日本の映画料金は高い? 1ドル映画を誇る米国も接近中!

コラム

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文=ロサンゼルス在住ライター 町田 雪

アメリカの映画料金事情
© Photoshot

日本の映画料金は世界一高い! と言われることもあるが、果たして事実なのか? 映画大国アメリカの状況と比べてみよう。

10数年前に渡米し、ロサンゼルスで生活をするようになって最初に驚いたのは、映画料金の安さだ。劇場の種類にもよるが、大体、一般料金が8~10ドル程度、学生なら6ドル代、午前中や夕方前の回(マチネ)であれば4ドル以下というレベル。地元の老舗映画館は通常3ドル(無料ポップコーン付き)、マチネで2ドルといった具合で、料金1ドルの“ドル・シアター”なる映画館もある。スターバックスでラテを1杯買うより安く、とにかく映画に優しい街だと感じた。

その気軽さからか、アメリカにおける映画とは、最も身近で最もイージーな娯楽である。日本では、念願のデートの約束や久しぶりの友達との再会の目玉になったり、社会人として初めてのボーナスで両親を招待したりと、ちょっと特別感のある映画鑑賞。ロサンゼルスでは、「少し時間ができたから、何か見ようかな。あ、ちょうどこれやってるわ」というノリで車を飛ばしてサラリと見たり、「何も考えたくないから、思考停止できるようなコメディやってないかな」と夜中にパジャマ同然で見に行ったり、家でテレビでも見るような感覚で出かけてしまう。米国では不況になると映画の興行収入が上がるというが、家族全員で出かけても数十ドルで済む映画鑑賞は、旅行やテーマパーク観光、レストランでの外食よりも、お財布に優しい娯楽だからだ。

無料試写の機会にも恵まれている。大学キャンパス入り口やショッピングモールの外で試写会募集の紙が配られていたり、スタジオや一般の無料試写専門サイトに登録すると招待メールが送られてくる。作品のラインナップは、無名俳優のインディペンデント映画から、有名俳優&監督のスタジオ大作までさまざまで、ポストプロダクション完了前の“未完成版”であることも、公開間近の完成版であることもある。未完成版の場合、製作者側が観客の反応やアンケート結果を参考にして、映画完成に向けて編集や音響の修正を行うため、試写の後には、物語のテンポや登場人物の関係性のわかりやすさ、セリフやギャグの面白さ、全体的なカラー使いまで、こと細かな質問に答えなければならない。まさに、観客も映画製作の一端を担っているといっても過言ではない。渡米したばかりの頃に行った無料試写会で、素人目に見てもヒドイと思った作品が、4年後(!)にわずか10スクリーンで限定公開されていたことがあった。物語についていけずに混乱していた私たち観客が、映画の行方に影響を与えたと思うと、申し訳ないような気分になったものだ。(こうした無料試写会は、マスコミや映画関係者の試写参加を禁じているため、ライター業を開始してからは対象外になってしまったが)。公開間近の作品試写の場合は、スタジオ側が公開前にソーシャルメディアなどでバズ(口コミ)を盛り上げたい意向があるため、観客も気軽に楽しめて、お得感が満載だ。

と、さんざんアメリカにおける映画鑑賞の料金の安さと身近さをアピールしておいてなんだが、先日、2015年の米ボックスオフィスにおける映画料金の平均額が、過去最高の8.43ドル(約1000円)であったことが発表された。ちなみに一昨年は8.17ドル(約970円)。この上昇には『スター・ウォーズ フォースの覚醒』のヒットが影響していると見られている。IMAXや3D映画鑑賞を好む観客の多い娯楽大作やSF&ファンタジー映画は、おのずとチケット料金を押し上げるからだ。平均金額だけ見ると、日本の一般的な料金である1800円(3Dは2100円)とはかけ離れているように感じるが、米国の大手映画館チェーン、AMCシアターの料金は(地域によって異なるが)、いまや通常上映が12ドル(約1425円)、3Dが17ドル(2010円)と、意外にも日本の料金とさほど変わらない。物価変動の問題もあるので一概には言えないが、メジャー映画館における料金は、アメリカも日本に近づきつつある。それでも全米規模の平均が1000円という事実。つまり、アメリカには1ドル・シアターから、20ドルを超えるラグジュアリー・シアターまで、幅広い選択肢があるということなのだ。

日本の映画料金が世界一高い!のは、選択肢が少ないからともいえるだろう。レディース、シニア、レイトショー割引などのほかに、100円シアターなるものが出現すれば、“世界一”からの脱出も夢ではないかもしれない。

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)