007もSWも超える?! 『ガルパン』恐るべし!!

コラム

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文=平辻哲也

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11月21日に公開され、3週目を迎えた水島努監督のアニメ『ガールズ&パンツァー 劇場版』(以下『ガルパン』)が東京・立川のシネコン「立川シネマシティ」で週を追うごとに動員を伸ばし、記録的な動員となっている。同館は高機能サブウーファーを導入した「極上爆音上映」を掲げる名物映画館で、本作では映画の音響チームが音の調整したことが話題になり、ガルパンの聖地化。週末は3日前から「全5回中4回」(12月12日土曜日)が予約で満席になるというフィーバーぶりだ。

極上爆音上映の仕掛人である遠山武志企画室室長(40)も「公開週から3割ずつ落ちていくのが普通なのですが、逆に増えています」と驚きの声を上げている。全国興収1位のスタートを切った『007 スペクター』も凌ぐ勢いで、18日公開予定の『スター・ウォーズ フォースの覚醒』の動員も超えるかも?

「ガールズ&パンツァー」は2012年から2013年にかけて、深夜にテレビ放送された全12話のアニメ。戦車を使った武道である「戦車道」が華道や茶道と並び大和撫子のたしなみとされている世界観を背景に、その流派の家元の次女である女子高生ヒロインが学校の存続をかけて、戦車道で戦うというストーリー。舞台となっている茨城県東茨城郡大洗町が町を挙げて全面協力するなどさまざまなコラボやメディアミックスを展開。パンツァー、ティーガーなど第二次大戦時の人気戦車をリアルな映像表現で蘇らせたことで、ミリタリーファンも巻き込み、ブームに。劇場版は11月21日に全国77スクリーンで公開され、週末の動員1位、興収2位を記録した。

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(C)GIRLS und PANZER Film Projekt

熱狂的なファンが多い人気作なだけに、公開初週が好調というのは納得だ。しかし、立川シネマシティの極上爆音上映はそれだけでは終わらなかった。「1週より2週目。2週目より3週目と増えています。週替わりの入場者プレゼントの効果もあったとは思いますが、予定枚数を超えても予約が入っています。ネット予約が殺到して、一時、繋がりにくい状態となり、お客さんにご迷惑をかけてしまいました」と遠山氏。同館では全国の映画館同様、1カ月前から『スター・ウォーズ』の18~20日(全7回分)の先行予約も受け付けているが、こちらはわずかながら空席もあり、『ガルパン』の週末の予約数に軍配が上がる。

客層は95%が男性。20代後半から30代が6割程度で、40~50代、10代と続く。女性にウケる作品がヒットするといわれる映画界にあって、特殊なケースだ。筆者が見た回も20代の男性3人組が並んで鑑賞する姿も見られた。スタジオジブリなどのアニメスタジオが多く点在する中央線沿線にある立川はアニメ映画に強い地域だが、『ガルパン』はその商圏をはるかに超える遠方から来館している。中には、アニメファンが集まる「コミックマーケット」(12月29~31日、東京ビッグサイト)に併せて、来館を予定しているポーランド人もいるそうだ。

今回は岩浪美和音響監督ら音響チームが自ら調整したいとの申し出があり、スペシャルな形での極上爆音上映が決まった。元々、音作りにはこだわっていた『ガルパン』チーム。ソフト化に際しては、『大地震』(74年)の際に採用された音響システム「センサラウンド」をもじって、「センシャラウンド」と表現していたが、さらなる進化系の「センシャラウンドファイナル」と命名する出来栄えの音響に仕上げた。

岩浪音響監督もツイッターで「飛び交う砲弾! 全身で感じる重低音!『ガールズ&パンツァー 劇場版』を立川シネマシティのライブ感あふれるアトラクション感覚の極上爆音上映『センシャラウンドファイナル』(勝手に命名w)でぜひ体感してください!」とツイート。予約状況には「スッゲー!」と驚き、「作品に最適な映像と音響をお客様に届けるというシネマシティさんの姿勢が、ご覧になった皆様に評価を頂き動員につながった事嬉しく思っております。祈ロングラン!」(12月5日付)と記している。

