【ブルボンヌ新作批評11】3D鑑賞で股間が縮み上がる!世界一かっこいい高所バカの教え『ザ・ウォーク』

コラム

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3D鑑賞で股間が縮み上がる!
世界一かっこいい高所バカの教え

『ザ・ウォーク』

昔から「バカと煙は高いところへ上りたがる」なんて言うわよね。アタシなら六本木あたりのセレブタワーの入り口に嫌がらせのように貼り出したい言葉ですけど(ほんと性悪ババア)、「出過ぎた杭は打たれない」という言葉もあるように、とことんまで高みを目指したバカはかっこいい!と心から思える、気持ちいい作品だったわ。
1974年、完成間近のNYツインタワービルWTC(ワールド・トレード・センター)の屋上をワイヤーでつないで、命綱なしで歩く、なんてまさしく正気の沙汰じゃないことをしでかした伝説の男フィリップ・プティ。彼の実話は2008年のアカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞した『マン・オン・ワイヤー』でも描かれてるけど、今作はアタシも大好きな名監督ロバート・ゼメキスが、最新の映像技術を駆使してドラマチックに仕上げてくれたもの。SFXと3D映像が、40年以上前にプティだけが到達したありえない空間に連れていってくれるの。てか正直、「ちょと待て心の準備が…イヤーッ!」と試写室でオネエ叫びしそうなくらいに、タマ(あります!)の裏側がスース―しちゃう体験だったわ。『ゼロ・グラビディ』の時に思った「これこそ3D制作であるべき映画!」の第二弾ね。

『ザ・ウォーク』

お話はシンプルそのもの、綱渡りバカのフランス人プティがWTCの建設を知り、「俺が渡ってやるぜ!しかも命綱なしで!」と仲間を集め、ほんとに成功しちゃう物語。って、映画のラストまでしれっと語ったけど、これはネタバレじゃありませんから! 有名な史実だもん。織田信長って本能寺で殺されちゃうんだよ、って言うようなものよ。すごいのはそんな結末が分ってるシンプルな話を、たっぷり2時間ハラハラワクワクさせながら引っ張ってくれる展開と演出。さすがゼメキス監督ですよ。仲間たちを集めていく過程は、『オーシャンズ11』みたいな大作戦モノの高揚感たっぷりだし、おじさん層が好きそうな職人系師弟愛もしっかり。そして、女性客のためのロマンスまでちゃーんと用意してくれてるのね。

『ザ・ウォーク』

考えてみたらこの設定、よく言う恋愛を盛り上げる要素「吊り橋効果」の最たるものじゃない?しかも、一応ひとが普通に通れる幅の吊り橋どころかワイヤーよ?ズロースが紐パンになるくらいの興奮度マックス!そら、ルール違反の危険な行為と分かっていても高まるわよー。ロマンスがありあまるわよー(旬ネタ)。その上、主演のジョセフ・ゴードン=レヴィットが『(500)日のサマー』とは打って変わって、内面からにじみ出る男っぺー魅力ムンムンなのよね。彼ったらロス生まれの超アメリカ人なのに、全編フランス語訛りの英語を駆使して、見事にこの役を演じきってました。女性客(と一部のオネエ)みんなで吊り橋効果にやられちゃいましょ!

『ザ・ウォーク』

なんて楽しそうに書いたけど、この映画がこのタイミングで世に出たことはマジメに深い意義もあると思うの。9.11の悲痛な記憶から、新しいタワーの再建に向かっている今、世界一のWTCを完成させようとしていた時代のアメリカが完全再現されるというのは、ゼメキス監督流のエールよね。こういう前向きなもの作りでの鼓舞こそ、美しい愛国心だと思うの。そして、バカ言ってる…じゃなかった(それは水谷千重子さん)、「バカやっちゃう」ことに秘められた可能性。昨今の、大小さまざまなルール違反をマスコミやネットがリンチし、飽きたら次のガス抜きターゲットを探す風潮って、まず罪と罰のバランスが狂ってるし、お互いを抑制するばかりで創造性も低くなると思うもの。プティがやったことは間違いなく法律違反よ。それに一部の人には確かに迷惑をかけたんだと思うの。でもこういう人間がいなくちゃ、世界はつまらない、進まない。本当にかっこよくルールを破れる人なら、もちろん叱る役の人が一定数いてもいいけど、その向こうにある価値をちゃんと評価もされるべきよね。「覇気がない」なんて言われがちな最近の若い子ちゃんたちにこそ、世界を驚かせた最高のバカフランス人、プティが感じた真っ白な世界を共有してほしいわ!

『ザ・ウォーク』
1月23日(土)全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

ブルボンヌ
女装パフォーマー/ライター
新宿二丁目にある『Campy! bar』をプロデュースしている他、『はみだし しゃべくりラジオ キックス』(山梨放送YBSラジオ)金曜メインパーソナリティ、『ハートネットTV』『週刊ニュース深読み』(共にNHK)、BSスカパー『チャンネル生回転TV ALLザップ』などに出演。大学特別講義の講師、企業内LGBTに関するセミナーMCも務める。

記事制作 : ブルボンヌtwitter(外部サイト)

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