男性版『マイ・フェア・レディ』!?  紳士はマナーで作られる

コラム

  • twitter
  • facebook
  • はてなブログ
  • google+
  • LINEで送る

文=マダムアヤコ(石津文子)

男性版『マイ・フェア・レディ』!?  紳士はマナーで作られる
(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation

まだまだお暑い中、ごめんあそばせ。マダムアヤコでございますわ。
こうも暑いと、いくらマダムでもベローンとか、ダラーンとかしたくなっちゃうわねえ。でも、いつでもどこでも涼しい顔でいるのが紳士と淑女というもの。そのお手本が、映画『キングスマン』のコリン・ファースだわね。英国紳士の鏡、とばかりに仕立ての良いスーツで表情を変えずにアクションをしまくるという、格好良さ!

また英国ものかよ、と突っ込まれちゃいそうだけど、英国映画もドラマもこのところ勢いがすごくあって面白いものが多いんだから仕方ないわね。やっぱり、ユーモアといいファッションといい、大人がハンサムに生きるための秘訣がいっぱい詰まっているし、きっちり演技の勉強をした才能のある役者たちがいっぱいいるし。中でも英国紳士とはかくあるべき! を演じるのにコリンほどぴったりの人はいないわね。実際に『英国王のスピーチ』では、英国紳士の頂点ともいえるジョージ6世(今のエリザベス女王の父)を演じていたけど、今回は単なるお行儀のよい紳士というわけじゃないのよ。

男性版『マイ・フェア・レディ』!?  紳士はマナーで作られる
(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation

コリンが演じるハリー・ハートは、高級紳士服店が並ぶロンドンのサヴィルロウの中でも、特に敷居の高いテーラー、キングスマンの職人。しかしそれは表の顔。キングスマンの実態はどの国にも属さない世界最強のスパイ機関であり、ハリーはその幹部というわけ。もう、この秘密組織キングスマンの設定からして、いかにも紳士とスパイ映画の国イギリスらしい洒落っ気ぶり。紳士服店の試着室が本部行きシャトルにつながるエレベーターだったり、エージェントのことをジェントルマンと呼んだり、ハリーがいつも持ち歩いているコウモリ傘や、黒縁メガネ、革靴という英国紳士の三種の神器がガジェット満載だったり。涼しい顔で、敵を倒しまくるのが、楽しい、楽しい。

男性版『マイ・フェア・レディ』!?  紳士はマナーで作られる
(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation

『キングスマン』は、007をはじめ数々のスパイ映画を下敷きにしたアクション・コメディではあるんだけど、ハリーのモットーである「マナーが人を作る」のとおり、彼がスカウトした下町育ちのストリート・キッドのエグジー(タロン・エガートン)を立派な紳士かつスパイに育て上げる、男性版『マイ・フェア・レディ』でもあるのが、さらに面白いのよ。スーツの着こなし方、話し方から、危機管理まで、エグジーが様々なレッスンを受けて、身につけてしていく姿が楽しいので、「英国紳士&スパイの作り方」というサブタイトルをつけてもいいくらい。キングスマンのエージェントには、紳士、淑女であることが求められ、実際にエグジー以外の候補生は良家の息子や娘ばかりだし、本部があるのは「ダウントン・アビー」みたいなマナーハウスだったり。ちなみにコリン・ファースは来年、ブロードウェイで『マイ・フェア・レディ』のヒギンズ教授を演じる予定。これ以上ない、キャスティングだわね。

男性版『マイ・フェア・レディ』!?  紳士はマナーで作られる
(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation

この映画のアイデアの元は、ショーン・コネリーが『007/ドクター・ノオ』でボンド役に抜擢された際のエピソードだそうよ。スコットランドのワーキングクラス出身のコネリーより、もっと紳士らしい俳優を望んだ原作者イアン・フレミング(彼のイチ押しは、従弟のデイヴィッド・ニーヴンだったらしい)の反対を押し切った監督テレンス・ヤングは、コネリーを高級紳士服店やいきつけのレストランに連れていき、徹底的に英国紳士のマナーを叩き込んだんですって。なるほど、という感じね。マナーが人を作る、とはさもありなん。

他にも、キングスマンのトップ、アーサー役の名優マイケル・ケインが、自身の出世作『国際諜報局』(65)で演じていたのが、ハリー・パーマーという黒縁メガネの敏腕スパイで、これが『キングスマン』の元ネタの一つ。ハリー・パーマーは高級品好きのジェームズ・ボンドなんかと違って、庶民派スパイだったけど。

キングスマンのメンバーには円卓の騎士の名前であるガラハッド、ランスロット、マーリンなどアーサー王伝説にまつわるコードネームがつけられているのも、いかにも英国っぽいでしょ。さらにコリン・ファースの表の顔がテーラー=仕立て屋という設定は、『裏切りのサーカス』(11)でコリンが演じたスパイのコードネームがテーラーだったことのパロディだったり。キングスマンのコワモテ教官マーリンを演じるマーク・ストロングも、『裏切りのサーカス』でコリンと共演していたわね。まあ、『キングスマン』にはBL要素はないんだけど。

ちなみに英国好きとしては、邦題の表記『キングスマン』に若干違和感があるのが(コリンたちははっきりキングズマンと濁って発音)残念っちゃあ、残念だわね。

男性版『マイ・フェア・レディ』!?  紳士はマナーで作られる
(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation

ハリーに導かれるエグジーを演じるタロン・エガートンは、これが映画デビューの新人。ヤンチャに見えて、ちゃーんと紳士らしくなっていくエグジーの成長を見事に演じた彼は、名門英国王立演劇学校を卒業してすぐ、オーディションで大抜擢された25歳。すでにヒュー・ジャックマンや、トム・ハーディとの共演作も決まっていて、英国では舞台でも活躍しているというから、将来が楽しみ。コメディ・センスがあるのも、さすが英国俳優ね。一見、小柄に見えるけどこれはコリン・ファースが187cmの長身なためで、タロンも178cmあるんですって。本人もかわいい子犬っぽいけど、映画の中でも子犬を飼っている設定。この子が、またかわいいのよ。

監督のマシュー・ヴォーンは、『キック・アス』(10)や『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(11)など、ハリウッドでもヒット作を連発しているけど、ロンドン生まれの英国人。『キングスマン』は彼が盟友マーク・ミラーと手がけた同名のコミックが原作。まるでバレエのように華麗かつド派手なアクションや、サミュエル・L・ジャクソンの笑える悪役ぶり、そしてトンでもびっくりな結末など、他にも見所は満載なので、ぜひともギネスビールかシャンパン(どちらも映画に出てくるので公開時には是非劇場で売ってほしいわ)を片手に、ご覧あそばせ。

男性版『マイ・フェア・レディ』!?  紳士はマナーで作られる

『キングスマン』
9月11日(金) 全国ロードショー
原作:マーク・ミラー
監督:マシュー・ヴォーン
出演:コリン・ファース、マイケル・ケイン、サミュエル・L・ジャクソン、タロン・エガートン、マーク・ストロング、マーク・ハミル
配給:KADOKAWA
R+15
(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation
公式サイト:kingsman-movie.jp

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)