キムタクタイムリープ説がネットで爆発的な支持を得る理由

コラム

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2046_01
『2046』DVDパッケージ

文=オカダカヅエ

SMAP解散騒動に合わせ、ネット上では「木村拓哉タイムリープ説」が盛り上がっている。「解散阻止のため何度も未来からタイムリープしている」という荒唐無稽な内容だが、なぜか受け入れられているようだ。その謎を解くヒントは、2004年に製作されたウォン・カーウァイ作品『2046』にあるのかもしれない。

木村拓哉の出演で話題を呼んだ本作は、『欲望の翼』(1990)と『花様年華』(2000)に続く、ウォン・カーウァイの“1960年代シリーズ”の一本だ。これまでのカーウァイは印象派の画家のように、役柄ではなく役に割り振った俳優が持つ一定の「イメージ」を用いて共通したテーマを描き続けてきた。よって、上記以外も含め、彼の作品において重要なイメージを担当していたレスリー・チャンの死(2003年4月)は、ただでさえ遅れていた『2046』の撮影をさらに引き延ばす。『2046』にキャスティングされていなかったにもかかわらず、彼の担当イメージはそれほどまでに重要だった。

諸説あるが、レスリーの担当イメージは「過去と未来の間」。「未来」は金城武やフェイ・ウォンら、「過去」は言うまでもなくトニー・レオンだ。そんな世界観の中、一貫して揺るぎない強さを感じさせる木村拓哉にどんなイメージを担当させるのか、完成を待つ側には見当がつかなかった。ある意味“完璧”な彼には、カーウァイ作品の登場人物が持つ弱さや感傷などひとかけらもなかったからだ。

とまれ、当初の予定だった3カ月を5年にまで延ばして完成した『2046』は、「足のない鳥」(レスリーの担当イメージを象徴する単語。『欲望の翼』に顕著)が延々と空を舞い、その影の下を過去に囚われた登場人物たちが彷徨う物語となった。そんな物語の中で、木村拓哉は「過去」を象徴する男が書くSF小説に登場し、「2046へ向かう列車」に乗せられる。カーウァイ・ファンからはいまだに評価が辛い作品ではあるが、筆者個人はこの内容が100%腑に落ちた。「唯一事情を振り切れる者」として、「唯一未来を目指せる強さ」は、木村拓哉に長年抱いていたイメージと相違なかったからだ。

カーウァイが極めて正しく自身の手法を貫き、木村拓哉のイメージを見抜いた結果、割り振った役柄は「2046へ向かう列車に乗ったタク」だった。SMAP解散騒動の裏側は知る由もないが、今このタイムリープ説が爆発的な支持を得るのも当然だ。木村拓哉のイメージは何年も前にカーウァイが実証していた。だからこそ改めて断言したい。『2046』はそう悪い作品ではなかった。いやむしろ……。

この記事で紹介している作品

『2046』
『花様年華』
『欲望の翼』

 

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)