年始は「落語」でストレス解消! しなやかな笑顔と心を再発見

コラム

  • twitter
  • facebook
  • はてなブログ
  • google+
  • LINEで送る

『の・ようなもの のようなもの』では志ん田を演じる松山ケンイチが落語を披露するのも見どころのひとつ
(c)2016「の・ようなもの のようなもの」製作委員会

文=皆川ちか
現代人につきもののストレス。特効薬がないだけに対処法もまちまちで、スポーツやお風呂、アロマにカラオケにお酒など人それぞれで千差万別。それだけに解消方法が見つからず、年が明けても全くめでたい気分になれない人も多いのではないだろうか。
しかーし、老若男女・万国共通のストレス解消法がただひとつ、ある。それは笑いだ。笑うことによって自律神経が安定し、リラックス効果が高まるという研究結果が近年さかんに報告されている。そこで注目したいのが落語である。
講談が廃れ、歌舞伎が趣味人の嗜みとなった現在、いまなお落語が庶民の娯楽として愛されているには理由がある。それは、落語特有のしなやかな笑いが、日本人のDNAに刻まれた義理と人情といった自己矛盾にも似た本音を的確に、軽妙につかんでいるからではないだろうか。そしてなによりも落語は、人間の心理や真理、機微が、笑いをとおして分かりやすく描かれる。
話の最後にオチ(落ち)を用意した「落とし噺」や「人情噺」など、落語にはいろいろな種類がある。共通しているのは、語りによって、つまり、言葉によって人間の感情、すなわち喜怒哀楽を表現することだ。何十分もの間たったひとりで話し続け、観客を惹きつけることができるなんて、考えてみたら並大抵のわざではない。

心の豊かさあってこそ、人は楽しく笑える
『の・ようなもの のようなもの』

『の・ようなもの のようなもの』
2016年1月16日(土)新春ロードショー
配給:松竹
原案:森田芳光
監督:杉山泰一 脚本:堀口正樹
出演:志ん田(松山ケンイチ)、志ん魚(伊藤克信)

故・森田芳光監督のデビュー作で、落語界を舞台にした『の・ようなもの』(81)という映画がある。落語の階級は、前座見習い、前座、二ツ目、真打ちがあり、二ツ目の若手落語家・志ん魚(とと)が、恋に落語に奮闘する姿を追った作品だ。その35年後を描いた続編『の・ようなもの のようなもの』(16)が間もなく公開される。
主人公は、30歳にして未だ前座の脱サラ落語家・志ん田(でん)。師匠の自宅に住み込んで雑用をこなし、ほのかに想いを寄せる師匠の娘からはいいようにあしらわれ、金なし、色なし、甲斐性なしと、志ん魚以上にイケてないポジションだ。けれども、のんびりゆったりフラフラと、志ん田は自分の落語をじっくりと模索する。焦っていないわけではない。不安がないわけでもない。それでも、自分の心が落ち着いていなければ、人を笑顔にさせることはできない。志ん田はそれを知っている。だからこそ、急がば回れ精神で落語に取り組んでいる。
落語と縁を切った志ん魚を捜し出し、力をあわせて創作落語をつくるのだが、その姿の楽しそうなこと。心の豊かさあってこそ、人は楽しく笑えるのだということを、つくづく実感させられる。完成した新ネタ披露もみどころのひとつだ。

落語に取り憑かれたものたちが織りなすドラマ
「昭和元禄落語心中」

TVアニメ「昭和元禄落語心中」
2016年1月8日(金)より、MBS、TBS、CBC、BS-TBS
“アニメイズム”枠にて放送開始!
初回は“与太郎放浪篇”11時間拡大スペシャル!
c雲田はるこ・講談社/落語心中協会

落語を題材にしたアニメーション「昭和元禄落語心中」も、間もなく放送開始となる。“昭和最後の名人”と呼ばれる八代目有楽亭八雲と、その盟友にしてライバルである伝説の落語家・有楽亭助六。八雲の噺に惚れ込んで弟子入りした与太郎と、助六の遺児であり八雲に愛憎相反する感情を抱く小夏。落語に取り憑かれ、落語に生きる人種である落語家たちの織りなすドラマを情感豊かに描く。原作は、2013年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門で優秀賞を受賞した雲田はるこの同名マンガだ。
八雲役には石田彰、助六役には山寺宏一と、声優界のトップ2がキャスティングされたのも話題を呼んだ。原作で取りあげられた「死神」「応挙の幽霊」「夢金」「居残り」といった名作落語が、艶やかな画と実力派声優陣によってどのように展開されるのか、期待が高まる。
日本語がもっとも心地よく響く五・七・五のリズムを基調とした語り。各演者の個性や特徴で、同じネタがいかようにも変化していく自由闊達さ。いまの時代の空気をはらんだ創作落語と、時代を超えて受け継がれる古典落語――革新と伝統が相互に影響を与えあって共存する奥ゆきの、懐の広さ。
ストレスフルな現代を生きる私たちが、ともすれば見落としてしまいがちだけれど、これがあるのとないのとでは人生がだいぶちがう――しなやかな笑顔と心。落語にふれ、落語を楽しむことでストレス解消のみならず、自分のなかに埋もれているそれらを、再発見できるのではないだろうか?

記事制作 : dmenu映画