『はなちゃんのみそ汁』広末涼子インタビュー

インタビュー

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たまたま命と向き合う母の役が続いている

『はなちゃんのみそ汁』広末涼子

大きな感動を巻き起こしたベストセラーエッセイ『はなちゃんのみそ汁』の映画化で、ガンと闘う母親を演じた広末涼子。実際にも母親である彼女が、命と向き合う作品で伝えたかったものとは?

映画『はなちゃんのみそ汁』は12月19日よりテアトル新宿&福岡県内先行公開 2016年1月9日より全国拡大公開

泣くは笑うは忙しい物語

Q:この作品のオファーは快諾なさったと伺いました。

映画化のお話はすぐに引き受けさせていただいたのですが、実は最初にいただいた台本は「悲し過ぎて演じられません」と思いました(笑)。闘病記で、実際の千恵さんが亡くなっている結末はみなさんご存じですから、ただ悲しくてつらいだけのお話を見るために映画館に足を運ぶのは、気が重いかなと思ったんです。単に泣ける感動作というのではなく、もっとポジティブに前向きに、生きていることは素晴らしい、家族って温かくて楽しいんだと思える映画にできるのではないかと感じました。千恵さんご自身、つらい闘病中も、ブログで外の世界とつながるなど、笑顔を大切にした天真爛漫(らんまん)な方だったと思うので、そこをもっとクローズアップしたら前向きな作品になるのでは、と監督に相談させていただきました。何度も台本を手直ししてくださって、最終的には笑うは泣くは忙しい物語になったと思います(笑)。

Q:具体的にどのあたりが一番変わりましたか?

ガラッと変わりました。全体のテンポ感、リズム感、笑いという要素が一変しました。わたしは、映画には夢があってほしいですし、リアリティーだけに縛られる必要はないと思っています。特に女性は、非現実感を味わいたくて映画を観ることもあると思うので、ただ共感できるだけではなく、キラキラしたお話にしたかったんです。もしかしたら、医療の現場の方に「現実はこんなに甘いもんじゃない」とお叱りを受けるかもしれませんが、映画は原作と違ってもいいと思っています。もっと壮絶で大変だったことがわかった上で、それをリアルに突き詰めるのではなく、日常の大切さや健康のありがたさ、千恵さんの母親としての強さや優しさが心に響く作品になるといいなと思いました。

『はなちゃんのみそ汁』広末涼子

絶対に泣かないと決めていた

Q:共演者のみなさんとはどんな感じで撮影されていたのでしょうか。

夫役の滝藤賢一さんとはこの作品の撮影前に別の現場でお話しさせていただいたのですが、すごく台本を気に入っていらっしゃいました。わりと役を客観的にとらえてクールに演じられる方なのかなと思っていましたが、実際にはすぐに泣いてしまわれて、「そんなに早く悲しくなられると、わたし、やっていけないです」ってお話ししました(笑)。阿久根(知昭)監督も、滝藤さんが泣くのを止めていらっしゃいました(笑)。とても気持ちがあふれている方で、意外でした。はな役の(赤松)えみなちゃんとお料理をしているシーンがわたしは大好きなのですが、ほとんどアドリブなんです。まだ小さい子ですから、だいたいの工程だけ決めて、あとは何も指示をしない。彼女を制限しないで自然な表情を切り取るというのがすごく大きなテーマでした。すぐに何でもつまみ食いしちゃうんですよ(笑)。

Q:千恵さんを演じる上で、苦労した点はどのあたりでしたか?

病気の進行状況をちゃんと理解して、どこまでリアルに届けるのかというバランスは難しかったです。たとえば最後のコンサートのシーンでどこまで声が出にくくなるのか、など。映画的な見せ方との兼ね合いもありますし、実はわたし、現場では結構いっぱいっぱいだったんです。千恵さんご自身のブログや本を読ませていただいて、とても共感する部分が多かったからかもしれませんが、ずっと彼女を生きているような感覚でした。役が降りてきたというようなものとはまた違って……気を抜くと自然に涙が出てしまいそうな毎日でした。

Q:でも、劇中の千恵は涙を見せないですよね。

絶対に泣かないと決めていました。きっと、自分がつらいとか悲しいというよりも、のこしていく夫やはなちゃんへの心配のほうが強かったと思うので、自分が弱いところを見せて不安にさせちゃいけないと。どんなに明るく演じても悲しいお話ですから、悲しく演じる必要はまったくないと思っていました。

『はなちゃんのみそ汁』広末涼子

命と向き合う機会に感謝

Q:映画『想いのこし』といい、子どもをのこして亡くなるお母さんといった役が多いですね。

たまたまです(笑)。わたしは、どういう役をやりたいというのはありません。希望を言うと役の幅を狭めてしまうような気がしますし、いろいろな役のお話をいただけることで女優として成長していけるのではないかと思うんです。たまたま命と向き合う役が続いていますが、死を考えることは「今」を考えることではないでしょうか。わたし自身、毎回演じてみて、何気ない日常のありがたさを痛感させられるので、観てくださる方にもそれが伝わって、何かの原動力になったらいいなと思っています。すごく大きなテーマに向き合わせてもらえて、わたしはとてもラッキーだと思っています。

Q:千恵さんも「わたしはツイていた」とおっしゃっていました。

彼女の陰にこもり過ぎないアクティブさのような部分は、自分とすごく似ているのではないかと思います。千恵さんと同じように、生きることを楽しむことや、人に優しくすることを、自分の子どもはもちろん、より多くの人に伝えていきたいです。そういうことを伝えられるのが、女優というお仕事の素晴らしさで、わたしの使命だと思っています。

取材・文:早川あゆみ 写真: 高野広美
衣装協力:COCOSHNIK

記事制作 : シネマトゥデイ(外部サイト)