『人生の約束』竹野内豊 インタビュー

インタビュー

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40代、まだまだ未熟な自分

『人生の約束』竹野内豊 インタビュー

テレビ界の巨匠・石橋冠が、「アラ80」にして映画監督デビュー。その長年の夢を銀幕に託した「絆」と「再生」の物語で、石橋監督とは初タッグにして主演を担った竹野内豊が、監督の心のふるさとで行われた撮影の日々を振り返った。

映画『人生の約束』は1月9日より全国公開

言葉では説明のつかない感覚を体感

Q:舞台となる富山県・新湊の印象は如何でした?

石橋監督からは「和製ヴェニス」と聞いていたんです。すごく情緒があって、古き良き日本が手つかずのまま残っている場所。初めて行ったのに、懐かしさを覚えるような場所ですね。オフの時間に行った昆布屋さんは、キャストのみんながそのお店に行っていて、すごくおまけしていただきました(笑)。

Q:脚本を最初に読んだ感想は?

主人公の中原祐馬と同じく、自分自身も完全にシティボーイ(笑)。大きな祭りには縁がありませんでした。だから最初は、自分の命に代えてでも守っていきたいくらいの勢いで曳山まつりを大切にする、新湊の町の人たちの気持ちや価値観がよく理解できなかったんです。

Q:四十物町(あいものちょう)の人々が曳山(山車)を手放すシーンは、まるでお葬式のようですよね。

最初に冠さんとお会いしたときに、自分の正直な気持ちをお話ししました。物語のキーワードとなる「つながる」にしても、ステキだなと思いつつ、深い意味までは自分には理解できないと。そうしたら冠さんが「俺にもわからない、だから俺はこれを映画にしたい」とおっしゃった。それがすごく印象的でした。

Q:撮影を通じて、曳山に対する町の人たちの思いに近づけましたか?

重さ約8トンくらいの曳山を見上げたとき、単なる造形物という以上の迫力や存在感に圧倒されました。曳き手に実際に手を乗せてわかったのは、1年に一度の特別な日に曳山につながることは、すべてとつながることを意味する。曳山に先祖の魂や何かが宿っている感じがしたんです。自分は特にスピリチュアル的なことを信じているわけじゃないですけどね。観客のみなさんも日本人として、言葉では説明のつかない感覚を体感できると思います。

『人生の約束』竹野内豊 インタビュー

片足スクワット状態の撮影シーン

Q:曳山を曳くシーンの撮影は、かなりの重労働でしたか?

坂を上っていくときは、脚がパンパンになりました。片足でスクワットをやっているような状態で、踏ん張って曳き続けたわけですから。スタイリストさんもビックリするくらい、革靴の右足のソールだけが異常に減っていました。正直、ズルをすることもできるんです(笑)。でもあの曳き手に手を乗せたら、誰もそういう気持ちは起きないでしょうね。

Q:曳山を曳く「動」の芝居の直後に、「静」の芝居の見せ場がありますね。

監督は、その場面を頂点にしたいとおっしゃっていました。でも実際には脚がパンパンなうえに、プレッシャーのせいなのか、撮影前に下腹が痛くなっちゃって(笑)。ただ逆に、気負いがなくなって良かったのかもしれないです。演じ切ったとか満足したとかいうよりは、自信と不安のあいだを行ったり来たりするくらいがちょうどいいのかなと。“これが正解”という演技はないわけですから。

Q:キャストみなさんの演技の生々しさは、監督の1テイク主義の影響でしょうか?

スタッフやキャストへの気遣いから、本番は1回というスタイルを冠さんは貫いていらっしゃるのかもしれない。でもロケでみんな動きながら撮っているから、実際は何度かやらざるを得ない状況も出ます。天候の関係から撮り直しも起きました。とにかくビックリしたのは、1時間ですべての天候が体感できるような日本海の天候事情。雨が降ったと思ったら嵐に、嵐から雪になり、とうとう吹雪になって。また1時間後くらいには、ピーカンになる。初めての経験でした。

『人生の約束』竹野内豊 インタビュー

難しいとまさかのギブアップ宣言!?

Q:江口洋介さんとは意外にも初共演なんですね?

江口さんは思っていた以上にアツい人です。曳山まつりの撮影で、地元の方が転んで危うく車輪に轢かれそうになったとき、江口さんがその方を引っ張り上げて事なきを得た。無意識にとった行動だったようですが、パニック時にもとっさの判断ができる人。キャラをつくっているのじゃなくて、本物だなと思いました。映画を観た方はみんな、江口さんの「漁師はハマリ役だ」と思うでしょうね(笑)。

Q:西田敏行さんとの共演はいかがでしたか?

西田さんが入ると、緊張感から現場が引き締まる。でもシャイな方だから、そういうのが苦手であえておどけてみたり、おやじギャグ的なことを言ってみたり、さりげなく現場を和ませてくれるステキな方です。お芝居も妙に力が抜けているのに、すごいなと。剣道にたとえたら、相手に威圧感を与えずにひょいひょいかわす師範クラスですね。

Q:完成作をご覧になって何を感じられましたか?

現代の日本では、人々の心にポッカリ穴が空いちゃった。そんなときに冠さんは、町のみんなが同じ思いで曳山を曳く姿を見て、「これだ」と感じたそうなんです。40代の未熟な自分には、冠さんが込めた思いを全部は理解しきれない。10年、20年後に観たら、また違うんじゃないかなと。奥が深い映画なだけに、宣伝するのが難しい(笑)。いつか、冠さんの思いをすべて感じ取れる人間になりたいですね。

取材・文: 柴田メグミ 写真: 金井尭子

記事制作 : シネマトゥデイ(外部サイト)