文=松本典子

『ザ・トゥルー・コスト』
©TRUECOSTMOVIE

毎日着ている服が、一体どこからやって来るのか? を考えたことなどなくても、例えば、ファストファッションのショップでお気に入りアイテムを見つけて「ウソでしょ! そんな安くてダイジョブなの?」とニヤニヤした経験は大抵の方にあるのではないでしょうか。もちろん、いそいそとレジへ向かうわけです。

『ザ・トゥルー・コスト』
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が、しかし。嬉しい超低価格、どこかでしわ寄せが無かったらいいけれど……という懸念も、薄っすらと感じてはいませんでしたか? そこんとこ本当はどうなっているのか、という疑問について我々の代わりに探ってみてくれたのがアンドリュー・モーガン監督の『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』。 2013年4月。バングラディシュの首都ダッカ近郊で、8階建ての縫製工場ビル「ラナ・プラザ」が倒壊して1100人以上もの死者が出たことを知ったことが、この作品を製作するきっかけとなったそうです。

『ザ・トゥルー・コスト』
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世界中で生産されている衣類は年間約800億枚、これは20年前の400%以上とのこと。また、1960年代には95%の衣服が国内生産されていたアメリカでは、今や97%が発展途上国での生産に頼っているといいます。世界中の労働者のうち6人にひとりがファッション業界に従事していると言えば、なんだかキラキラと華やかに聞こえますが、日給2〜3ドル(!)で長時間労働する発展途上国の縫製従事者もドーンと含まれていることをお忘れなく。前述の惨劇も、400万人もの縫製労働者が超低賃金を強いられているバングラディシュで起こったわけです。にも関わらず翌2014年、ファッション産業の利益は史上最高額へ。なんだか世の中おかしくないですかね? とモーガン監督の取材は続きます。

『ザ・トゥルー・コスト』
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“ファッションが世界に与える影響”は、アンフェアなトレードによってほとんど無視されている縫製従事者たちの人権はもちろんのこと、原料となるコットン栽培での農薬や皮革加工での薬品などによって地球環境にも及んでいると映画は指摘してます。さらに、ふんだんに使い捨てられる衣服が今やゴミ問題の元凶のひとつとなっている事実も。「捨ててないわよ、寄付してるもの」という意見もあるでしょうが、寄付された衣類のうちで売り物になりうるのは約10%と言いますから、寄付すりゃいいってもんでもないようです。

ファッションを楽しむというハッピーこの上ない行為によって、地球上の誰かやどこかが傷つけられていると知ればそれはもう無邪気ではいられない(明と暗が交互に映し出されると、そこには映像ならではの説得力が)。実際には生じているにも関わらずカウントされていない負担や犠牲——“本当のコスト(ザ・トゥルー・コスト)”が無視されているからこそ、このワンピもあのスカートもお財布に相談する必要もない価格なのだと気づいたとき、私たちはどうすればいいのでしょうか? 例えば、ステラ・マッカートニーは本作の中で「顧客は自分の権限に気づくべきです。顧客あってのビジネスですから」と語っています。「ピープル・ツリー」や「パタゴニア」は、人道的にも環境的にも配慮する先駆的ブランドとして登場、(ファストファッションとは対極にある)エシカルファッションの可能性を見せてくれます。 あなたはこれから、どんな服をどんなふうに選んでファッションを楽しみますか? 

『ザ・トゥルー・コスト』
ファッション産業の今と、向かうべき未来を描き出すドキュメンタリー『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』
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『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』11月14日(土)より渋谷アップリンクにてロードショー、ほか全国順次公開予定
監督:アンドリュー・モーガン
プロデューサー:マイケル・ロス
製作総指揮:リヴィア・ファース、ルーシー・シーゲル
出演:サフィア・ミニー(ピープル・ツリー)、ステラ・マッカートニー、リック・リッジウェイ(パタゴニア)ほか
配給:ユナイテッドピープル
公式サイト: unitedpeople.jp/truecost/