ブルボンヌの新作映画批評 第7回『ヴィジット』

コラム

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孫に見せちゃいけない映画No.1
最恐ババアに震えて笑え!

ヴィジット(Visit)

アタシ、M・ナイト・シャマラン監督が大好きなんです~。世間的には20代で『シックス・センス』を撮った天才、でもその後はトンデモなオチ連発の微妙な作風、みたいに思われてるんだけど、いやいや、あのヘンテコさこそ、ハマると病みつきになる深い味なのよ。正直、ウィル・スミス親子の言いなりになったっぽい前作『アフター・アース』は、その旨味が消えててガッカリだったけど、今作『ヴィジット』は小粒ながらシャマラン風味がまた復活してましたわ!やっぱり、シャマランたまらん~(言いたいだけ)。

「まだ会ったことのないおじいちゃん、おばあちゃんの田舎の家に、孫二人だけで泊まりに行こう!」、なんて微笑ましいプチ冒険設定が、まさかの恐怖体験に。いきなり初日から、おばあちゃまのゲロ噴射とすばしこい徘徊が始まって、一週間の同居生活は、テラスハウスなんか目じゃない衝撃の展開となるのでした。一体誰と誰がくっつくのかしら…(くっつかない)。

映画監督志望のお姉ちゃんの手持ちカメラの映像はいわゆるPOV=主観ショットというやつで、このジャンルを流行らせた『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』が16年前の作品ってことを考えると、今さら感は否めないわよね。アタシもこの16年の間に何本のPOVホラーとPOVアダルトビデオを観たことか…(アダルト余計)。もともとのシャマランのカメラワーク自体が、妙な画角や生々しい空気感を持ってたから、POVになるとそこがワヤになるかんじも。でも、だからこそマニア以外にも分かりやすいサスペンスになってるとも言える。個人的にはこの手持ちカメラのおかげで実現したババア最恐ショットがあっただけで満足よ。あのシーンは死ぬほど驚いたわ。試写室前方で、子猫のような叫び声を上げてホントに空中に飛び上がってた小太りのオタク兄さんが忘れらないもの…。

ヴィジット(Visit)

そして『サイン』で「気づき」を、『レディ・イン・ザ・ウォーター』で「物語」を、『ハプニング』で「つながり」を表現したように、シャマランは宇宙人や怪物や超常現象を表面的なネタにしつつ、マイノリティ目線からの熱いメッセージこそを伝えたい監督。そのせいで宇宙人や怪物がびっくりするほどチャチくて叩かれたりもするわけです。そういう意味では、今作も現代の失われつつある「家族」がテーマって面もある。確かに、おじいちゃんおばあちゃんが共に暮らす家族から、たまに会えるレアキャラになっていく距離感の行きつくところに、「得体の知れない怖さ」があるという指摘はおもしろい。久しぶりに祖父母に会う前の孫にこの映画を見せたら、行きたくないって泣きだしそうだもんねぇ。本当のおばあちゃんは基本よつんばいで追っかけてこないから安心してお孫さん!

そしてここまで、映画の怖さを強調してきましたが、実は、シャマラン史上一番笑える作品にもなっております。ぶっちゃけ、コメディにおいて変なババアってのは鉄板キャラなわけで、今作のおばあちゃまにも、座席から飛び上がるほどの恐怖と、劇中ニヤニヤしっぱなしなツボる笑いの両方をいただきました。このジジババ×子どもを使った恐怖と笑いのマーブル感は同じく敬愛するクリエイターの楳図かずお先生に通じる作風ね。ゲロ・爪とぎ・全裸・よつんばい・電波トーク、と奇行総なめなババア役(ディアナ・デュナガン)に助演女優賞をあげたい!

疎遠になっていく家族や、老いの問題という社会的なメッセージもチラチラ見せつつ、分かりやすい設定とPOV演出で一般的な間口もあるので、よくできたB級スリラーとしてオススメ。この勢いで、ジェームズ・マカボイ主演の監督次回作にも期待しましょ!

映画「ヴィジット」(Visit)シャラマン監督とブルボンヌ
憧れのシャマラン監督にインタビューさせていただいた際に、「宇宙人役でも幽霊ババア役でもなんでもやります!」と国際派女優狙いで売り込んだアタシ。いまだに何のオファーもないわ…。

『ヴィジット』

(原題『The Visit』)
10月23日(金)TOHOシネマズ みゆき座ほか全国公開
配給:東宝東和
(C) Universal Pictures.


  • burukimono

ブルボンヌ
女装パフォーマー/ライター

新宿二丁目にある『Campy! bar』をプロデュースしている他、『はみだし しゃべくりラジオ キックス』(山梨放送YBSラジオ)金曜メインパーソナリティ、『ハートネットTV』『週刊ニュース深読み』(共にNHK)、BSスカパー『チャンネル生回転TV ALLザップ』などに出演。大学特別講義の講師、企業内LGBTに関するセミナーMCも務める。


記事制作 : ブルボンヌ

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