米映画ファンが直面する映画館セキュリティとチケット代値上げのバランス

コラム

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米映画ファンが直面する映画館セキュリティとチケット代値上げのバランス-01

最も身近で最も充実した娯楽である映画鑑賞への入り口(イメージ)

米国が誇る、最も身近で最も充実した娯楽である映画鑑賞。映画館は、ひとりでふらりと立ち寄れるオアシス、デートの目的地の定番、時間的&経済的に切りつめたい家族のお手軽リゾートとして、誰もが警戒心なく足を踏み入れられるべき聖地でもある。

そんな娯楽の聖地で、今夏に2件続けて暴力事件が発生し、映画館のセキュリティ問題が再燃している。7月23日にはルイジアナ州ラファイエットの映画館で、ジャド・アパトー監督による新作コメディ“Trainwreck”の上映中に銃乱射事件が起き、2人の観客と犯人の計3人が命を落とした。8月5日にはテネシー州マッシュビルで、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を上映中の映画館に武装した男が侵入。観客に大きな被害はなかったものの、犯人が警察に射殺された。

 

米映画ファンが直面する映画館セキュリティとチケット代値上げのバランス-02

本来は警戒することなく訪れることができる映画館(イメージ)

米国で映画館のセキュリティ問題が大きく取り上げられたのは、今からちょうど3年前のこと。コロラド州オーロラのショッピングモール内にある映画館で銃が乱射され、12人が命を落とした悲劇の後だ。このときに上映されていたバットマン・シリーズの新作『ダークナイト ライジング』の配給元が海外プレミアを中止、ハリウッドの各スタジオが興行成績の発表を控え、銃描写のあるテレビ番組の放送が延期されるなど、エンタテインメント界はもちろん、全米が喪に服した。

3年前の悲劇を記憶に甦らせる今夏の事件を受け、米映画館はセキュリティを強化する必要に迫られている。武装警備員の配置、金属探知機、荷物チェック、身体スキャンなど、様々な手段があるが、これらを実現するためには、数十万ドルの費用がかかることとなり、観客が払うチケット代の値上げが避けられない。消費者リサーチ会社「C4」の調査によれば、調査対象500人のうち、48%が1ドル、23%が2ドルの値上げを受け入れると答えているが、このレベルの値上げでは費用はまかなえないという。

 この消費者感情とニーズのズレについて、同社の担当者は語る。「人々は空港やコンサート会場では、セキュリティに対価を払うことに慣れていますが、そこは飛行機代500ドルという世界。10ドルの映画チケットに3ドル上乗せするというのは、やはり抵抗があるものなのです」。

費用の問題だけではなく、劇場側の運営方法の抜本的な見直し、観客の意識改革も必要となってくる。デジタル配信やホームエンタテインメント設備の充実により、観客離れを防ぐために奮闘している劇場側にとっては大きな課題である。観客の側でも、映画館に夜中、パジャマ同然でふらりと立ち寄ったり、子どもを連れて無防備に出かけたりすることを、控えるように考えた人も少なくないのではないか。

一方で、C4の調査では、これら暴力事件の影響で映画館から足が遠のくと答えた人は、9%のみ。多くの人々は、暴力に屈せず、映画館での娯楽を楽しむ気持ちでいるようだ。こうした消費者感情が、チケット代値上げとセキュリティ強化のバランスのなかでどのように変化していくのか。見ず知らずの人と肩を並べ、同じ時間と感動、笑いを共有するシネマの醍醐味。その存続のための議論は続きそうだ。

LA記者:町田雪

photo by Yuki Machida

記事制作 : The WOWOW Times(外部サイト)