

『ベル&セバスチャン』
(c)2013 RADAR FILMS EPITHETE FILMS GAUMONT M6 FILMS ROHNE-ALPES CINEMA

中世にはルイ14世によって、「フランス王室犬」にもなった由緒正しい犬種だが、野山を駆け巡っているせいで、全身が灰色に汚れている。最初はちっとも可愛く見えないのだが、セバスチャン少年と川に入って汚れが落ちると、真っ白でモフモフな姿が登場。水浴び後、全身を震わせて水を弾き飛ばすシーンは、ストップモーション!水着姿の美女が濡れた長い髪を手櫛するかのようなカットだ。この監督、犬好きの心を分かっていらっしゃる。

「男前になった」と喜ぶセバスチャン少年だが、メスだと分かり、「ベル」と名付ける。同じくフランス発の寓話「美女と野獣」のヒロインの名前が由来。「ベル」はフランス語で「美しい」という意味だ。名を呼ぶことで親密度がより増していく。

『ベル&セバスチャン』
(c)2013 RADAR FILMS EPITHETE FILMS GAUMONT M6 FILMS ROHNE-ALPES CINEMA

学校に通っていないセバスチャンにとって、ベルは唯一の友だち。山を一緒に駆け巡り、カモシカを見かけたり、素手で釣りをしたり・・・。 目下、現代の都会では「ドッグラン」が大流行だが、映画の舞台は雄大なアルプスである。そのスケール感は比べようもない。ああ、気持ち良いだろうな。

その極めつけは、昼寝。ベルのモフモフの毛の上にセバスチャン少年は顔を埋める。犬と楽しく遊ぶのもいいけど、疲れ果てて、ゴロン。愛犬家にとって、至上の喜びだろう。うらやましい。

『ベル&セバスチャン』
(c)2013 RADAR FILMS EPITHETE FILMS GAUMONT M6 FILMS ROHNE-ALPES CINEMA

ところで、ガブリ事件から10年後、初めて犬を飼った。「シェットランドシープドッグ」という毛の長い中型犬だ。「名犬ラッシー」で有名なコリーをひと回り小さくした牧羊犬である。しかし、添い寝ゴロンはできなかった。既に高校生となっていた私の全体重を委ねるには小さかったのだ。

時代設定は違うが、NHKでアニメ化された「名犬ジョリィ」(81~82年放送)を彷彿させる。アニメでは、少年がジョリィにまたがって登場していたっけ。「名犬ジョリィ」の原作は1965年に発表された仏作家セシル・オーブリーのベストセラー児童文学「アルプスの村の犬と少年」。その原題こそが、映画のタイトルになっている「ベル&セバスチャン」なのだという。

映画は2013年のクリスマスシーズンにフランスで公開され、300万人以上を動員する大ヒット。今年の年末には続編の公開も予定されているそうだ。

『ベル&セバスチャン』

(c)2013 RADAR FILMS EPITHETE FILMS GAUMONT M6 FILMS ROHNE-ALPES CINEMA

『ベル&セバスチャン』
9月19日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
(c)2013 RADAR FILMS EPITHETE FILMS GAUMONT M6 FILMS ROHNE-ALPES CINEMA

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)