ポップコーンが映画館の利益の40%を支えている!?

コラム

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文=ロサンゼルス在住ライター 町田雪


『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が、米国内で公開初週末に2億3800万ドルを稼ぐ記録的スタートを切った。各地でチケット完売状態という歴史的大ヒットに各劇場主も大喜びだろう。なんたって、映画館の利益を支える“ポップコーン様”も飛ぶように売れるのだ。

映画といえば、ポップコーン。日本でもお馴染みの構図だが、アメリカ人のポップコーン好きには頭が下がる。本当にみんな、食べているのだ。大抵、S・M・Lの3サイズを展開しているが、それぞれ日本の3~4倍はあると思われるボリューム。Lともなると、大人の顔がスッポリ入るほどのバケツにてんこ盛りなのだが、結構みんな、これを買っている。なにせ、値段が大体、Sで5ドル、Mで6ドル、Lで7ドルというように、あまり変わらないのだ。家族連れや友人同士の場合、Lバケツを購入し、ホットドッグなどを運ぶための深めの紙トレーに取り分けて食べていたりする。そもそも映画とポップコーンの関係は、どのようにして始まったのだろうか?

もともと中米で生まれたポップコーンは、19世紀初頭に北米に上陸。人々が、ポンポン弾ける音と香ばしい匂い、そのキュートな形に魅了される一方で、商人たちにとっては、キッチンいらず、マシーンの移動が可能、フレッシュなまま提供できるという利点があり、19世紀半ばまでには手軽なストリート・スナック菓子として人気を博すようになった。ただ、この時点では、サーカスやフェアを始めとする娯楽場所で売られるようになったものの、映画館の洗練されたイメージを保ちたい劇場主たちは、ポップコーンの販売を拒んでいたという。美しいカーペットが散らかるうえに、まだ無声映画の時代であったため、ポップコーンが弾ける音が観客の気まで散らしてしまうことになるためだ。1927年にはトーキー映画が始まり、映画が一気に大衆化していくが、この時点でもまだ、劇場主たちはポップコーン導入に後ろ向きだった。

そこへやってきたのが世界大恐慌。安価な娯楽を求めて映画館に来る人々と、当時一袋5~10セントというお手頃なポップコーンの距離が、ぐんと近づいた。最初は、商人たちが映画館の外にマシーンを置いて売っていたが、あまりにも多くの人々がポップコーン持参で映画館に来るもので、劇場主たちもついに館内を改装し、売店を作り出ることに踏み切ったというわけだ。

第二次世界大戦時には、砂糖不足によりキャンディやソーダが供給難となったが、塩とトウモロコシの穀粒は不足していなかったため、ポップコーンが重宝された。作っている段階では音と匂いが際立つが、食べる頃にはあまり周りに匂いを振りまくこともなく、音を立てずに食べることができる点で、実は映画館向きのスナックでもあった。さらに、コロコロしていてドライなので、掃除がしやすいという利点もある。1945年になると、米国で売られたポップコーンの半分以上が、映画館で消費されたのだとか。1960年代にはテレビの普及により、映画館に足を運ぶ人が減ったりと、時代の流れとともに浮き沈みを経てきたポップコーン。それでも、材料が安く、労力も少なく提供できるため、利益率は85パーセントと最強だ。今では、ポップコーンを始めとする売店からの収入が、映画館全体の利益の40パーセント強を支えているのだという。

ポップコーン
© AltoPress/PhotoAlto/Photoshot

そんなポップコーンも最近は、また新たな波に揉まれつつある。健康志向の高まりによって、ポップコーンそのものやバターの身体への影響についての議論が勃発したり、いわゆるラグジュアリー・シアターという、まるでレストランやカフェのような温かい食事を提供する映画館が出てきたからだ。こうしたなか、液体バターの有無を選べるようにしたり、塩加減を減らしたりと、ヘルシー感をアピールしている映画館もある。プレス向け試写会が多く行われるウェストハリウッドのアークライト・シネマのポップコーンは、ロサンゼルスで一番おいしいと評されているが、確かに罪悪感なく食べられるクオリティだ。とはいえ、喉が渇くものだから、水も一緒に購入……と思うと、まとめ買いなら1本50セントほどで買えるミネラル・ウォーターが、1本5~6ドルもする! またまた売店の売り上げに貢献。というわけで、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の経済効果は、ボックスオフィスでは計り知れないほど莫大なのだ。

話題の映画が続々と公開になるホリデーシーズン。今年は、さまざまな歴史の詰まったポップコーンを味わいながら、楽しんでみてはいかがだろうか?

この記事で紹介している作品

スター・ウォーズ/フォースの覚醒

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)