「あさが来た」高視聴率の鍵はAKB48が歌う主題歌にあり

コラム

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「あさが来た」の主人公あさ(波瑠)と五代友厚(ディーン・フジオカ)

文=木俣 冬

朝ドラこと、NHK連続テレビ小説「あさが来た」が好評だ。12月4日の放送では27.2%と高視聴率を出し(ビデオリサーチ調べ、関東地区)、週の平均視聴率も24%台のことも多く、近年の朝ドラと比べても良い成績を出している。現在の感触から見ても、今後もキープどころかますます盛り上がっていきそう。

朝ドラは1961年から放送され、「あさが来た」で93作目となるご長寿コンテンツ。今回は、朝ドラ史上初の幕末からはじまる物語で、登場人物が髷を結い、着物を着て表れ、まるで大河ドラマのようにも見えつつも、これが意外と受け容れられたのは、朝の時代劇が新鮮に映ったからか。開始したばかりの頃、主人公あさ(波瑠)とその姉・はつ(宮崎あおい※崎の字は山編に竒)がキレイな着物を着て琴を弾く姿が愛らしく、眼福だった。

主人公あさは京都の豪商の次女として生まれ、大阪の両替商・加野屋に嫁ぐ。そこで、女性ながら店の仕事を任され、炭坑、銀行、女子大学設立などに携わっていく。「なんでどす?」が口癖で、世の中で当たり前になっていることに疑問を感じると、納得がいくまで食い下がり、決まりごとを変えていく。当時としては画期的な“女性が事業をやっていく”ことがその最たるもの。彼女には実在のモデルがいて、大阪で活躍した女性実業家・広岡浅子だ。

女性が頑張るのは「朝ドラ」の主要テーマのひとつだが、幕末から明治の女性がお家のために決められた婚約者の元に嫁ぎ、子を生むことを第一とされた時代に、その決まりを軽やかに破っていくヒロインの姿は、よけいに気持ちよく映る。

あさを何かと助けてくれるふたりのイケメンの存在も、両者の役割のバランスがよく、最強の味方になっている。夫の新次郎(玉木宏)は、お金を扱う仕事が嫌いで、芸事に夢中。仕事に励むあさを寂しく思いながらも、理解して自由に泳がせてくれる。もうひとりの協力者は、五代友厚(ディーン・フジオカ)。実在の人物で、明治時代、日本の経済の礎をつくったとされる偉人は、何かとタイミングよくあさの前に現れて、あさの意識を変えていく。あさの実業家としての道を五代が開き、大股で闊歩していくあさを、新次郎があたたかく見つめ支えるという、女性には羨ましい図式になっている。

12月14日から19日放送の12週は、あさにとって人生のターニングポイントが描かれた。その時、あさに重大な示唆を与えたのは五代だ。うまくいっていた炭坑で事故が起り、加野屋の商売を圧迫。その事故は偶発ではなく人為的なものだったが、人情を優先して犯人探しを曖昧にしようとするあさに、五代は、仕事をしていく以上、偽善者ではいられない(きれいごとでは済まされないことがある)と厳しいアドバイスをする。あさは、その言葉に突き動かされ苦渋の決断をし、その結果、「ひとでなし」と言われてしまうが、加野屋をここまでにしてきた義父・正吉(近藤正臣)亡き後、いよいよ彼女が女実業家として立っていくには、それくらいの覚悟がないといけないことを感じさせる展開だった。

12週から開けて12月21日からはじまる13週で、全156回中の半分がほぼ過ぎることになる。これからあさは、東京で福沢諭吉(武田鉄矢)に会って天啓を授かり、大阪、東京を行き来しながら、事業を発展させていくことに。

頑張り屋のあさに感化され、少々変化もしている新次郎ではあるが、お金の貸し借りが弱者を傷つけることを知っているからこそ事業を好まないのが本質。そんな彼と、あさに事業家としてのシビアな心得を言い聞かせる五代とを比べると、あさの今後の人生には、五代のほうが必要なのではないか? なんてことも思えて、ハラハラさせる大森美香の脚本が巧み。なにしろ、史実だと五代は2回結婚しているはずなのだが、このドラマでは(今のところ)彼の私生活を明かさず、なぜかあさに惹かれてしまうことへの葛藤を、小出しにして見せるのだ。新次郎の、「(あさが)先に行ってしまうのではないか」という不安も描いていたり、五代の微妙なもどかしさを描いたり、月9で恋愛ドラマも手がけてきた大森美香は、女性視聴者のツボを心得ている。

大森は、10年前に「風のハルカ」で朝ドラを一度経験している上、民放の手法も引き出しにあるため、その脚本は揺るぎない。テレビドラマ「カバチタレ!」や映画『カイジ 人生逆転ゲーム』などで社会や経済に関する知識を物語に落とし込むことも得手なので、女性事業家の硬派な部分も安心だ。

女性は欲張り。AKB48が歌う主題歌「365日の紙飛行機」の「やりたいこと 好きなように 自由にできる夢」という歌詞に表されるように、恋愛や結婚に寄り過ぎても、仕事に寄り過ぎても物足りない。いいバランスで、仕事も結婚や恋も、どちらも選びたいという我儘を、大森美香がみごとに叶えてくれている。そして、その象徴が、新次郎と五代なのだ。ドラマ後半、あさが、新次郎と五代からどれだけのものを得ていくのか、ドキドキしながら見守りたい。

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)