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(C)GIRLS und PANZER Film Projekt

大手チェーンではない独立系のシネマシティが目指すのは、“画一的なファミレス”ではなく、職人が調理する“街のおいしい洋食屋さん”のような映画館。スピーカーなどの音響機材は映画用ではなく、コンサートなどで使われるPA用。それを、音響の専門家が微調整をして、作品にベストな音作りを目指している。 「映画1本1本を、その作品に最適な音に、音響家に依頼して調整してもらうという手法です。ですので、ドルビーアトモスやIMAXなど音響のシステムはいろいろありますが、私たちの“極音”“極爆”は規格や設備ではなく、あえていえば『映画ファンに最高の音響クオリティで届けたい』という“心意気”の名称です」(遠山氏)

筆者も『007 スペクター』と『ガルパン』の2本で極爆上映を体感してきた。専用シアターは2館あるが、いずれも「meyer sound 1100-LFC」設置のa studio。同館のホームページによれば、輪郭のはっきりした、キレが良く、速度の速い低音が特徴だという。爆音というと、単に音が馬鹿でかいというふうにも聴こえるが、そうではない。音量は通常より大きいが、歪みはなく、耳障りでもない。ドルビーアトモスのように細やかな音もクリアで、映画の世界観にしっかりひたることができる。

しかし、その真価が発揮されるのは、爆発や衝撃音。爆発シーンでは重低音が響き、音波で椅子がズシンと揺れ、思わず声を出したくなるほどだ。スクリーン下に縦置きされている2台のサブウーファーの震動で、近くの取り外し式の階段が数十センチ以上、動くほどの大迫力なのだ。「スペクター」もさることながら、轟砲、爆破、激突……と戦車バトルがふんだんにある『ガルパン』はより極爆上映向きの作品に思えた。

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サブウーファーの横に立つ遠山武志企画室室長

立川シネマシティは94年にオープンした都内初のシネコン。当初からジョージ・ルーカスが提唱した音響「THX」の認定を受けるなど音にこだわり続けてきた。マイケル・ジャクソンのライブを収めた「THIS IS IT」(09年)ではライブハウスのような音響を売りにして大ヒット。ハリウッド版『GODZILLA』(14年)から高機能サブウーファーをレンタルで導入。「極上爆音上映」と銘打ち、成功を収めてきた。今年6月公開の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ではさらなる高機能サブウーファー「meyer sound 1100-LFC」を数百万円投じて購入。これが功を奏して、12週のロングランヒットとなった

遠山氏によれば、極爆上映が成功するための条件は (1)作品自体のクオリティが高いこと (2)人間ドラマの割合が少なく、音楽場面やアクションシーンが連なっていく構成であること、という。

「この条件を満たす作品とは『繰り返し見たくなる』『リピート鑑賞に耐える』作品であり、1度は近隣で見ているのに、遠方からもう1度見るために足を運んでくださったり、何回も何回も見てくださる方が続出することに『極爆』の成功があるんです」と遠山氏。『マッドマックス』や『ガルパン』はこの条件にピッタリはまるのだという。『マッドマックス』でも北は北海道から南は沖縄まで全国からファンを集め、中には何十回見たという人もいたという。

12月18日からは正月映画最大の話題作『スター・ウォーズ フォースの覚醒』の極上爆音上映も始まり、『ガルパン』の上映の回数が減ってしまう可能性もあるが、「要望がある限り、長く続けていきたいです」と遠山氏は話す。都心部や近隣では上映回数は減っていることから、逆に立川シネマシティに流れる可能性もある。このままの好調ぶりが続けば、あの『スター・ウォーズ』の動員を上回ることも夢ではない?!

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『ガールズ&パンツァー 劇場版』
監督:水島 努
脚本:吉田玲子
キャラクター原案:島田フミカネ
キャラクターデザイン・総作画監督:杉本 功
音響監督:岩浪美和
音響効果:小山恭生

(C)GIRLS und PANZER Film Projekt

記事制作 : 記事提供元 : Avanti Press(外部サイト)